音楽ナタリー Power Push - HISASHI(GLAY)×吉田豪
AUTO-MODからエヴァまで 同世代2人のサブカル大放談
「もしかしたらプロとしていけるんじゃないか」
──「GREAT PUNK HITS」に入ってる曲は大体カバーしたらしいですね。
そうですね。とにかく雑食だったので、なんでもカバーして。ANTHEMとかジャパメタも大好きだったし、いろいろやっていましたね。
──音楽的な変遷も、すごいわかるんです。ちょうどバンドブーム期にパンクがビートパンク化して面白くなくなってきたときに、ボクもHanoi Rocksとかに興味が向かって。
一緒ですね。で、いろいろやりすぎて自分で何をやりたいのか、ワケがわからなくなったところでGLAYに誘われて。オリジナル曲をやってるGLAYに入ったことで「こういうのも1つの音楽なんだ」と気付かされたんです。
──そういえばGLAYのバンド名の由来がJun Gray(責任転嫁、BITOUSHA、ブラッドベリ、KENZI&THE TRIPS、BAD MESSIAH、DESSERT、Ken Band)って本当なんですか?
本当ですね。そのあとにJun Grayさんから、すごく長い手紙をいただきました。僕とTAKUROはよく「宝島」とか読んで、それこそ「KENZI&THE TRIPSってバンドがいて」みたいな感じで、いろいろお互い情報交換してたんです。GLAYのバンド名の由来は、Jun GrayさんだったりとかBOØWYの歌詞だったりとか、いろいろ説はありますが……。
──その中の1つではあると。
あります。確実にそうです。で、GLAY結成した頃に、日本でもロックバンドがビジネスになってきたりとかしたので、「もしかしたら自分たちもプロとしていけるんじゃないか」みたいなことを思うようになって。函館にはもちろんレコード会社もないし、メジャーデビューなんて夢のまた夢みたいな話だったんですけど、何かそういった希望を与えてくれるようなつながりが、どんどん点と点が結び付いていったんですね。
──そして、東京のサブカル的な文化に過剰な幻想を抱いたまま上京して。
だから、とにかく「宝島」で目にしたライブハウスは全部出ようみたいな感じで。新宿ジャムからANTIKNOCKから、毛嫌いされたけどとにかく出ようみたいな感じで出てました。でも、僕らが上京した頃って時代的にはヴィジュアル系のるつぼというか、もう底辺のヴィジュアル系がたくさんダラダラ朝までライブやってるみたいな感じで。で、同世代っていうこともあって、すごくみんなと友達にもなれたし、「誰が次デビューするんだ?」みたいな話をしていたし、「あいつらは誰々のローディやってるから、すぐデビューできるよ」みたいな話を聞くこともあって、ちょっとなんて言うんだろう、裏切られるわけです。「あ、そういう世界なの?」みたいな。
──夢を抱いていた世界の現実を見ちゃって。
でも、やっぱり志の高いバンドはそうじゃなくて、自分らでちゃんとやっていこうみたいな感じだったんで。自分たちも神楽坂EXPLOSIONとかで、今の「GLAY EXPO」みたいなイベントを小規模でやるんですね。開場から開演までの時間がもったいないから、TAKUROが弾き語りをするみたいな。前回のライブのビデオを家でダビングして、帰りにそれをプレゼントしたり。くだらないことなんだけど、ヴィジュアル系みたいな人が絶対やっちゃいけないようなことをやってましたね。
──サービス過剰なぐらいに(笑)。
そうそうそう(笑)。そういうのがすごく面白くて。人気はなかったんですけども。でも、すごく運がよかったっていうのもありますね、僕らは。エクスタシーレコード(YOSHIKIによって1986年に設立された、GLAYが最初に所属したレーベル)が新しいことをしようとしていたところに偶然いた、みたいな。
デビューぎりぎりまでエアコンのパーツ作り
──ボクも当時から金髪だったから、金髪でもできるバイトってことだと思うんですけど、バイトの職種もHISASHIさんと似てたと思います。
ゲームセンターとかビデオテープを修復するバイトとか。
──ボクもやりましたよ。ビデオテープの修繕の機械があるんですよね。
そうそう。カッターでテープを切って留めるみたいな。
──銀色のシールでテープのうしろを。
そうです、やってましたね。ゲームセンターは当時「ストリートファイターII」が全盛期だったので、それがもう店内の6割ぐらいあって。対面式の対戦ゲームだったから喧嘩を止める役みたいな、「それ禁じ手だろ、お前!」みたいに怒ってる人を「まあまあ」って(笑)。
──「スト2」きっかけで本物のストリートファイトになっちゃう(笑)。
そうなんですよ(笑)。
──ゲーム好きが高じてゲームセンターでバイトを始めたんですか?
それもありましたね。ゲームは昔から大好きで。マンガ「ゲームセンターあらし」の世代ですから、僕は。
──すがやみつる先生の。そこもまったく同じです。
で、小学校高学年ぐらいで、NECブームが来たので、パソコンを買ってもらって。
──すがやみつる先生がそういう本を出してましたからね。
「こんにちはマイコン」! パソコン、マイコンブームがあって、そっちに興味を持つようになって。まあ、周りからはあんまりいい目で見られなかったですね、当時。
──モテる趣味じゃないですからね。
うん。それが今、一般化してるっていうのも、あの頃には考えられなかった未来ですね。
──当時、ボクが働いていたゲームセンターで一緒に働いていたのが、元ANTHEMの人でしたよ。初代のボーカルで、そのあとにDANCERを結成した前田“トニー”敏仁さんで。
すごい話ですね(笑)。GLAYでANTHEMのカバーしたことあるんですよ。まあ、バイトの話で言うと、どうしてもGLAYみたいなバンドやってると髪が赤だったりするし、もちろん練習もあるから、メンバーのみんなとスケジュール合わせなければいけないし、どんどんできるバイトが限られていって。小さな工場というところまで行きましたね。デビューぎりぎりの頃は。エアコンのパーツを作るみたいな。意外と自分に合ってたというのもあるんですけど。
「ガンダム」か、結局
──基本的にサブカル的な趣味は「宝島」で学んでいった感じなんですか?
