ナタリー PowerPush - Ken Yokoyama
バンド&ソロインタビューで明かす 傑作「Best Wishes」完成までの軌跡
Ken Yokoyamaのニューアルバム「Best Wishes」がリリースされた。通算5枚目のフルアルバムとなる本作は、今まで以上にシリアスでヘビー、そして生命力に満ちあふれた楽曲が満載。3・11以降を歌った歌詞からは、横山健(Vo, G)の覚悟がひしひしと伝わってくるだけでなく、聴き手の魂を揺さぶる熱い思いを感じることができる。
しかし、このアルバムが完成するまでに横山は曲が書けなくなるという困難に直面。今回のインタビューでは、どのようにしてスランプから脱したのかを横山、Hidenori Minami(G)、Jun Gray(B)、松浦英治(Dr)のKen Bandメンバーに訊いた。
さらに特集後半では、横山への単独インタビューも実現。ここでは新作に取りかかるまでの流れやアルバムのテーマ、楽曲に込めた思いなどが語られている。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類
Part 1 : Ken Bandインタビュー
バンド練習は演奏時間より無駄話のほうが長い
──ドラムの松浦さんが加入した際、健さんは「横山健の別に危なくないコラム」に「Ken Band、オレとしては、今が最強布陣だ」と書いていましたが、松浦さんが入ったKen Bandの強みってどういうところなんでしょうか?
横山健(Vo, G) バンドっていうのはすごく不思議で、仕事仲間とも家族とも仲良し集団とも違う、独特のつながりのある集団なんですよ。Ken Yokoyamaなんて名前を出してやってますけど、僕さえ良ければいいっていう感じではなくて、ほかの3人がいてくれて、彼らのテイストや思想が与える影響が非常に大きいんです。ギターのMinamiとベースのJun Grayはもう4~5年一緒にやってるので、お互い人生観やら、それこそ家庭のことやら細かいことを話し合っていて。僕たちね、バンド練習のときって演奏する時間がすごく短くて、無駄話のほうが長いんですよ。
Jun Gray(B) 練習時間の半分はしゃべってますね。
横山 まず頭に1時間しゃべって、ちょこっと音を出して休憩を取って無駄話して、また音を出して、練習が終わったあともスタジオのロビーで2時間話すみたいな。しかもその内容って全部雑談なんだよね。実はバンドって人生を共有してるんだと思うんですよ。僕にとってそこがすごく肝で。そういった意味ではMinamiとJun Grayとはここ最近ずっとやってるので、いろんなものを共有することでしっかりとしたバンド独特の結びつきができてると思うんです。で、そこに僕たちより世代の若い、人間的な素朴さもまだ削られてない松浦が入ってきて。彼が入った時点で最強って言いましたけど、今のほうがもっと強くなってますね。加入したあとに震災を経験していろんなものを一緒に見て、レコーディングも……僕、曲作りでスランプに陥ったんですけど、そういったところを一緒にくぐり抜けて。レコーディングではメンバーとけんかもしましたし、松浦の人生そのものを否定するように追いつめたりもしましたけど、いろいろ理解して共有するためには絶対に必要なことなんですよ。そこを乗り越えた今が本当の意味で最強なんです。あのコラムで書いたときが「最強の予感しかしない」って感じに思えるくらいに。
──なるほど。
横山 Ken Bandって元々は僕とベースのサージとドラムのGunnちゃんとギターのコリンっていう4人でやってたんですね。それはそれでバランスを保っていたんですけど、メンバーが1人変わったらバランスが崩れたんです。その結果、こうやって全パートを何年かかけてメンバーチェンジせざるを得なくて。1人抜けたら「じゃあ替わりにこの人を入れればいいんだ」で収まってしまう場合もあれば、全部の歯車の動きが変わってしまう場合もある。最初に新しく入ったメンバーがMinamiだったんですけど、まず彼に合わせたいと思って。そこから、サージは彼自身の仕事の都合で辞めざるをえなくなったんだけれども、サージやGunnちゃんが抜けたあとに、Jun Grayと松浦っていうフィットする人間を充てていった。それが今のKen Bandなんです。
ハイスタからKen Bandに戻るのは家に帰る感じ
──今のKen Bandを観ると、この4人じゃなきゃいけないんだなっていう説得力を強く感じるんです。さっきの雑談の話を聞いて思ったんですが、若い頃に知り合った仲間とバンドを作り上げていく感覚を、大人になってから大人ならではの別のやり方で実践してるのが今のKen Bandなのかなと。
横山 そうかもしれないですね。知り合ったのが30歳超えてたから、無理やり幼なじみになろうとしてるのかもしれない。幼なじみみたいな感覚で一緒にやれるのが一番幸せじゃないですか。でもそうはなれないから独特の結びつきをしてるんでしょうね。まあ、お前(松浦)はまだファミリーじゃないから(笑)。
松浦英治(Dr) 幼なじみぐらいに言ってたのに……。
横山 いや、2人(Minami、Jun)はね。お前まだ研究生だから。
一同 あははは(笑)。
Hidenori Minami(G) 幼なじみ研究生(笑)。
横山 あれだ、(元AKB48の)光宗(薫)さんみたく辞めちゃうか。
松浦 辞めちゃうんですか。わかりました、辞めまーす(笑)。
──いやいや、辞めないでください(笑)。話は変わりますが、昨年9月に横浜スタジアムで「AIR JAM 2011」が開催されて、健さんはそこに向けてHi-STANDARDを再始動させたわけですが、そういった様子は健さん以外のメンバーの目にはどういうふうに映っていたんでしょうか?
横山 思ったこと言っていいよ!
Jun まあ7月くらいまでKen Bandで確か動いていて……そうだよね?
Minami うん。
横山 そうそう、余裕でツアーしてた。
Jun で、8月くらいから健はAIR JAMモードに切り替わって。そっちに行くから、まあ行ってらっしゃいっていう感じで(笑)。Ken Band的には送り出したっていう感じだったかな。で、AIR JAMが終わって1週間後にはKen Bandで岩手にライブしに行ってるし。そういう状態でした。
──じゃあハイスタで動くことに対して「ここでKen Bandの活動が止まってしまうんじゃ?」みたいな気持ちは全くなく?
Jun そういうのはなかったです。今年はMinamiもKEMURIで出たしね。
──健さんはハイスタとKen Bandでの活動で気持ちをどう切り替えてるんですか?
横山 Ken BandからHi-STANDARDに行くときは切り替えなきゃいけないですけど、そこからKen Bandに戻るときは普通に家に帰るだけみたいな感じなんで。Ken Bandとしてはいつでも人前に出れるように、いつでもライブができるように、機会を見つけちゃ古い曲を引っ張りだして練習してるし。例えば今、飛び入りでライブをやろうって言ったらすぐに何曲もできるぐらいの状態にいつでもしてあるんです。それは長年かけて無駄話をしたりいろんなものを共有してきた結果であって、特に帰ってくる際にはギアをかける必要はないんですよね。
収録曲
- We Are Fuckin' One
- You And I, Against The World
- Soul Survivors
- Not A Day Goes By ※
- This Is Your Land
- Ricky Punks III
- Everybody's Fighting
- Sold My Soul To Rock'N Roll
- I Can't Be There
- Good Bye For A While
- Save Us
- If You Love Me (Really Love Me) ※
※カバー曲
Ken Yokoyama(けんよこやま)
Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年からソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を展開して以降も、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月には初の日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で敢行した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。
2012年11月29日更新