音楽ナタリー Power Push - HISASHI(GLAY)×吉田豪

AUTO-MODからエヴァまで 同世代2人のサブカル大放談

GLAYのつながりだけが救いだった

──20歳ぐらいまでは同じような道を歩んでいたはずの人が、スタジアム級のバンドの一員になり、そして現在こうなっている感じが面白いですよね。

HISASHI(GLAY)

そうですね。でもそこで文化人を気取るのも変だと思うから、あくまでもGLAYの枠の中で、ここで踏み外したらだめだっていうのがあって。

──ただのサブカルの人じゃなくて、GLAYの人がこういうことをやっていることに意味がある。

そう。GLAYのメンバーがすごく音楽好きで、1人のリスナーで、俯瞰でGLAYを見てるから。この4人の運営力はすごいなと思いますね。前、レコード会社がなくなって、もうできないってなったとき、4人になってGLAYのつながりだけが救いだったんですよ。

──逆境でより団結することになって。

ええ。いろんなところで言ってるんですけど、1999年の年末にレコード大賞を獲ったんですよ。誰がどう見ても宇多田ヒカルだろうっていうときに。でも、メンバー全員納得いってなくて、当時の映像を振り返ると仏頂面をしながら出てるんですよね。今だったら自分をぶん殴ってやりたいですけど(笑)。その年末にGLAYを解散させようと思って、「レコード大賞」と「紅白」に出たんですけど、そのあとでメンバーの家で「解散するんだったらまた一緒にバンドやろうよ」「だったらGLAYでいいんじゃないか?」って話になって。GLAYっていうバンドを続けるために、ここまできたら怖いものは何1つないと。レコード会社にしても、インディーズに戻ろうって話も出ましたからね。

──そこで腹をくくったのは大きいでしょうね。

でも、時代がそういう流れになってきましたからね。音楽活動をやっていく上でメジャーデビューしなくてもいいし、東京にいなくてもいいみたいな環境になって。GLAYも個人でやって、流通もしっかり協力していただき、なんか面白いことになって。音楽もアナログからデジタルになって、わりと音楽がタダになっていく中で、「CD買えよ!」って言ってる人もいますけど、僕は無料の環境を楽しんでいて。音楽業界としては痛手かもしれないけど、僕はそこに何かチャンスがあるんじゃないかと思ってるんです。

──死ぬほどCDが売れていた時代よりは肩の力が抜けたんですか?

僕らの会社が独特なんでしょうけど、今のほうが儲かってますから(笑)。

──ダハハハ!(笑) 正直な発言だ。

なんだったんだろう? 僕らのお金どこいってたんだろう? これ以上怖いこと考えるのやめよう!と。結果オーライですけどね、今好きなことできてるし。

──死ぬほど売れたことで歴史に名前も残せて。

そうですね。90年代はテレビとか雑誌とかラジオとか露出が多かった分、バンド活動ができなかったから。事務所に「頼むからバンド活動をさせてくれ」ってお願いをしたのは、今では笑えるエピソードですけどね。TERUなんて昔のテレ朝のトイレで泣いてましたからね。「もう声が出ないよ!」って。

──それぐらいの状況!

だって前の日に名古屋から帰ってきて、次の日「Mステ」(ミュージックステーション)ですよみたいな感じで。GLAYの曲もキーが高かったですから、そりゃあ「HOWEVER」の最後は出ないですよ。TAKUROもヤバイと思ったんでしょうね、この状況が。バンドが健康体ではない。だから2000年以降、音楽を作る上で時間を作るようになりましたね。当たり前の話なんですけどね。で、JIROも訴えていたプリプロもちゃんとやるようになって。だって「HOWEVER」とか半日で作ったんですよ(笑)。そういう瞬発力を信じていたのはあるんですけど、音楽をちゃんと作りたいっていう願いがありましたね。

もっともっと自由に柔軟にやっていきたい

──GLAYがそうなるまでの過程で力になったのがEXILEだったと思うんですけど、どサブカルの人から見たEXILEがどんなものなのか個人的に知りたいです。

なるほど。とにかく気持ちいいやつらだなってことですよね。

──接点がある人に聞いてみると、みんなそう言うんですよね。

最初一緒にやったのが「SCREAM」っていう曲で、HIROさんとTAKUROの仲で、ビジネス的な目的があったんだろうなって。話をきれいにするとAerosmithの「Walk This Way」なんですよ。

