ケンカはしないがめちゃくちゃ話し合う
──先ほどもおっしゃっていましたし、いろいろなインタビューでもお二人は「自分たちのいいと思った音楽をやるだけ」と答えています。具体的にはどういった音楽が琴線に触れるのでしょうか?
別府 「何をもって俺はいいと思っているのか」というのは、よく考えるんですけどね。なかなかちゃんとした答えが出たことはないです。
松田 やっぱり言葉にしやすいのは“ダサくてカッコいい”なのかな。曲を作るときに、このワードは毎回出てきますね。
──近年、そういった両義的な価値観が受け入れられづらくなっているような気がするんです。いいのか悪いのか、わかりやすく提示しないといけないような。
松田 そういう側面もあるかもしれないですけど、自分はそんなに気にならないですね。
別府 僕らのやってることが伝わってないなら、ここまでこれてないでしょうし。
松田 うんうん、みんなが“ダサくてカッコいい”僕らの音楽をどう聴いてるのかわからないですけど、よさは伝わってるのかなと。
別府 そもそも、あんまり「こう聴いて、こう感じてほしい」とも思ってないかもしれない。
松田 正直、曲はリリースしたら半分はリスナーのものという気持ちでいるので。それぞれの解釈で捉えていただければ。僕たちが無理やり価値観を押し付けることはないです。自由に聴いてほしい。
──「ダサくてカッコいい」は曲を作るうえでの感覚であって、リスナーはそれを100%カッコいいものとして受け取ってもいいという。
松田 「めっちゃダサい」と思って聴いてもいいし(笑)。どんな聴かれ方をしてもうれしいです。微妙なニュアンスが伝わりづらい時代なのかもしれないですけど、それを覆すくらいのよさがある曲を作っていけたらいいのかなと。
──お二人はすごく仲がいいですよね。
松田 そうですね。ケンカしたことないです。
──一方で、過去のインタビューで「4、5人のバンドが続くのは奇跡」とおっしゃっていて。
別府 バンドやったことない人はわかってないですよね(笑)。やべえヤツらがそんなに集まって何年も活動するなんて、普通はありえないですよ。
──でも、2人組のほうが人間関係で何かあったときに逃げ場がないんじゃないかと思うんです。
松田 ケンカはしないけど、めちゃくちゃ話し合うんです。2人が納得するまで。
別府 リモートでのコミュニケーションが苦手なんですよね。会話のタイム感が悪くなるし、相手の気持ちも見えずらいんで。だから、2人で作業するときは必ず対面なんですけど、合流したらまずタバコを吸います。タバコは意外と大事かもしれないです。嫌になっちゃいそうになったら、とりあえず一服しに行くみたいな。2人で散歩したりもしますし。
松田 楽曲制作は脳の体力勝負みたいなところがあるんで、疲れてきたら30分寝ることもあります。
別府 長い時間作業してると「これ本当に意味あるかな?」という瞬間が来ちゃうんですよ。どうしても脳みそが疲れちゃって。
松田 もう判断できなくなる。そういう休憩のタイミングが同じというのも大事なのかもしれないですね。
別府 どっちかが「寝てんじゃねーよ!」ってなったら嫌だよな(笑)。
──そんなに円滑にコミュニケーションできる2人がバンドを組んでることのほうが奇跡的な気がします。
別府 いや、俺たちと同じヤツがあと2人いたらたぶんもう解散してます(笑)。もう手がつけられなくなってる。
松田 本当に無理だと思う(笑)。4人組のバンドをやってたこともありますけど、ミュージシャンとしてのエゴが収集つかなくなるんですよね。クリエイティブのすり合わせができるのは2人が限界。もちろん、4人でもうまくいくバンドもいると思うんですけど、やっぱり奇跡だなと。
──その奇跡がロックバンドの神秘性を担保してるのかもしれませんね。
別府 それはありますよね。より儚いものになる感じで。
松田 儚いのはカッコいいですよね。
──離婚伝説は、楽曲やビジュアルはファンタジーに満ちているのに、内実はロックバンド幻想からかけ離れているという、そのバランスが魅力になっているんだなと。
別府 2人で活動し始めたのが、それなりに大人になってからだったので。19歳くらいで組んでたら全然違う関係性になってると思います。
松田 それはあるかも。いろいろ経てからやってるから。
──そう考えると、根拠のない自信を持ってがむしゃらにやっていた時期も無駄ではなかったという。
松田 無駄じゃないっすね。無駄なことは1つもなかった。
──ちなみに、バンドでのお二人のそれぞれの役割は?