そうですね。判型が小さかった頃から「宝島」はすべて好きだったんですけど、一番何が好きかってやっぱり、怪しさだったり、自分だったら観ることもないだろうっていう、すごくコアな映画の紹介ページとか。
──ああいう映画のページも町山智浩さんがやっていたわけですからね。
あ、そうなんですね。それ以外にもキャプテンレコードの広告とか、もちろん「VOW」もそうだけど、ああいったもの、すべてが魅力的でしたね。それこそレッチリとかも「宝島」で知った感じで。すげーバンドがLAから登場した、みたいな。
──LA特集みたいな企画でデビューアルバムの時点で紹介されてましたね。
たぶん一生聴かないだろうなと思っていたバンドが、こんな世界的になるとは、みたいな。BUCK-TICKを知ったのも「宝島」でしたね。あと、ステージでセミを食う女がいるみたいなのも知ったり(笑)。
──泯比沙子さんですね。
もうついていけないとか思いながら、毎月「宝島」を買って読んでました。で、今日の取材に向けて、いろいろと準備しながら考えたんです。そういえば、タク(☆Taku Takahashi)くんとかTeddyLoidとかと一緒にやるようになったのって、「Panty & Stocking with Garterbelt」みたいなアニメがきっかけだったりするから、もとを正すとガイナックスになって。もともとを正すと日本サンライズ(現:サンライズ)になって、「『ガンダム』か、結局」と思ったんですよね。「戦闘メカ ザブングル」とか好きだったんですけど、結局ナムコだったりサンライズだったり、そういうコアっていうか日本の持つ文化の象徴みたいなところから、細かく自分が好きなものに手を出したのかなって。
──「ガンダム」にかぶれていたときも興味の対象は音楽面だったりしたんですか?
はい。絶対に劇場でEPを買ってましたね。すぐ影響を受けちゃうんです。だから、僕、「風にひとり」っていう曲を書いたんですけど、あれ完全にもう、「機動戦士ガンダム 哀・戦士」の挿入歌「風にひとりで」のオマージュですから。
──井上大輔の!
そうです。でも、誰も何もツッこんでくれないっていう(笑)。まあ、そういうものもGLAYで小出しにしながら。僕、インターネットを始めたのが1995、96年でわりと早くて。ようやく趣味のパソコンを買えるようになったから、「グロリアス」のプリプロとかもそれでやったんです。わりとそういったテクノロジー系の音を入れ出したのも96年にDTMというものに触れ出してからですね。
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- GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」 / 2016年8月3日発売 / LSG
- [CD+DVD] 2052円 / PCCN-00023
- [CD] 1512円 / PCCN-00024
CD収録曲
- デストピア
- 超音速デスティニー
- JUSTICE [from] GUILTY(GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1)
- 微熱Ⓐgirlサマー(GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2)
- 黒く塗れ!(GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt)
- everKrack(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- coyote,colored darkness(ROCK'N'ROLL SWINDLE at NIPPONBUDOKAN)
- WORLD'S END(GLAY ARENA TOUR 2007 "LOVE IS BEAUTIFUL")
DVD収録内容
- RX-72 -54th SINGLE EDITION- HISASHI×茂木淳一の対談や解説を元に本作を徹底解剖!
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEO
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEOメイキング
- 彼女はゾンビ(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- デストピア(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
- 2016年9月9日発売 [CD2枚組+Blu-ray] / 8943円 / LSG / PCCN-90003
DISC 1
「BEAT out!」Remix & Remastering 2016
- More than Love
- Yes,Summerdays
- 原色の空 <Cloudy Sky>
- Trouble On Monday
- Together
- 月に祈る
- 生きてく強さ
- 週末のBaby talk
- グロリアス
- 軌跡の果て
- Miki Piano
- Cynical
- Believe in fate
DISC 2
「BEAT out! Anthology」Demo & Live in 1996
- More than Love Live ver. from 東京厚生年金会館
- More than Love AG Demo
- Yes,Summerdays AG Demo
- Yes,Summerdays Demo
- 原色の空 <Cloudy Sky> Demo
- Trouble on Monday Demo
- Together AG Demo
- Together Demo
- 月に祈る Live ver. from 東京厚生年金会館
- 生きてく強さ Demo
- 週末のBaby talk Demo
- グロリアス Demo
- 軌跡の果て AG Demo
- 軌跡の果て Demo
- Miki Piano Demo
- Cynical Demo
- Believe in fate Demo
DISC 3(Blu-ray Disc)
Live of BEAT out! Days
- 「BEAT out! '96 TOUR」より1996年3月5日 渋谷公会堂公演(全曲収録)
- 「BEAT out! reprise TOUR」より1996年9月9日 日本武道館公演(全曲収録)
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。8月に54枚目のシングル「[DEATHTOPIA]」をリリース。