一度断られるも再アタック

──今年初開催となる「RUMBLE×JAG 2025」はどのようなコンセプトで立ち上がったのでしょうか？

綿谷“wata”剛　最初に僕が吾郎さん（武内吾郎）にご連絡したのが、2023年の6月。そのタイミングでは「2024年にAichi Sky Expoで一緒にイベントをやりませんか？」とLINEをしたんですが、一旦断られまして。

武内吾郎　スケジュールの都合でね。

綿谷　その後、2023年の8月に、2025年春のスケジュールをAichi Sky Expoからいただいたので吾郎さんに再提案したという形ですね。なんならもっと前からやりたいと思っていたんですが、いろいろあってこのタイミングでの実施になりました。

武内　私たちも直接ではないにせよ、「綿谷さんがこんなことを考えているみたい」というのはふわっと耳に入っていて、「FREEDOM NAGOYA」をやっている人たちだし、「そうなんだ。成功したらいいね」とどこか他人事のように最初は捉えていたんです。ある日、PIZZA OF DEATHの磯部（友宏）さんとお会いしたときに、「綿くんからこんな話を聞きました」ともう少し詳しい話を聞いて。そのタイミングでも僕はまだ他人事だったんだけど、一緒に飲むことになり。そこで具体的に話もしたんですが、最初はうちの会社のスケジュールの問題でお断りさせていただきましたね。

──綿谷さんはその時点で今回のイベントの特色やテーマは構想していたのですか？

綿谷　最初に思い浮かんだ頃はまだコロナ禍だったので、僕らがバンドとお客さんと作り上げてきた熱いライブができない状況で、パンク・ラウドロックのシーンが衰退していくような気がしたんですよ。それで少し出口が見えてきた2023年6月頃に「シーンの再熱と新しいものを生み出したい」と思って新しいフェスを作ろうと吾郎さんにお声がけしました。

コロナ禍のそれぞれの苦悩

──コロナ禍のシーンを衰退を当時吾郎さんはどのように感じていましたか？

武内　音楽業界、エンタメ業界は、やはり人を集めることが主軸になっているので、当時「密」という言葉が出てきたり、人を集めることのハードルがいつ下がるのか正直全然見えてこなくて。社会的な営業活動はできるのだけれど、我々の業界に日常が戻るのか、果たしてもう戻らないのかもわからないというか。その中で例えば配信ライブのような、新しいパフォーマンスの見せ方をしたり、いろんなトライをしてきた人たちもいたりする中で、ENTHも果敢にトライしてきたわけじゃない？ 良しにつけ悪しきにつけ、「俺たちはこうなんだ」っていう未来に対する提示だったんじゃないかなって、僕は炎上騒ぎをちょっと遠目から眺めてはいたんだけれども。

──補足すると、まだコロナ禍だった2021年7月にENTHが出演していたイベントでモッシュが起きて、それについて各所で物議を醸したんですよね。そのSNSでのやりとりについてダトさんがSNSで苦言を漏らしたら、さらに炎上してしまったという。コロナ禍で活動しているとき、ダトさんはどんな思いを抱えていましたか？

ダト・ダト・カイキ・カイキ（ENTH）　いや、僕らだって、ちゃんとガイドラインに合わせてみた時期もあったんですよ。でもコロナはインフルエンザみたいなもので感染者が完全にゼロになることなんてないと思っていたし、世間の空気感次第で徐々に元のように戻るんだろうから、僕は空気を読まないでいようと思って。捕まるわけでもないし。それに、みんなよくわからない謎ルールを守っているだけで、あの状況下で何をやったらいいかわからず、ただ待ってるだけだった気がして。僕は絶対そうはなりたくなかった。そもそも、そういう社会的な同調圧力を持ち込まず、先輩たちが独自に作り上げてきたシーンの中で思いっ切り遊べるのが、パンク / ラウドシーンの魅力だと思っていたので。だから商業的にやっている人たちの数字の上下があろうがなかろうが、僕たちの好きなカルチャーが揺らがないように、やらせてくれるライブハウスでは、少しずつでもいいからいつも通りの遊びを呼び戻す活動をしようと動いていました。

──その活動を近くで見ていた綿谷さんはどう感じていました？

綿谷　今だから正直に言うと、僕には一応会社のトップという立場的なところがあって、建前を言わないといけない場面もかなりありました。それこそ「FREEDOM NAGOYA」をやるのであれば守らなければならないことも多々ありましたし、経営しているライブハウスもそうだし、レーベルに所属している別のバンドもいるので、いろんな気持ちや状況がわかる分、立場的に公に言えず、言葉を選ぶことがたくさんありましたね。

武内　当時はSNSでの炎上も大変だったけど、一番つらかったのはお客さんで来てる人たちからのクレーム。お金を払って来てくれている人から、「ルールを守らずにあのアーティストはこんなことやっていましたよ」みたいなことを言われても、そういう人たちを排除してやればいいかといったら、それも自分の中でストンと落ちなくて。だから「我々はこういうスタイルなんだ」と言い切れる人たちの考え方はもちろん正しいし、俯瞰で見ちゃう癖がついてる我々からすると、弱腰と言われればそうなんだろうけど、みんなが納得する形でやれたらっていう部分で試行錯誤していた数年間だったと思います。

ダト　僕らはアーティストなので攻めのスタイルを見せられる部分もあると思うんですけど、ライブハウスやイベンターはその土地に根付いていたりするものなので、ローカルで顔が利けば利くほど、そういう動きがしづらいですよね。

武内　まあね。でもdaipon（ダト）も本来は仲間であるはずのバンドの人たちからSNSで「それは違わない？」って言われてたわけでしょ。

ダト　そうですね。あれも結局対面で済ませればよかったんですけど、みんながSNSに書いてしまったので「直接連絡くれればいいのにな」と思っていました。

武内　恨まなくていいところで恨んじゃったりね。

ダト　それぞれが好きなようにやればいい中で、僕らの選択はこれだったというだけなので。みんなにやれと強要するわけでもないけど、ネット上ではそれがうまく伝わらなかったんですよね。