Netflix「ゲットダウン」特集 KEN THE 390インタビュー|これさえ観てればヒップホップ黎明期は完璧

「ダサい歌が始まっちまう」

──あとヒップホップの人たちは、「ディスコはマジでクソダセえ」みたいなスタンスでした。

そう。みんなヒップホップはディスコと地続きだと思ってる人が多いけど、本当はアンチディスコ的な側面が強いんですよ。僕も知ってはいたんですが、いまいち感覚が理解できなかった。けどドラマではその辺がすごくわかりやすく描かれてましたね。DJが「普通にレコードをかけてるとダサい歌が始まっちまう」って言いますよね。「えっ、何言ってんの?」みたいな(笑)。彼らは歌じゃなくて、カッコいいイントロや間奏だけを延々と聴きたかった。そういうやり方は今でこそブレイクビーツとして当たり前だけど、あえて「ダサい歌が始まっちまう前にカッコいい部分につなぐんだ」と言い切ったところがすごいと思いました。

──「それ言っていいんだ!?」みたいな。

「ゲットダウン」より。

それこそが発明なんですよ。自分らの美学でカッコいいところだけをずっと使いたいっていう。そのカッコいいと思うことだけをやるのがヒップホップのイズムとして現在にまで受け継がれているんです。このドラマはその部分が描かれているのが素晴らしい。実際「ゲットダウン」さえ観ていれば、ヒップホップ黎明期に関しては相当詳しくなれると思いますよ。それくらいよくできてる。

同性愛からゴーストライターまで描いた、現代のヒップホップドラマ

KEN THE 390

──気になった登場人物を教えてください。

ジェイデン・スミスが演じてたディジーですね。彼はガチのラッパーなのに、役では同性愛という部分に触れていく。もちろんシーンには当時だって同性愛者はいたと思うけど、これまでのヒップホップカルチャーからするとNG、と言うかタブーだった。でも今のアメリカのヒップホップでは、フランク・オーシャンを筆頭に同性愛がオープンになっていて。そういう世の中の流れと連動して、ディジーのようなキャラクターがセンシティブに描かれたのは素晴らしいと思いましたね。現代のヒップホップドラマだなって。

──主人公のブックスことエゼキエル・“ジーク”・フィゲロのストーリーはちょっとケンドリック・ラマーを思い起こさせました。

あとアイス・キューブも! つまり初期のラッパーって頭がいいんですよ。N.W.A.とかも歌詞を書いてたのはアイス・キューブで、彼は大学に行ってて勉強もできるんですよ。すごい不良に見えるんですけど(笑)。実は不良の世界の話を賢いヤツが歌詞に起こして、それをガチの不良が歌うというスタイルが昔のヒップホップにはあったんです。だから「ゲットダウン」で歌詞を書くブックスが頭がいいという設定なのも実はすごくリアルなんです。

──映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」などの流れがあっての「ゲットダウン」なんですね。

「ゲットダウン」より。

設定とかを見てても、本当にいちいち気が利いてると思います。そもそもちょっと前まではラップって本人が書かなきゃいけないとされていたんですよ。でももともとはこういうふうに始まってるし、今だと「実はライターがいた」と公表してる人もいる。もう1回アリになり始めてるのかもしれませんね。最近アメリカのシーンが何周もしてヒップホップの風通しがよくなりまくってる(笑)。今までもなんでもありだったけど、それがさらに進化してる感じがするな。

映画ナタリー Netflixオリジナルドラマ「ゲットダウン」特集
Netflixオリジナルドラマ「ゲットダウン」
全11話独占配信中
Netflixオリジナルドラマ「ゲットダウン」
ストーリー

犯罪と貧困がはびこる1977年のニューヨーク。詩の才能を持つ少年ジークは、自身の可能性を信じることができず日々を無為に過ごしていた。ある日彼は、幼なじみのマイリーンの気を引くためにレアなレコードを探しに行った先で、“シャオリン・ファンタスティック”と名乗るエキセントリックな男と遭遇。当初は対立する2人だったが、ジークの友人であるキプリング3兄弟とともにヒップホップグループ“ゲットダウンブラザーズ”を結成し、アンダーグラウンドシーンで頭角を現していく。

スタッフ
  • 監督:バズ・ラーマン、エド・ビアンキ、アンドリュー・バーンスタイン、マイケル・ディナー
  • 製作総指揮:バズ・ラーマン、キャサリン・マーティン、ナズ
キャスト
  • エゼキエル・“ジーク”・フィゲロ:ジャスティス・スミス
  • シャオリン・ファンタスティック:シャメイク・ムーア
  • マイリーン・クルス:ヘライゼン・グアルディオラ
  • マーカス・“ディジー”・キプリング:ジェイデン・スミス
  • ロナウド・“ララ”・キプリング:スカイラン・ブルックス
  • マイルス・“ブーブー”・キプリング:トレメイン・ブラウン・Jr.
KEN THE 390(ケンザサンキュウマル)
東京・町田出身のラッパー。2006年にDa.Me.Recordsから発売された1stアルバム「プロローグ」が話題を呼び、2008年にエイベックスからメジャーデビューした。2009年に主催ライブイベント「超・ライブへの道」を開始。2011年に主宰レーベル・DREAM BOYを設立し、運営に携わっている。2015年9月にスタートしたテレビ朝日系「フリースタイルダンジョン」に審査員としてレギュラー出演している。