ナタリー PowerPush - ジェームス・イハ×the telephones
ニューヨーク音楽談義
1998年にリリースした1stソロアルバム「Let It Come Down」が、世代を超えて聴き継がれているジェームス・イハ。母国アメリカだけでなく世界中で根強い人気を誇る彼が、実に14年ぶりとなる2ndソロアルバム「LOOK TO THE SKY」をリリースする。
1stアルバム発表当時はまだTHE SMASHING PUMPKINSのギタリストとして名を馳せていた彼も、現在はソロアーティストとして、プロデューサーとして、ときにはリミックスを手がけるクリエイターとして多岐にわたって活動中。そんな彼の新作には、YEAH YEAH YEAHSのメンバーやTHE CARDIGANSのニーナ・パーションといった仲間のアーティストも多数参加し、作品に華を添えている。
今回は、彼の所有するニューヨークのスタジオでレコーディングを敢行したこともあるthe telephonesの石毛輝(Vo, G, Syn, Programming)と岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)が、新作を引っさげて来日したイハと初対面。憧れのアーティストを前に緊張する2人だったが、ソングライター談義、そしてニューヨーク談義に花を咲かせたのだった。
取材・文 / 岡村詩野 撮影 / 平沼久奈
the telephonesはすごくエネルギッシュ
石毛輝 僕らジェームスの1stアルバムが大好きで。本当にすごく影響を受けたんです。
ジェームス・イハ それはうれしいね。新しいアルバムは聴いてくれた?
石毛 はい。「良い曲をちゃんと届ける」アルバムになっていてすごく良かったです。ジェームスの音楽って、アコースティックギター1本でちゃんと聴かせることができる曲ばかりなんですよね。僕はソングライティングもしてるんですけど、アコギ1本でもちゃんと曲が成り立つっていうのが、いい曲の最低条件だと思ってるんです。今ってそういうソングライターが減っているような気がするんですよね。テクノロジーが発達して、誰でも簡単に曲を書くことができるようになったけど、ちゃんとした曲を書ける人って少ないような気がして……。
イハ ありがとう。いい曲を書いて、それをオーディエンスに届けるって大変なんだよね。今回の「EMI ROCKS」では2人だけでライブをしたけど、自分の曲が観客に届いているのか、すごく不安だったんだ。the telephonesはライブパフォーマンスがすごくエネルギッシュで、オーディエンスをしっかり巻き込んでいくことができてて、ステージ袖から見ていてうらやましかったよ。
石毛 そんな、とんでもない! 観てくださってありがとうございます!
ニューヨークは刺激的な街
イハ そうそう、the telephonesはニューヨークの僕のスタジオでレコーディングしたんだよね? 去年の7月頃だっけ?
石毛 そうなんです。「Rock Kingdom」というアルバムのレコーディングで。本当にありがとうございました! ジェームスには会えなかったけど、1カ月くらいスタジオを使わせてもらって、とても感謝してます。
イハ それは良かった。ニューヨークに滞在してみてどうだった?
