音楽ナタリー PowerPush - GLAY
「MUSIC LIFE」特集
HISASHI×の子(神聖かまってちゃん)対談
今回の特集にあたってナタリー編集部がHISASHI(G)の企画内容を検討していたところ、HISASHI自身が神聖かまってちゃん・の子(Vo, G)との対談を熱望。これを受けて2人の初対面が実現した。
最近はニコ生の配信も精力的に行っているHISASHIにとって、の子はミュージシャンとしては後輩だが配信者としては先輩という存在。今回の対談では互いのバンドに関する話のみならず、インターネットや生配信に対する2人の考えなどもたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 上山陽介
エレキギターも最初は異端児扱いされてた
──この対談は、きっと読者の皆さんも異色の組み合わせだと感じてるんじゃないかと思います。
の子 異色と言えば異色かもしれませんけれども。2年くらい前にTwitterでお話したことはあるんですよね。
HISASHI そんな前だっけ。もうね、すごく会いたかったんですよ。
の子 マジっすか! いや僕も、このお話をいただいたときに、本当にうれしくて! だって小学生の頃から聴いてるんだよ! 「誘惑」のイントロ!
HISASHI (笑)。俺は“素のの子くん”に興味があったんですよ。普段はどんなキャラクターで、どういうモチベーションで音楽をやってるのかって。初めて「夕方のピアノ」を聴いたときに、ビックリして聴き返しちゃったんだよね。「これはなんなんだ!?」って。でも歌詞の強いメッセージに反して、哀愁のあるピアノのメロディもすごく印象的で。ひさびさにこういうバンドを見たなと。
の子 ありがとうございます(笑)。
HISASHI 俺、音楽やって20年以上になるんだけど、最初レコードだったものがCDになって、配信になって、レコーディングも小さいスタジオでできるようになって、音楽の作り方の移り変わりを見てきたんだよね。でも君たちは……。
の子 あ、「お前ら」で全然いいですマジで。
HISASHI ははは(笑)。かまってちゃんのみんなは、その流れをまったく無視して自分のやりたいようにやってるように見えた。それがすごく面白くて、魅力的だったんだよね。新しいメディアを使って、自宅の部屋からでも楽屋からでも場所に関係なくリスナーに音楽を届けるって、業界の常識を覆してると思ったし。
の子 いやでも、僕にとってはGLAYさんこそ、そういうのをぶち壊していろいろやってきたバンドってイメージありますよ。マジで。
HISASHI まあ確かに、それまでほかの人があんまりやったことがないことをいろいろやってきたと思う。シングル2枚同時発売とか、ビデオシングル、ベストアルバム、大規模なコンサートも。でもそういうのもさ、時間が経つとスタンダードになっていくわけなんだよね。エレキギターとかも最初はそうだったわけじゃん? 歪ませたギターってもともと不良っぽいイメージがあって異端児的な扱いをされてたのに、それがどんどんスタンダードになっていって。GLAYがやってきたことも、今それに当てはまるかもしれない。
アルバムを500万枚売るのと、配信を500万人に観てもらうのは同じ
HISASHI 新しいことを始めるときって、そこには必ずリスクが伴ってくるよね。誰もやったことがないコンサートにはフォーマットがないわけだから、自分たちがそれをやることで初めて次の人に渡せるフォーマットができあがる。
の子 そういう意味では僕は音楽をやることにリスクはなかったんですよ。ステージ上でいくら「ウワー!」って暴れても、そういうことは全部すでに誰かがやってることだから。
HISASHI でもネットメディアを使ったっていうところはすごく新しいですよ。
の子 というか、新しいことをしようと思ったらそれしかなかったんです。もう音楽は新しいことじゃなかった。俺が思うに、昔バンドマンを目指してたようなタイプの人は、今だったら例えばYouTuberとしてネットで有名になるとか、別の憧れの対象があると思うんですよ。
HISASHI そうだよね。500万枚売れたベストアルバムもあれは“音楽”じゃなかったんだよ。あくまで当時の流行アイテムだった。じゃないとあんなに売れなかったと思います。俺らもその時々でメディアをうまく使って“音楽じゃないもの”を作ってきたけど、それがきっかけになって聴いてくれる人が増えて、結果的に音楽に結びつけばそれでいいんだよね。
の子 まったくですね。でもやっぱすごいっすよ! 今の僕らはどんだけリスクを冒しても絶対500万枚も売れないですもん(笑)。
HISASHI 配信だって500万人が観る可能性があるよ? それって同じことだと思うんだ。
の子 ああ、まあそうかもしれませんね。確かにそうか。
HISASHI 大物アーティストの巨大なコンサートを観ると「あれと同じことをやるにはお金が足りないな」とか思うんだけど、発想変えたらさ、今は違った表現がもっとできるわけじゃん? そういうやりかたのほうが面白いと思う。
の子 ネットもあるし、手軽にいろんなことができるようになりましたからね。
