音楽ナタリー Power Push - HISASHI(GLAY)×吉田豪
AUTO-MODからエヴァまで 同世代2人のサブカル大放談
アニメの主題歌をやるのは感慨深いものがある
──じゃあ、そろそろ新曲の話でもいきますか。
そうですね(笑)。これまでGLAYで僕が書いてたのは、カップリング曲だったりアルバムの曲だったり、やっぱり“メインカルチャー”じゃなくて“サブカルチャー”だったんですよね。カウンターカルチャー、カウンターメロディとか、そういうものが好きなので、それを徐々に出していくようになったら、最近では、そっちがむしろメインなんじゃないかぐらいな、人の目につきやすいような状況になっているから。僕、今回のシングルに入ってる「デストピア」はそれの表れだと思うんですよね。
──攻めた感じの曲がシングルになりやすくなったというか。
どれがメインかわからなくなってきてるみたいな。
──世の中と同じですよね、サブカルチャーとメインカルチャーの境目がなくなってきて。
そうです。音楽が買うものからシェアされるようなものになって、音楽の聴き方やリリースの仕方も変わってきて。バンドのあり方もそうですから。デビューしていなくても発表できる、表現できるところがたくさんあって。そういう混沌とした今に、こういった作品が出るっていうのは必然的なのではないかなって。
──この前、Twitterで「#時の葬列」って突然AUTO-MODネタをつぶやいてましたけど。
はははは!(笑) 「THE MUSIC DAY 夏のはじまり。」って歌番組にこの間出たんですけど、「夏の始まり」……「週末の予感」……あ、「時の葬列」だと思って(参照:HISASHI (@HISASHI_) | Twitter)。
──遠いですよ(笑)。で、今回の「デストピア」の元ネタは当然……。
まさにその通り。「デストピア」という曲名はAUTO-MODにインスパイアされてるんですけど、僕にとってAUTO-MODってモンスターバンドなんで。僕の中で「デストピア」という言葉がずっと引っかかってて。そんなにうしろ向きな言葉ではなくて、未来を達観しているような。それが今の自分に合ってるんじゃないかなって。言葉のアタックが強いけど、AUTO-MODの伝説の作品のタイトルを借りましたね。
──「クロムクロ」というロボットアニメの主題歌にもそういう要素を入れてみる、と。
そうです。でも、自分がアニメの主題歌をやるっていうのは感慨深いものがあって。ホントにサンライズに……当時は日本サンライズにどっぷり浸かってましたからね。これもTAKUROが「最近HISASHIは自由にやってるな」って感じて、ちゃんとこういう場を作ってくれたから、GLAYっていうバンドは音楽制作集団の中でもすごく自由だなって思いますね。
GLAYでどう遊ぼうかな
──ちなみにHISASHIさんの中で理想のロボットアニメの主題歌ってどんなものですか?
「これはすごいな」と思ったのは「残酷な天使のテーゼ」ですね。すごくよくできているなって。これがアニメの主題歌の完成型なんじゃないかなって。ロボット的な要素は少ないけど「新世紀エヴァンゲリオン」っていう現象を支えるきっかけがあの曲にはあったと思いますね。
──作詞の及川眠子さんの話を聞くと、「エヴァ」への思い入れがなさすぎてビックリしますけどね(笑)。
そうなんですけど(笑)。でも、すごくよくできた曲だなって思います。
──「エヴァ」には「FLY ME TO THE MOON」というジャズのスタンダードナンバーをエンディングテーマにしたことにもやられましたね。
ええ。アニメのエンディングもいいですよね、ちょっとマイナー調で。あと「銀河鉄道999」とかも好きで。GLAYの「G4・IV」に収録された「Supernova Express 2016」は完全にゴダイゴだったんですよ。
──「THE GALAXY EXPRESS 999」ですか!