石毛 刺激的でしたね。街中で自然に音楽が鳴っているというか。東京もにぎやかだし音楽は鳴ってるけど、ニューヨークはすごくナチュラルに街中でパフォーマンスをしているミュージシャンがいるんですよね。イーストビレッジとか魅力的だったし、チェルシーはギャラリーも多くてとても楽しかったです。
岡本伸明 でも、街は汚かったかも(笑)。
イハ ごめんね(笑)。
石毛 いやいや。でも「Setagaya」ってラーメン屋があったりして、親近感が湧きました。今の僕が住んでるところが、世田谷っていう地域なんで。東京にある本店にも行ったことがあります(笑)。
イハ ああ、確かにラーメン屋があるね。アベニューAあたりかな。あそこは結構にぎやかな地域だね。とにかくニューヨークを楽しんでくれたなら良かったよ。
アルバム6枚目で納得できる曲が作れる
イハ ところでthe telephonesはいつもどうやって曲を作ってるの? 僕はさっき指摘してくれたように、アコギ1本で聴けるように弾き語りで作る曲もあるんだけど、何も準備もせずにスタジオに入っていろいろと試して曲を作ったりすることもあるし。もちろん、それでうまくいくこともあれば、失敗することもある。でも、できる限りいろんな方法を試してみたいんだよね。最終的にいい曲に仕上げていくっていう目標はあるんだけど。
石毛 僕の場合は、頭の中で曲のイメージを作って、それを音にしていくような感じですね。あまり楽器編成にこだわってないというか、例えば絶対にギターを使わなきゃ!っていうのはないです。the telephonesの場合は、まずオーディエンスを踊らせることが目的で。だからメロディとコードで曲を作ると、踊れなくなっちゃうんですよね。
イハ なるほどね。そうなると曲を作るのは難しそうだね。まあ、誰もがそんなに満足できる曲を簡単に作れるわけじゃないから。アルバムでいうと6枚目くらいになったら自分で納得できる曲が作れるようになるよ(笑)。僕自身、まだまだだと思ってるしね。
岡本 へえ! ジェームスでもまだまだなんだ……。
イハ だからこそ音楽は面白いんだよ。
作曲はフィーリングや直感を大切に
石毛 僕、実はソロ名義でも作品を出してて。ソロの場合だと、ピアノ、鉄琴、メロディオンで曲を作ることもあるんです。あとはフィールドレコーディングというか、自然の音を取り入れたりもしていますね。
イハ それは面白そうだなあ。ぜひ聴きたいね。
石毛 ぜひぜひ! 今度お渡ししますよ。ところでジェームスは曲を作る上で何かコツはあるんですか?
イハ 僕の場合、フィーリングや直感を元に曲を作るようにしてるね。メロディでもリズムでもいいんだけど、「これ新しいなあ」「これいいなあ」って直感でピンときたものを取り入れるようにしてる。
石毛 歌詞は最後に書くんですか?
イハ そうだね。音が先なんだけど、言葉が自然と出てきたらあたためておいて、その言葉を元に広げていったりするね。
石毛 それは僕も一緒ですね。サウンドに合った言葉を見つけて、乗せていくような方法で書いてます。
CD収録曲
- Make Believe
- Summer Days
- To Who Knows Where
- Till Next Tuesday
- Dream Tonight
- Dark Star
- Appetite
- Gemini
- Waves
- Speed Of Love
- 4th Of July
- A String Of Words
- Diamond Eyes ※ボーナストラック
- Stay Lost ※ボーナストラック
CD収録曲
- D.E.N.W.A
- swim, swim, swim
- sick rocks ~Too Fast version~
- WoNDeR WoMaN ~WoNDeR Boy version~
- HABANERO ~Bitter Sweet MIX by Akira Ishige~
- White Elephant ~So, Come on!!! version~
ジェームス・イハ
1968年3月生まれ、アメリカ・シカゴ出身のアーティスト。1987年にTHE SMASHING PUMPKINSの結成メンバーとして音楽活動を始める。1998年に1stソロアルバム「Let It Come Down」を発表し、ソングライターとして高い評価を獲得。2000年にTHE SMASHING PUMPKINSを脱退してからは、A PERFECT CIRCLEやTINTED WINDOWSのメンバーとしても活躍。さらに、バンド活動と並行して、ほかのアーティストのプロデュースや、映画音楽の制作なども手がける。2012年3月に14年ぶりとなる2ndソロアルバム「LOOK TO THE SKY」を発表。
the telephones(てれふぉんず)
2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn, Programming)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパンと契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビュー。2010年8月にはメジャー2ndアルバム「We Love Telephones!!!」、2011年10月には3rdアルバム「Rock Kingdom」を発表している。さらに同年12月23日にはバンド史上最大規模となるさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」も開催。ハイテンションなライブパフォーマンスは、ロックファンの熱狂的な支持を集めている。