HISASHI そう。昔と比べて可能性も増えたわけだから。
の子 せっかく自分を発信しやすくなったんだから、そこ生かしてもらいたいですよね。おい、このインタビュー読んでる君っ! 君に言ってるんだっ!(レコーダーを睨みながら)
HISASHI ははは(笑)。
──ただ、先ほどのスタンダード化の話でいうと、生配信もこれから急速にスタンダードなものになっていきそうですね。
HISASHI やっぱり配信も音楽と一緒で、長く続けるとテクニックが付いて上手になっちゃうんだよね。それってもちろんいいことでもあるんだけど、悪いことでもあるかもしれない。
の子 そう、そこらへんのバランス難しいんですよね。僕、2ちゃんとかで「昔のほうがよかった」ってメッチャ言われるんです。「お前らメチャクチャ言うなよマジで難しいんだよ!」ってなる。慣れちゃった人にはそれ以上の衝撃を与えないと、つまんないって言われちゃう。
HISASHI そりゃ誰だって、初めて観たときのほうが衝撃強いのは当たり前だよ(笑)。そこが、僕らみたいに新しいメディアを使っていくことの難しさでもあるんだよね。
の子 そうですね。でも結局自分も、やっぱ相手をビックリさせるような新しいことが好きだから。そのために自分でアンテナを張って、これからもそういう場を発見していきたいですよね。
次のページ » 言いたいことが言えない代わりにギターを弾いた
- ニューアルバム「MUSIC LIFE」 / 2014年11月5日発売
- 「MUSIC LIFE」
- 2CD豪華盤 BALLADE BEST☆MELODIES / 3996円 / ポニーキャニオン / PCCN-00017
- 2CD豪華盤(G-DIRECT限定)BALLADE BEST☆MEMORIES / 3996円 / loversoul music & associates / LSCD-0018
- 1CD盤 / 2700円 / ポニーキャニオン / PCCN-00018
CD収録曲
- BLEEZE(Album Ver.)
[作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光] - 百花繚乱
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:松下敦] - Only Yesterday
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行] - 疾走れ!ミライ
[作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光] - 祭りのあと
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:永井利光] - 浮気なKISS ME GIRL
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:高橋まこと] - 妄想コレクター
[作詞・作曲:HISASHI / ドラム:永井利光] - Hospital pm9
[作詞・作曲:TAKURO] - DARK RIVER
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行] - TILL KINGDOM COME
[作詞・作曲:TAKURO / ドラム:中村達也] - MUSIC LIFE
[作詞:TAKURO / 作曲:JIRO / ドラム:永井利光]
GLAY(グレイ)
函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録となっている。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立。メジャーデビュー20周年を迎えた2014年9月20日には、宮城で大型ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」を敢行した。同年11月5日、1年10カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリース。
神聖かまってちゃん(シンセイカマッテチャン)
の子(Vo, G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表したのち、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月に「つまんね」「みんな死ね」という2枚のアルバムをリリースした。2014年には3カ月連続シングルリリースとして 4月に「フロントメモリーfeat.川本真琴」、5月に配信限定シングル「ロボットノ夜」、6月にシングル「ズッ友」を発表。また6月にDVD「ライブヒストリー 2009-2013」、9月に約2年ぶりとなるフルアルバム「英雄syndrome」をリリースした。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。
2014年11月26日更新