ナタリー PowerPush - L'Arc-en-Ciel
20周年からさらに羽ばたく4年3カ月ぶり新作「BUTTERFLY」
tetsuya インタビュー
お互いを意識して、負けないように良いものを作る
──約4年3カ月ぶりとなるニューアルバム「BUTTERFLY」が完成しました。その期間的にも、シングル作品がたくさん収録されるという意味でも、今回はイレギュラーな部分もあったと思うのですが、制作に入る前はどんなことを思っていました?
前アルバム(「KISS」)の後にリリースしたシングルが7曲あったんですね。それ以外にも既に曲はあったので、アルバムを作るには十分だったんですけど。さらに作ろうということになって、今回のアルバムの形になりましたね。こういう活動の仕方をしていると、曲を作ってリリースするまでに本当に時間がかかる曲も出てきちゃうというか。作ってすぐに出す曲もあれば、5~6年経ってやっと出る曲もあるんです。今回のアルバムで言うと「SHINE」や「Bye Bye」は、かなり前からありましたね。
──でもそれは、何年たっても色褪せない曲を作っていることの証明だと思います。それに、シングル曲が多いアルバムは、平坦だったり逆に散漫な作品になってしまうこともありますけど、「BUTTERFLY」は聴き応えのあるアルバムになっているんですよね。
もともといろんなタイプの曲をやってたし、もう20年もやってますからね。同じことばかりやっていてもダメなので、新しいことにチャレンジしつつ、L'Arc-en-Cielらしさも残しつつ。
──それは難しいことだと思うんですけど。
そうですね。全く進化しないと飽きられてしまうし、あまりにも進化し過ぎるとファンがついてこれなくなってしまうので。
──そういうバランスを見極めながら、常に新しく、クオリティの高い作品を完成させることもL'Arc-en-Cielの魅力と言えます。
L'Arc-en-Cielは4人全員が作詞作曲できるので。特に作曲に関しては、それぞれがそれぞれのメンバーをある程度意識して、負けないように良いものを作っていると思うんです。それが自然とクオリティを高めていて。その大前提があって、誰かが曲の原型を持ってきたとしたら、全員がアレンジにかかわって、もっと良くしよう、少しでも良くしようという姿勢で意見を出し合うし。しかも全員耳が良い中で、全員がOKを出すところまで作業するから、最終的にはすごくクオリティの高いものができあがるんです。
メロディがしっかりしてないとアレンジする意味がない
──tetsuyaさんが書かれた曲を並べてみると、メロディの良さを改めて感じます。曲を作る上で、メロディアスであることが前提条件としてあるのでしょうか?
大前提です。メロディがしっかりしてないと、アレンジする意味がないと思うので。そのメロディに対して、どうコードをつけるのかとか、どういうリズムパターンにするか、どんなオケを作るのかといったことを考えるんです。まずメロディがしっかりしてなければ、そういう作業をする意味がないと思ってますからね。
──ロックバンドって逆のパターンも多いと思うんです。カッコいいギターリフを作ってから、それに合わせてメロディを乗せるような。
そうですね。そういうパターンもあると思うし、僕も高校生くらいのときはそうしてました。その頃はコード進行を先に考えて、歌メロはヴォーカルが考えてよ、みたいな作り方もしてましたけど(笑)。それでは作曲って言わないよなって思って、今みたいな作り方になったんですね。
──ただ単にメロディアスなだけではなくて、メロディのテイストが多彩ですよね。20年以上にわたって曲を作ってきた中で、もう書けなくなるんじゃないかと不安になったりしたことはないですか?
たまに考えたことはありますよ。そうなったら怖いなと(笑)。でも、いざ作り始めたら、もうどんどんアイデアが出てくるので。どんどん楽しくなってくるから、僕は曲を作ることは大好きです。
耳がすごく良くなった
──では、ベーシストとしてのtetsuyaさんにお伺いしたいのですが。今回のアルバムはここ数年の集大成的なものにもなっていると思いますが、ベーシストとして自分の中で掲げたテーマなどはありましたか?
Creature Creatureというプロジェクトに参加したときから完全に5弦ベーシストになったんですけど。2005年くらいかな。その頃から、ちゃんとベースを弾くように……なったかなと……思います(笑)。
──えっ?その前から上質なプレイをされていたじゃないですか(笑)。
うーん、まあ、独特なベースを弾いてますけど。だから人がコピーするのは難しいのかなと思いますが、僕にとっては自分流なので。
──自分がカッコいいとか気持ちいいと思うベースを弾いてきた結果だと?
この曲にはこういうベースがいいなと思っても、それが表現できなかったらイヤじゃないですか。だからある程度ちゃんと弾けるようにならなきゃいけないんですけど、僕は普段本当に練習しないし(笑)。本番前に一気に集中してガーッとやるので。だからテクニック的なことよりも、ここ5~6年で言えば、耳がすごく良くなったというのはありますね。
──それで一層プレイの精度も高まりますよね。個人的には、休符を織り交ぜたグルーヴィなプレイの心地良さに耳を惹かれました。
昔は休符が一番苦手でしたけど(笑)。
──tetsuyaさんはフレーズ面で語られることが多いですけど、リズム感の良さがすごいなと思いましたよ。
いやいやいや、リズム感は自信ないです(笑)。僕はね、音程のほうが自信あります。音程に関しては、僕の耳は病的です(笑)。
CD収録曲
- CHASE
- X X X
- Bye Bye
- GOOD LUCK MY WAY -BUTTERFLY Ver.-
- BLESS
- shade of season
- DRINK IT DOWN
- wild flower
- SHINE
- NEXUS 4
- 未来世界
完全生産限定盤 CD収録曲
- 夏の憂鬱 [SEA IN BLOOD 2007]
- 花葬 平成十七年
- HEAVEN'S DRIVE 2005
- Round and Round 2005
- Dune 2008
- I Wish 2007
- Promised land 2005
- HONEY 2007
- Feeling Fine 2007
- ROUTE 666 -2010-
- milky way 2004
- metropolis 2011
完全生産限定盤 DVD収録内容
- ベストヒットLEC
L'Arc-en-Ciel(らるくあんしえる)
1991年にtetsuya(B)を中心に大阪で結成。インディーズシーンで絶大な人気を得て、1994年7月にビデオシングル「眠りによせて」でメジャーデビューを果たす。その後多数のヒットシングルを連発。ハイクオリティなサウンドとキャッチーなメロディ、シングル3枚やアルバム2枚の同時リリースなどでも話題を集めた。近年は各メンバーのソロ活動と並行しつつ、海外でのライブも実施している。結成20周年を迎えた2011年は、味の素スタジアムでのアニバーサリーライブや全国アリーナツアー、さらにベストアルバム3作品やシングル3枚のリリースなど、華々しい活動を展開した。2012年2月、約4年3カ月ぶりとなるニューアルバム「BUTTERFLY」を発表する。