TOMOO|音楽と生きる、音楽で生きる やめようと思ったことは何度もある。だけど…

メジャーだけど
インディーみたいな熱量でやれている

──1stアルバム「TWO MOON」の制作の中で、「この進め方はメジャーならではだなあ」と感じたことなどはありますか?

これはアルバムというよりメジャー2ndシングルの「17」を録ったときの話なんですけど、初めてレコーディング用にプリプロみたいなことをやったんですよね。デモを作る作業を、スタジオをちゃんと押さえて、ミュージシャンの方々のスケジュールも確保してもらって。しかも何回もやらせてもらったんですよ。

──何回も! それは確かにメジャーっぽいエピソードですね。

あれは本当に今だからこそできることだなって思いましたね。もちろん全部の曲でそんなに何回もプリプロをやっているわけではないんですけど、やっぱり頭の中で考えるだけでは見えてこないもの、実際に音を鳴らしてみて初めてわかることってあると思うので、ありがたいです。

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──メジャーデビュー曲となった「オセロ」についてはいかがですか?

「オセロ」は、詞曲ができあがった時点ではサウンドの方向性がまったく自分の中でつかめなくて。それをそのままアレンジャーのmabanuaさんに「自分でもわからなくて困ってるんです」とお伝えして、イメージがつかめるまで何往復かやりとりさせてもらいました。実際に音を聴いてみて初めて「あ、自分はこう思ってたんだ」と気付いてまた考え直す、みたいな感じで、正解を探っていく作業に付き合わせてしまって……たくさん力をお借りしたプロセスではありました。

──これは僕の個人的な感想ですが、「オセロ」は“イコールTOMOO”みたいな曲だなと感じていまして。

あ、ホントですか。

──だからこそ難しかったんじゃないでしょうか。自分を俯瞰で見るのと同じような作業だと思うので。

そうですね、曲が矛盾を持っているんですよ。その矛盾をそのまま同居させようとしてるから……。

──TOMOOさんはおそらく、矛盾を抱えたまま生きていきたい人ですよね。キレイに解決させるのではなく。

はい。それがそのまま曲に表れているので、サウンドの方向性をなかなか絞れなかった。曲のテーマ性がそのまま制作過程にも反映されちゃった感じですね。

──総じて、メジャーでの制作はやりやすいと感じますか?

なんて言うんですかね……メジャーなんだけど、意外とレーベルのスタッフの方たちがインディーみたいな熱量というか、距離感というか。一緒に膝を突き合わせて音楽を突き詰めていく、とことんこだわって「納得いくまでやろう!」みたいな、そういうムーブに付き合ってくれるだけの心意気がある感じです(笑)。

──それは最高な環境じゃないですか。

そうなんですよ! 特にアルバム新規収録の曲に関しては本当にみんなで熱く、楽しく作れました。青春感がありましたね。

──メジャーだからといって「もっと売れる曲にするために、ここをこう直せ」と言われるようなこともなく?

ないですね。目先の売上を気にするスタッフだったら「こんなんじゃウケないよ」「こう直したほうが売れるよ」みたいな話も出るのかもしれないですけど(笑)、そういうことを基本言われないので。クリエイティブを重視する環境でやらせてもらってます。

──この先数十年にわたって残っていく作品にするにはどうするべきかを一緒に考えてくれる人たちだと。

そうです。そういう目線でいてもらっているのはすごく感じますね。

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少しずつ変わってきているマインド

──楽曲制作で苦労することはありますか? なかなか曲が生まれないというような。

しょっちゅうあります(笑)。私の場合、料理で言うと鉢に種を植えて毎日水やりをして、実がなるのを待って……そうやって素材を1つひとつゼロから育んで調理に取りかかるような作り方なので、冷蔵庫に入ってるありものでサササッと作る感じではないんです。曲作りはいつも苦労しますね。でも1曲1曲の密度が濃いことは保証します。

──果汁100%のジュースで、その果物から育てるみたいなことですもんね。楽曲制作をするクリエイターとしてのTOMOOさんとステージに立つ表現者としてのTOMOOさんは、まったく同一の存在なのか、それとも切り離された別の存在なのか、どちらでしょう?

最近は、創作活動をしているときの自分は“陰”、人前で作品について語ったりライブで表現したりするときは“陽”かなあ。けっこうジクジクした気持ちを吐き出して曲にすることも多いんですけど、それが音源になって最終的にライブで披露するときはやっぱり外に向かって開けたエネルギーになってますね。自分の言動や振る舞い、細かい表情も含めて。昔、弾き語り1本でライブをしていた頃は、家で曲を作ってるときとライブしているときは同じ感覚だったんですけど。

──今は自然とマインドが切り替わるようになったんですか?

自然とですね。ありがたいことに今はたくさんの人の前でライブをさせていただける機会が多いので、これまでの自分にはなかった人に伝えようとする姿勢とかコミュニケーション能力が引っ張り出されているんだと思います。

──それによってまた作る曲も変わってきている?