──ああ、Run-D.M.C.とのコラボ感覚で。

そういった音楽が国境を越えるみたいな。いろいろ新しいことをやっていこうっていう柔軟な姿勢だったんだけど、EXILEのメンバーに会ってみたらすごく気持ちのいい人たちで。それからの付き合いですね。三代目 J Soul Brothersのみんなと会っても面白いし。

──同じクラスにいても絶対に仲よくならないタイプだと思うんですけど(笑)。

わははは!(笑) 僕らの場合、同じクラスにヤンキーもラグビー部もメタルもパンクもいたけど、わけわかんないけどとりあえず仲よくなっちゃえみたいのはありましたからね。共通点が「とんがってる」ってだけでつながるみたいな。そういうのもありなのかなって思って。

──わかります。ボクも高校時代はパンクスがいなかったから、友達はみんなメタルでした。今「HiGH&LOW」でのEXILEのアクションが異常に評判がいいんですよね。ダンスがうまい人たちがアクションやったらここまでのレベルになるんだってことで。

へえー! 彼らはすごく屈託がないというか、音楽にもすごく貪欲だし、とにかく気持ちいいですよね。

──話が変わりますが昔、GLAYでHanoi Rocksのカバーとかしてたそうですね。

シングルのカップリングとはなんぞやと考えた時期がありまして。自分たちで遊びながらスキルアップできることをやろうってことでカップリングが洋楽カバーという時期がありまして。U2とかThe Beatlesとか……洋楽カバー集を出そうという話もあったんですが、流行の流れでなくなり。プライマル(Primal Scream)とかやりたいなって思ってたんですけどね。

──今からでもGLAYのプライマルカバーに期待したいですよ!

そうですか(笑)。とにかくこれからも、もっともっと自由に柔軟にやっていきたいですね。

左からHISASHI(GLAY)、吉田豪。
GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」 / 2016年8月3日発売 / LSG
GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」
[CD+DVD] 2052円 / PCCN-00023
[CD] 1512円 / PCCN-00024
CD収録曲
  1. デストピア
  2. 超音速デスティニー
  3. JUSTICE [from] GUILTY(GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1)
  4. 微熱Ⓐgirlサマー(GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2)
  5. 黒く塗れ!(GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt)
  6. everKrack(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
  7. coyote,colored darkness(ROCK'N'ROLL SWINDLE at NIPPONBUDOKAN)
  8. WORLD'S END(GLAY ARENA TOUR 2007 "LOVE IS BEAUTIFUL")
DVD収録内容
  • RX-72 -54th SINGLE EDITION- HISASHI×茂木淳一の対談や解説を元に本作を徹底解剖!
  • デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEO
  • デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEOメイキング
  • 彼女はゾンビ(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
  • デストピア(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
2016年9月9日発売 [CD2枚組+Blu-ray] / 8943円 / LSG / PCCN-90003
DISC 1

「BEAT out!」Remix & Remastering 2016

  1. More than Love
  2. Yes,Summerdays
  3. 原色の空 <Cloudy Sky>
  4. Trouble On Monday
  5. Together
  6. 月に祈る
  7. 生きてく強さ
  8. 週末のBaby talk
  9. グロリアス
  10. 軌跡の果て
  11. Miki Piano
  12. Cynical
  13. Believe in fate
DISC 2

「BEAT out! Anthology」Demo & Live in 1996

  1. More than Love Live ver. from 東京厚生年金会館
  2. More than Love AG Demo
  3. Yes,Summerdays AG Demo
  4. Yes,Summerdays Demo
  5. 原色の空 <Cloudy Sky> Demo
  6. Trouble on Monday Demo
  7. Together AG Demo
  8. Together Demo
  9. 月に祈る Live ver. from 東京厚生年金会館
  10. 生きてく強さ Demo
  11. 週末のBaby talk Demo
  12. グロリアス Demo
  13. 軌跡の果て AG Demo
  14. 軌跡の果て Demo
  15. Miki Piano Demo
  16. Cynical Demo
  17. Believe in fate Demo
DISC 3(Blu-ray Disc)

Live of BEAT out! Days

  1. 「BEAT out! '96 TOUR」より1996年3月5日 渋谷公会堂公演(全曲収録)
  2. 「BEAT out! reprise TOUR」より1996年9月9日 日本武道館公演(全曲収録)
GLAY(グレイ)
GLAY

北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。8月に54枚目のシングル「[DEATHTOPIA]」をリリース。