別府 彼は家を出る3分前にタバコを吸い始めるので、「それは間に合わないから、行くよ」という係ですね。
松田 この人はおっちょこちょいなところがあるんで、忘れ物してないかチェックしてます。
別府 よくお店に忘れそうになったケータイを持ってきてもらってます。
松田 こないだはキャリーケースを忘れそうになってましたから。
「打ち上げには音楽のすべてがある」
──先ごろ配信されたシングル「しばらく」ですが、2025年一発目のリリースがこの曲になった意図はありますか?
松田 出すべきタイミングがきたというだけですね。
別府 本当は去年の12月に出そうとしていたんで(笑)。
松田 活動当初から温めていた曲なんです。3年間くらい眠っていたんですけど、そろそろ詰めてみようかなと。以前の感性だと、いくら試行錯誤しても納得いくところまで持っていくことができなかった。昔の僕らと、今の僕らが組み合わさった曲なので、面白いですよね。
──非常にスケールが大きくて、ごまかしが利かない曲ですよね。バンドとして、腕力が強い演奏や表現が必要なんだと思います。それがこの3年間で身に付いたと思いますか?
松田 うんうん、それはあるかもしれない。
──佐野康夫さん(Dr)、山本連さん(B)、柿沼大地さん(Key)のお三方が参加していますが、サポートメンバーを含めてバンド感がさらに上がっていますよね。
別府 一緒にやってもらうミュージシャンは「その曲に合うかどうか」でお願いしてるんですけど、この3人は一番一緒にレコーディングをやっているので、俺たちのやりたいことをわかってくれやすいんですよね。
松田 コミュニケーションが取りやすいメンバーで。
別府 プレイ以前にこちらがやってほしいことが伝わらないと、いいものはできないので。
──こういった曲を照れや言い訳なしでアウトプットできるのが離婚伝説の強さだなと。
別府 みんなが思ってるより、そういう感覚なく作ってるんですよね。
松田 よく言われるんですけど、僕らはもともと照れてないんで。
──ロック的には王道ですが、現状のJ-POPの潮流からは逸脱もしていると思います。そういった時代のすう勢には左右されたくないという意識もあるんですか?
松田 流行と無縁の存在になれればカッコいいですよね。本当にその時々でやりたい音楽をやっているだけなので。気にしてないです。
──最後に、改めて今音楽をやっていて一番楽しいと思うのはどんなときですか?
松田 ずっと楽しいんですけど、曲が完成して、ライブをやって……その後の打ち上げじゃないですか。
別府 それも音楽活動に含むの?(笑)
松田 あれはやっぱり気持ちいいですよ(笑)。
──今の活動ペースだと、打ち上げくらいしか達成感を噛み締める余裕がないという。
別府 そうですよ。最近は打ち上げを欠席することもありますから。
松田 打ち上げがなくなったらもう……。
別府 「打ち上げには音楽のすべてがある」って書いといてください。
ライブ情報
離婚伝説 2025ONEMAN TOUR
- 2025年11月1日(土)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
- 2025年11月2日(日)宮城県 SENDAI GIGS
- 2025年11月8日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年11月15日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年11月16日(日)広島県 BLUELIVE HIROSHIMA
- 2025年11月22日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2025年11月23日(日・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年11月30日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
オフィシャルファンクラブ2次先行
2025年2月15日(土)12:00~開始予定
プロフィール
離婚伝説(リコンデンセツ)
2022年に松田歩(Vo)、別府純(G)の2人で活動を開始。バンド名はマーヴィン・ゲイが1978年にリリースしたアルバム「Here, My Dear」に由来する。2022年に発表した「愛が一層メロウ」をはじめ、ソウルやAORを基調としたスタイリッシュなサウンドとキャッチーなメロディで注目を浴びる。2024年3月20日に1stアルバム「離婚伝説」をリリースし、その3日後に行われた東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)での初ワンマンライブでメジャーデビューすることを発表。2024年はコンスタントにリリースを行う一方で、初ワンマンツアーの開催、台湾のフェス「浪人祭~Vagabond Fest.2024」や全国各地のフェスへの出演など精力的に活動を展開した。2025年1月に配信シングル「しばらく」をリリース。
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