そうだと思います。例えば今回のアルバムのリードトラック「Super Ball」は、この曲が届いた先の誰かとの連帯みたいなことを意識しました。過去にあった個人的なことを日記のように残しておくというよりは、まだ見ぬ自分と似たような思いを抱いている人との共鳴を確信して書いていて。それはライブで多くの人に自分の音楽を受け止めてもらっているのを目の当たりにしてきたことで、ちょっとずつ変わってきた心境の変化だと思いますね。

──そういう新しいTOMOOさんが表現された曲を含んだメジャー1stアルバムが完成して、どのような手応えを感じていますか?

ある意味で「ベストアルバムができた」という気持ちですね。インディー時代の楽曲も含まれてますけど、総じて今現在やってみたかったことは全部やれたし、自分が頭の中で描いた景色の色合いは出し切ることができたんじゃないかなと思います。

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JASRACは太陽光みたいな感じ

──アルバムが完成して、非常に充実感を得ているのが伝わってきました。そうした健全なアーティスト活動を支えるものとして、著作権収入というものが大きな役割を担っていますよね。TOMOOさんが著作権のことを最初に意識したのはいつ頃になりますか?

自分の曲が初めてラジオでかかったときですね。2017年か、もうちょっとあとくらいかなあ。初めて著作権使用料がわずかですけど入ってきて、「あ、もらえるんだ?」と思った記憶があります(笑)。ただ……それ以前にリリースした自主制作のミニアルバムに関しては、実は著作権登録(著作権の管理委託)を当時はしていなくて。もちろん登録しなきゃとは思ったんですけど、そのときは申込金がかかることもあり躊躇してしまって(※)。「まだ誰も注目していないし、まあいいか」みたいな(笑)。でも、今はメジャーで音楽出版社を経由してJASRACに登録しているので、大丈夫です!(笑)

※現在は申込金無料

──アーティストが作詞作曲した楽曲による収入には、大きく「原盤権」によるものと「著作権」によるものの2種類があります。例えばサブスクで楽曲が再生された場合、本来であれば両方の使用料がアーティストに入ってくるべきなんですが、仮にJASRACなどに著作権管理を委託していない場合、原盤権のほうしか入ってこないことになるんですね。

……えっと、もう1回お願いします(笑)。

──難しいですよね(笑)。例えば先ほど出た自主制作盤の例で言うと、現状ではサブスクで再生された場合に収益が還元されているのは「原盤権」に関する使用料だけで、「著作権」の使用料は還元されていない状態になっているということです。本来であれば受け取れるはずのお金が受け取れていない、という。

なるほど。えーと……誰かしらがYouTubeとかで私の曲をカバーしてくれたときに発生するのは「著作権使用料」ですよね?

──そうです。作詞家や作曲家などが受け取るべきお金ですね。楽曲の使用されるシーン全部をアーティスト自らが見張って発見することは現実的に難しいので、JASRACなどの著作権管理団体が代わりにやってくれているわけです。特に今は、ネット経由で誰でも楽曲を発表できる時代。どこにも所属していないような場合、JASRACと個人で契約することで、しっかり著作権料を得ることができるようになるんです。

すごいなって思ってました。そう考えると、JASRACさんって頼もしい存在ですね。

──縁の下の力持ち的な。

そう言うと、縁の“下”にいるみたいな感じになっちゃいますけど……。

──ああ、上とか下とかじゃなくて。

はい。なんか、そこらじゅうにいる……太陽光みたいな感じですかね。太陽の光って、「そんなところにも届きますか?」というくらい、あらゆるところに入り込んで恵みを与えてくれるじゃないですか。しかも常に。さっきのYouTubeのカバー動画も、それと似た感じがしますね。

──なるほど。まとめると、JASRACは太陽光くらい頼もしい存在であると。

あははは。そうですね、はい。

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ライブ情報

TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"

  • 2023年11月2日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI ※アコースティック
  • 2023年12月15日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年12月17日(日)宮城県 Darwin
  • 2023年12月23日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2023年12月24日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年1月5日(金)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2024年1月13日(土)大阪府 フェスティバルホール
  • 2024年1月30日(火)東京都 TOKYO DOME CITY HALL

プロフィール

TOMOO(トモオ)

1995年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。6歳からピアノを弾き始め、高校時代にYAMAHA主催のコンテスト「The 6th Music Revolution」ジャパンファイナルに進出した。大学進学後に本格的に音楽活動をスタートさせ、2016年8月に1stミニアルバム「Wanna V」を発表。2021年8月に発表したシングル「Ginger」がさまざまなアーティストから注目され、ミュージックビデオは272万回以上再生されている(※2023年9月時点)。2022年8月にポニーキャニオン内のIRORI Recordsより配信シングル「オセロ」でメジャーデビュー。2023年6月には東阪のNHKホールでワンマンライブ「TOMOO LIVE TOUR 2023 "Walk on the Keys"」を開催した。9月にはメジャー1stアルバム「TWO MOON」をリリース。11月からは本作を携えた全国ツアー「TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"」の開催を控えている。

衣装協力 / ROSE shimokitazawa(TEL:03-3465-6655)


2024年3月28日更新