音楽ナタリー Power Push - 堀込泰行
ソロ第一歩はドリーミーでカラフルな“普通の音楽”
堀込泰行とギター
──「Buffalo」はギターを聴かせる唯一のインストゥルメンタル曲で、情念のアルペジオが炸裂しています。
ははは(笑)。あれ、ずっと続けるの大変なんですよ(笑)。
──近年のライブを観て思ったんですが、泰行さん、けっこう変わったギターをお持ちですよね。リッケンバッカーの450とか。あれ、ジョニー大倉さんがキャロルの解散コンサートで使ったモデルですよ。
へえ、そうなんだ? それが450と呼ばれるものだということすら知らずに買ったんですけど。
──そう言えば馬の骨に「Carol」という曲もあったし(2ndアルバム「River」収録曲)、実はキャロルのファンだったのかなと。
全然関係ないです(笑)。単にリッケンの音が欲しくて。ただ、あまりビートルズテイストの強いルックスのを買うとそう見られちゃうから、できるだけ違う形のものを選んで。でも、今回のアルバムではリッケンバッカーは使ってないんじゃないかな? フェンダーのテレキャスターデラックスは随所で使ってますけど。
──リアとフロントのピックアップにハムバッカーを積んだテレキャスターですね。
そう。ギブソンの技術者を連れて来て作らせたという。
──「Buffalo」で途中からガンガン入ってくるギターもテレキャスターデラックスですか?
いや、あれはデモ段階で入れていたエレアコの音なんです。エレアコをPCにつないで、アンプのシミュレーターを通してああいう音にしてるんです。だから元の音を聴くとすごいペラッペラ(笑)。まあ、デモならではの奇跡というか、面白い仕上がりになったと思います。真面目に取り組んじゃうとああいうふうにはならないんじゃないですかね。
「1」よりも「One」
──「最後の週末から」はアルバムリード曲でもいいくらいのキャッチーな楽曲ですよね。ここまでポップに徹した曲も、しばらくなかったんじゃないですか?
かもしれない。僕じゃなくて、誰か女の子に歌ってもらったほうがいいんじゃないかと思ったぐらい(笑)。ちょうど映画「ジャージー・ボーイズ」を観たあとに作った曲で、自分としてはThe Four Seasonsみたいな曲にしたかったんだけど、なんなかったですね。フランキー・ヴァリみたいには歌えなかった(笑)。
──そこから「僕らのかたち」への流れはエンディングにふさわしい仕上がりですね。全編を通して聴くと「One」というタイトルから改めて、個人名義での1枚目、ソロとしてやっていくという意思が感じられました。
タイトルはまさにその通り、1人ということと1枚目という意味を重ねてこのタイトルにしました。表記は「1」よりも「One」にしたほうが、代名詞的な意味も出てくるからいいなあと思って。
──聴いてくれたあなたの曲でもあるよ、という。先日出たKIRINJIのニューアルバムが「ネオ」(Neo)なのは、兄弟間で談合でもあったんじゃないかとも思ったのですが(笑)。
ははは、それはないです(笑)。
──ジャケット写真では、フランスの画家アングルが新古典主義からロマンチシズムへの転換を示した油彩画「グランド・オダリスク」をお持ちですけれども、これは?
これはデザイナーの木村豊(Central67)さんの好みというか、木村さんが「この絵を使ってジャケットを撮りたい」と。もう1つ「モナ・リザ」という案もあったらしいんですけど、木村さんの中でルーヴル美術館がブームだったんじゃないですかね(※「モナ・リザ」と「グランド・オダリスク」に描かれている女性は、所蔵されているルーヴル美術館の2大美女と呼ばれている)。
次のアルバムはもっと早く届けたい
──最後にこれからのお話を。12月に単独ライブも決定しています。アルバムレコーディングは伊藤さん、ベースの沖山優司さん、ドラムの北山ゆう子さんというメンバーでしたが、ライブもこのメンバーで?
そうですね。加えてギターで松江潤くんが手伝ってくれる予定です。
──キリンジ脱退から今回のアルバム完成までは3年半かかりましたが、今日こうして話をうかがった限り、2作目のアルバムはけっこう早く届くんじゃないかという予感がしています。
そうですね。やっぱり作品を出すことは大事だと思ったし、この動きを止めることのないよう、しっかりとやっていきたいですね。次がまた3年半後とかならないように。
──今、Bostonのペースですから。
Bostonは7、8年周期でアルバム出すバンドでしょ? それはない(笑)。
──馬の骨の2ndからは7年経ってますし、油断はできないです(笑)。
ああ、ソロ作品だとね(笑)。まあ、次のアルバムはもっと早く届けたいとは思っています。今はまだ曲の断片みたいなものしかないんですけど、次は少しエッジィなものにするのもいいかな、なんて。でも、どうなるかは取りかかってみないとわからない。バンドサウンドから離れるのかもしれないし、もうちょっと今風の音に近付けるようなことをするのかもしれないです。
収録曲
- New Day
- Shiny
- Waltz
- Wah Wah Wah
- ブランニュー・ソング
- Jubilee
- さよならテディベア
- Buffalo
- 最後の週末
- 僕らのかたち
堀込泰行1stアルバム「One」発売記念イベント
- 2016年10月22日(土)
- 東京都 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
- 2016年10月29日(土)
- 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース
- 2016年10月30日(日)
- 愛知県 名古屋パルコ東館 6F タワーレコード名古屋パルコ店内イベントスペース
- 2016年11月5日(土)
- 福岡県 タワーレコード福岡パルコ
- 2016年11月12日(土)
- 北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店
内容:ミニライブ&サイン会
堀込泰行LIVE2016
- 2016年12月12日(月)
- 東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2016年12月14日(水)
- 大阪府 UMEDA AKASO
堀込泰行(ホリゴメヤスユキ)
1972年5月2日生まれ。1997年に兄・堀込高樹とのバンド・キリンジでデビューを果たす。2005年にはキリンジと並行してソロプロジェクト・馬の骨としての活動も行い、2013年4月のキリンジ脱退後は個人名義でのソロ活動を開始。2014年11月には配信シングル「ブランニュー・ソング」を発表した。2016年10月には個人名義による1stアルバム「One」をリリース。自身の作品のほか、ハナレグミ、安藤裕子、一青窈、畠山美由紀、Keyco、松たか子、南波志帆、鈴木亜美といったアーティストへの楽曲提供でもソングライターとして独自の個性を発揮している。