音楽ナタリー Power Push - HISASHI(GLAY)×吉田豪
AUTO-MODからエヴァまで 同世代2人のサブカル大放談
「GLAY EXPO」は文化祭
──貧乏だった頃、あんまり趣味を追えなかったみたいですね。
まさにその通りです。だから、小金が入ってから爆発するわけですよ。
──溜めに溜めていたものが。
そうです。だって昔は、今みたいにインターネットというインフラがなかったから、ライブに来てもらうためにダイレクトメールを出すんです。プリントゴッコを使って家で作るんですよ。TAKUROとかも手伝いに来てくれて。ハガキ代から何から、まあバカにならないんですけど来ないんです、ヤツら(笑)。
──わざわざ手作りのハガキを出したのに!
今だったらもうTwitterのDMでぱーっと出せる。でも、当時は当時であったかみはありましたけどね。毎回、文化祭の前の日みたいな感じだったんですよ。それこそ「GLAY EXPO」なんて、文化祭が大きくなったようなもので。文化祭の前ってなんか楽しいですよね。夜遅くまで、みんなで学校に残って。
──「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」みたいな感覚ですよね。
そうそう(笑)。文化祭の準備が終わらなければいいのにって。好きな女の子なんかもいて、そういった淡い気持ちが、ずっとやめられない世代っていうか。そういう楽しさを伝えたくて、ライブの前の日にうちわを作ったり、それをプレゼントしてたりした自主企画があったんですけど、そういうのが「GLAY EXPO」の起源でもあって。
続けていくことによって見えてくる景色
──HISASHIさんらしいと思ったのは、「GLAYをやっていて一番幸せだったのが『Je t'aime』で押井守さんとコラボできたこと」という発言で。
やっぱりロックと出会う前に、ものすごい衝撃を味わいましたから。押井守監督が担当した「パトレイバー」のOVAはおじさんしか出ないですからね。ぼそぼそとしゃべる、立ち食いそばを食べてるみたいな。そういう秘められた魅力みたいなものが、すごく好きでしたね、もちろん最初は「ビューティフル・ドリーマー」だったんですけど。
──ボクもリアルタイムで劇場に行きましたよ。
僕らのとき、吉川晃司主演の「すかんぴんウォーク」と同時上映で。
──同じでした。だからボクが吉川さんを取材したときにも、「デビュー作『すかんぴんウォーク』は劇場で観てますよ!」って伝えて。もちろん吉川さん目当てじゃなくて、「ビューティフル・ドリーマー」を観に行ったらやってただけなんですけど(笑)。
広島から泳いで上京してくるみたいな(笑)。
──あれはゴジラのオマージュだったっていう。
あ、そうなんですね(笑)。
──そうなんですよ。広島という原爆の街から東京湾に上陸するっていう。
なるほど。
──ボク、押井守作品で一番好きなのは「天使のたまご」なんですよ。
あれは危険ですね。深いですよ。根津甚八さんが声優で出演していて、VHSで持ってました。僕はやっぱり「機動警察パトレイバー the Movie」を観たときは、「監督は何考えてるんだろうな」って思いましたね。コンピューターウイルスとかについての認識がまだあまりなかった頃に、ロボットアニメ好きの子供たちを置いてきぼりにした作品でもあるし。押井監督、何度かお食事に行ったんですが面白い方ですよね。
──口は悪いですよね(笑)。
ははははは(笑)。「Je t'aime」のときも隣でぼそぼそ聞こえない悪口を言ってて(笑)。その悪口が的を射ているんですよね。そんな押井守監督とのコラボという、ありがたい話もあり。長く続けるってそういうことなのかなと思い出したのが、氷室京介さんと共作が作れたりとかっていうことで、やっぱり10年過ぎてみないと、これは見えなかった光景であるし。90年代のバンドって、一番カッコいい時期に解散したりするじゃないですか。そういったマニュアルしかなかったから40歳の頃にやってるバンドって想像もつかなかったけど、続けていくことによって見えてくる景色っていうのも、自分たちで作りたいな、伝えたいなって思いますね。
──これだけ成功したからこそ、自分たちのアルバムに押井守の新作アニメを付けられるわけじゃないですか。そんなこと普通できないですからね。
まあ、僕らは自分たちで会社を設立してからは、そんなに大きなことというか何かを目指すとかではなくて、わりと自分たちの好きなことをやっていってる感じで。それでけっこう賛同してくれる人が多かったりするんですよね。それまでの経験もあってすごく自由にやれていますね、今。「RX-72」っていう番組(MUSIC ON! TVのレギュラー番組)を観ていただければわかる通り、もう、会いたい人に全員会おうとか、やりたいことをとにかくやろうみたいな。ツアー中とかは、友達、スタッフと一緒にラジコンを買って各地のコースを回ったり、いろいろやりましたね。
──声優の杉田智和さんだったり、すーぱーそに子だったりで、対談したい相手の方向性が明らかにGLAYで1人だけズレてますからね(笑)。