はい。「G4・IV」っていうのはGLAYそれぞれの個性がすごくわかりやすい作品で、もう1曲、候補として北海道の草原を思わせる壮大な曲があったんだけど、「TAKURO、ここは『999』でいこう!」って言って。北海道新幹線のテーマ曲で、蒸気機関車のボーッていう音が鳴る。アニメを観てた当時に夢見た未来ってデストピアなんですよね。「ターミネーター」とかも未来に行ったら「こんなの?」って。そういった絶望感というか、諦め感というか、そういう昔思い描いた未来とか好きですね。
──「G4・IV」に収録されている、HISASHIさんが作った「彼女はゾンビ」も相当サブカル路線でしたよね。
「風にひとり」とかもそうなんだけど、GLAYでどう遊ぼうかなってオマージュを作ったら、意外とメンバーが気に入ってくれてシングルになったり。そういったミラクルというか、それは僕の中ではミスなんですよ。
──単なるミス(笑)。
それをみんな面白がってくれて。「『ギニーピッグ』とか連呼してるけど大丈夫かな?」って思ったら全然何もなくて(笑)。
──あの頃、ビデオ屋でバイトしてたら「ギニーピッグ」とか「デスファイル」とか直撃しちゃいますからね。
そうですね(笑)。あの歌詞は“自分外伝”みたいな。そういうことがそういえばあったなって、「デストピア」とか「彼女はゾンビ」で発している気がしますね、作品の中では。
──世の中の流れにHISASHIさんがちょうどハマってきた感じもしますね。
うーん。サブカルチャーとメインストリームが同化してきてますからね。
──で、アニメがサブカルの中心ジャンルになってきたりで。
ヨーロッパに行ったら、アニメもヴィジュアル系もゲームもなんでもひっくるめて日本の文化として評価されてますからね。僕が若い頃はゲームクリエイターになるとか、そんな夢を抱いていたらひっぱたかれましたけど(笑)。あまりブレないんですよ。最初にマイコンを買ってもらって初めてプログラムを打って……兄の影響もすごく大きいんだけど、そのとき遊んでたゲームにBGMを付けようってなったときからブレてないですね。コンピューターミュージックも好きだし、のちのち出会うロックも自分の中では大きかったですけど、パンクあり、アニメあり、ゲームあり……。ゲームは1回、「マグナカルタ」っていうゲームの音楽をやったこともあるし、いまだにあの頃から何1つブレてないなっていうのがあります。
──自分が好きなものが全部、世界で通用するものだったわけですよね。
そうですね。それを出しづらかった90年代があって、今2016年になっている。吉田さんも同世代で同じような文化が好きで、わかってくれると思うんですけど。
次のページ » GLAYのつながりだけが救いだった
- GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」 / 2016年8月3日発売 / LSG
- [CD+DVD] 2052円 / PCCN-00023
- [CD] 1512円 / PCCN-00024
CD収録曲
- デストピア
- 超音速デスティニー
- JUSTICE [from] GUILTY(GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1)
- 微熱Ⓐgirlサマー(GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2)
- 黒く塗れ!(GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt)
- everKrack(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- coyote,colored darkness(ROCK'N'ROLL SWINDLE at NIPPONBUDOKAN)
- WORLD'S END(GLAY ARENA TOUR 2007 "LOVE IS BEAUTIFUL")
DVD収録内容
- RX-72 -54th SINGLE EDITION- HISASHI×茂木淳一の対談や解説を元に本作を徹底解剖!
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEO
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEOメイキング
- 彼女はゾンビ(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- デストピア(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
- 2016年9月9日発売 [CD2枚組+Blu-ray] / 8943円 / LSG / PCCN-90003
DISC 1
「BEAT out!」Remix & Remastering 2016
- More than Love
- Yes,Summerdays
- 原色の空 <Cloudy Sky>
- Trouble On Monday
- Together
- 月に祈る
- 生きてく強さ
- 週末のBaby talk
- グロリアス
- 軌跡の果て
- Miki Piano
- Cynical
- Believe in fate
DISC 2
「BEAT out! Anthology」Demo & Live in 1996
- More than Love Live ver. from 東京厚生年金会館
- More than Love AG Demo
- Yes,Summerdays AG Demo
- Yes,Summerdays Demo
- 原色の空 <Cloudy Sky> Demo
- Trouble on Monday Demo
- Together AG Demo
- Together Demo
- 月に祈る Live ver. from 東京厚生年金会館
- 生きてく強さ Demo
- 週末のBaby talk Demo
- グロリアス Demo
- 軌跡の果て AG Demo
- 軌跡の果て Demo
- Miki Piano Demo
- Cynical Demo
- Believe in fate Demo
DISC 3(Blu-ray Disc)
Live of BEAT out! Days
- 「BEAT out! '96 TOUR」より1996年3月5日 渋谷公会堂公演(全曲収録)
- 「BEAT out! reprise TOUR」より1996年9月9日 日本武道館公演(全曲収録)
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。8月に54枚目のシングル「[DEATHTOPIA]」をリリース。