ナタリー PowerPush - L'Arc-en-Ciel
20周年からさらに羽ばたく4年3カ月ぶり新作「BUTTERFLY」
hyde インタビュー
今回の歌詞は自分の中でグッとくるまで考えた
──hydeさんにとって、今作はどういうアルバムになりましたか?
今期は自分の中でいろいろ発見があったんですよ。ヴォーカリストとして前向きになれたり、歌詞についても自分の目標値がグッと上がった気がしてて。だから僕自身はすごく成長できたアルバムだなと。自分にとっては記念碑的な、いいタイミングで意味のあるアルバムが出せたと思ってて。
──詞についての目標値とは?
作曲ではもう10年ぐらい前に自分の中の“ポップ”のラインは完成されてたけど、歌詞についてはそういうものが多分なかったと思うんですよね。いや、なんとなくはあったかもしれないけど、グッとくるものが出てくるのは運でしかないと思ってた。出てこなければ、こないなりの歌詞になってたというかね。でも今回は自分の中でグッとくるまで考えたというか……だから今回は珍しく歌入れのスケジュールを後ろに動かしてもらったりしたんですよ。そういうことってあんまりないんですけどね、僕。今までは大体、言われた日までに仕上げて歌ってたんですけど。でも今回は気に入るまで詞を書きたかった。そう思えるラインができた気がして。
──何か心境の変化があったんでしょうかね。そうやって詞に向かい合おうと思えるきっかけみたいなものが。
なんかあるのかなあ? そこはちょっとわからないですけど、やっぱりいい詞が書けたときは歌ってても気持ちいいんですよ。だからなるべく自分の中で納得できない状態をなくしていきたいというか。今までも別に納得してなかったわけじゃないけど、こうしてラインができた以上はそこをクリアして、常に「ああ、この詞いいな」って思いながら歌える状態にしたいなというのはありますね。
L'Arc-en-Cielはなんでもやる音楽集団
──ところでhydeさんは、バンドの中でどういう役割でありたいと思われてますか?
作曲に関しては、かなり狙ってるかもしれない。みんながこういうのを作ってきたから、自分はここを狙っていこうとか。僕、基本的に曲は狙って作るから。今回のアルバムでは2曲しか自分で作曲したものはないけど、これは両方とも狙いましたね。
──要はオールラウンドプレイヤー?
でもL'Arc-en-Ciel自体がそうなんですよ。なんでもやる音楽集団だと僕は思ってるので。だからこそL'Arc-en-Cielにしかできないことを狙っていきたいなと思ってるんです。
──このアルバムはまさにだと思います。L'Arc-en-Cielのオールラウンドというか、L'Arc-en-Cielの持ってる要素が全部入ってる。
頭おかしいっすよね(笑)。コンピレーションアルバムみたい。1曲1曲、ほんとバラバラな。ちょっとこれ、おかしいと思う。
──うん、すごくいい意味で。こんなアルバム普通作れないと思いますもん。でも、だからこそ曲順は悩んだんじゃないですか?
毎回悩みますけどね。それぞれが考えてきた案から、どれかひとつを軸に軌道修正しながら最終的に全員で気に入ったものが形になるんですけど。これも丸一日考えてましたね、みんなで。
──今回の軸になったアイデアはどなたの?
多分僕かな。僕は「CHASE」で始まるのがカッコいいと思ってたんですよ。曲の始まりとして一番グッとくる。「CHASE」がきて「X X X」っていうのをみんながOKしてくれるなら、それを不動にしてあとは自由に考えていこうと。やっぱり大人っぽくありながら新しい雰囲気を出すということに僕はこだわりたかったんですよ。L'Arc-en-Cielの今後を匂わせるという意味で。だからまずこの2曲を決めて、以降はみんなで意見出し合っていろいろ入れ替わりましたけど、すごくいい流れが作れたなって自分でも気に入ってます。最終的に未来に向けて抜けていくっていうイメージなんですよ。
「BUTTERFLY」はアルバムの世界観に似合った言葉
──アルバムタイトルについては?
タイトルもけっこう悩みましたね。今回は特に収録曲がバラエティに富んでるから、それをひとつにまとめるタイトルっていうのが難しかった。しかもなんとなく1ワードっていうのは崩したくないなと思ってたから。で、いくつか考えたうちの最後に出したのが「BUTTERFLY」。これは「X X X」の歌詞にもあるけど"羽化した"っていう意味で。前向きでありながら、僕が表現したかった大人のセクシーな部分も蝶って持ってると思うし、一方でかわいらしい子供な部分もあるし、すごくこのアルバムの世界観に似合った言葉。「やっとみつけたぜ!」って(笑)。
──そうして完成したアルバムが世に出るというのは、やっぱり20年経っても感慨深いものがあったりするんでしょうか。
いや、なんもないね(笑)。特にない。
──ははははは、そうおっしゃる気がしてました。
でも、そうは言ってもやっぱりバンドの主軸ですよ、アルバムって。これ自体は小さな一歩かもしれないけど、ここからいろんなものが派生するじゃないですか。コンサートから何から、自分たちの活動で発信するものがほとんど。だから実は重要っていう(笑)。
──本当に重要ですよ。20年やってきたからこその大きさや意味を感じられるアルバムだと思いますし。
僕もそう思う。19年目で終わってたらこのアルバムはなかったわけだし、自分のハードルも超えられなかったわけで。それ考えるとまだまだ伸びしろはあるんでしょうね、今後も。
CD収録曲
- CHASE
- X X X
- Bye Bye
- GOOD LUCK MY WAY -BUTTERFLY Ver.-
- BLESS
- shade of season
- DRINK IT DOWN
- wild flower
- SHINE
- NEXUS 4
- 未来世界
完全生産限定盤 CD収録曲
- 夏の憂鬱 [SEA IN BLOOD 2007]
- 花葬 平成十七年
- HEAVEN'S DRIVE 2005
- Round and Round 2005
- Dune 2008
- I Wish 2007
- Promised land 2005
- HONEY 2007
- Feeling Fine 2007
- ROUTE 666 -2010-
- milky way 2004
- metropolis 2011
完全生産限定盤 DVD収録内容
- ベストヒットLEC
L'Arc-en-Ciel(らるくあんしえる)
1991年にtetsuya(B)を中心に大阪で結成。インディーズシーンで絶大な人気を得て、1994年7月にビデオシングル「眠りによせて」でメジャーデビューを果たす。その後多数のヒットシングルを連発。ハイクオリティなサウンドとキャッチーなメロディ、シングル3枚やアルバム2枚の同時リリースなどでも話題を集めた。近年は各メンバーのソロ活動と並行しつつ、海外でのライブも実施している。結成20周年を迎えた2011年は、味の素スタジアムでのアニバーサリーライブや全国アリーナツアー、さらにベストアルバム3作品やシングル3枚のリリースなど、華々しい活動を展開した。2012年2月、約4年3カ月ぶりとなるニューアルバム「BUTTERFLY」を発表する。