ははは(笑)。僕、ファンクラブで「社長に聞け」っていう、いろんな社長と対談するっていう無謀な企画をやってたんですけど、当時アップルコンピュータの原田泳幸社長だったりとか、タミヤの田宮俊作会長に会いに行ったりとか。いろいろやったんですよ。
──けっこうちゃんとした社長を取材して。
そしたら、みんなバカみたいに子供なんですよね。「ああ、なんか社長って楽しそうだな」みたいな。まったく同じ目線で話せるといったら失礼なんですけど、そういう人ばっかりで。日本は素晴らしい国だなって。と、同時にすごく楽しかったです。
──僕は間違ってない、みたいな。
そう! そうです。これでいいんだ、みたいな。
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- GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」 / 2016年8月3日発売 / LSG
- [CD+DVD] 2052円 / PCCN-00023
- [CD] 1512円 / PCCN-00024
CD収録曲
- デストピア
- 超音速デスティニー
- JUSTICE [from] GUILTY(GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1)
- 微熱Ⓐgirlサマー(GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2)
- 黒く塗れ!(GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt)
- everKrack(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- coyote,colored darkness(ROCK'N'ROLL SWINDLE at NIPPONBUDOKAN)
- WORLD'S END(GLAY ARENA TOUR 2007 "LOVE IS BEAUTIFUL")
DVD収録内容
- RX-72 -54th SINGLE EDITION- HISASHI×茂木淳一の対談や解説を元に本作を徹底解剖!
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEO
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEOメイキング
- 彼女はゾンビ(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- デストピア(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
- 2016年9月9日発売 [CD2枚組+Blu-ray] / 8943円 / LSG / PCCN-90003
DISC 1
「BEAT out!」Remix & Remastering 2016
- More than Love
- Yes,Summerdays
- 原色の空 <Cloudy Sky>
- Trouble On Monday
- Together
- 月に祈る
- 生きてく強さ
- 週末のBaby talk
- グロリアス
- 軌跡の果て
- Miki Piano
- Cynical
- Believe in fate
DISC 2
「BEAT out! Anthology」Demo & Live in 1996
- More than Love Live ver. from 東京厚生年金会館
- More than Love AG Demo
- Yes,Summerdays AG Demo
- Yes,Summerdays Demo
- 原色の空 <Cloudy Sky> Demo
- Trouble on Monday Demo
- Together AG Demo
- Together Demo
- 月に祈る Live ver. from 東京厚生年金会館
- 生きてく強さ Demo
- 週末のBaby talk Demo
- グロリアス Demo
- 軌跡の果て AG Demo
- 軌跡の果て Demo
- Miki Piano Demo
- Cynical Demo
- Believe in fate Demo
DISC 3(Blu-ray Disc)
Live of BEAT out! Days
- 「BEAT out! '96 TOUR」より1996年3月5日 渋谷公会堂公演(全曲収録)
- 「BEAT out! reprise TOUR」より1996年9月9日 日本武道館公演(全曲収録)
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。8月に54枚目のシングル「[DEATHTOPIA]」をリリース。