「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」発 ME:I結成記念|11人の活躍を振り返る

サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」から、グローバルガールズグループ・ME:Iが誕生した。

「PRODUCE 101」は101名の練習生の中から“国民プロデューサー”による視聴者投票を通じて新グループのデビューメンバーを決定する韓国発のオーディション番組。2019年に日本に上陸し、同年放送のシーズン1からはJO1、2021年放送のシーズン2からはINIが誕生した。シーズン3にあたる「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」は、日本上陸後初となるガールズグループのオーディション。グループ評価、ポジション評価、コンセプト評価といった課題を経て、12月16日にデビュー評価が行われ、11人のメンバーが決定した。

音楽ナタリーでは番組の中でも印象的だった場面を交えて、デビューメンバーを紹介する。SNSでの盛り上がりを見てME:Iが気になっている人も、まだオーディションの余韻が抜けない国民プロデューサーも、本稿とともにLeminoのアーカイブをチェックしてみよう。

取材・文 / 中川麻梨花

ME:I メンバー紹介
笠原桃奈

笠原桃奈(かさはらももな)

生年月日:2003年10月22日
出身地:神奈川県

飽くなき挑戦心を携え、世界のてっぺんへ

最終投票の獲得票数は、ダブルスコアをつけての111万6716票。「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」の“表の主人公”を1人挙げるなら、笠原桃奈だと言えるだろう。「海外で歌とダンスを勉強したい」という思いを胸に、笠原は韓国のダンススクールに留学し、黙々と自身のスキルを磨き上げてきた。番組序盤のクラス分けテストのパフォーマンス後、笠原から出てきたのは「私は音楽が、アイドルというお仕事が大好きで、もっとグローバルに活動できるような、そんなアイドルになりたいという気持ちが芽生えて、1年半ぐらい個人で練習をしていました」という言葉。笠原の瞳にはずっと、オーディションのその先にある、日本を越えた世界の景色が見えていたのだろう。

番組配信前にオーディションのテーマソング「LEAP HIGH! ~明日へ、めいっぱい~」の映像が公開された瞬間から、笠原は一身に注目を浴び、デビュー圏内の高い順位をキープし続けた。しかし、彼女は挑戦することをやめなかった。言い換えれば、“安牌”に走ることがなかった。印象的だったのはボーカル、ダンス、ラップ&ボーカルの3ジャンルから選択してパフォーマンスを行うポジション評価のステージだ。ボーカル、ダンスを選べば、経験者の彼女なら大きなリスクを冒さずに一定の評価を得られただろう。そんな中で笠原があえて選択したのは、経験の浅いラップ&ボーカルポジション。第1回順位発表式で1位に輝いた笠原は「どんどんみんなの成長を感じていたので、1位の座に甘えて、ただ座っているだけじゃ、自分も埋もれていっちゃうと思った」と、新しい自分の姿を国民プロデューサーに見せようとした。また、デビュー評価で披露する楽曲のパート決めで「最初から一択で決めていました」と迷うことなくメインボーカルを選び取った場面からも、決して順位に甘んじることなく常に上を目指し続ける、彼女の挑戦心と勇気がうかがえる。

これから笠原は10人の仲間たちとともに、グローバルガールズグループとして世界に向かって羽ばたいていく。9月に公開された1分PR動画で、笠原は「世界のてっぺんを取るつもりです!」と宣言した。彼女の飽くなき挑戦心は、きっとME:Iをその場所へと導いてくれるだろう。


村上璃杏

村上璃杏(むらかみりのん)

生年月日:2006年9月30日
出身地:岡山県

自分を貫き通す、強い芯を胸に

獲得票数70万305票、最終順位2位でデビューが決まった村上璃杏。彼女の順位は初回23位から始まり、オーディション終盤までデビュー圏外だった。村上の運命を変えたのは、3人組グループでちゃんみな「美人」を披露してラップに挑戦したポジション評価。ラップ未経験者の村上は、スペシャルトレーナーとして番組にゲスト出演したちゃんみなから「ラップは正直、ここ1週間やそこらでうまくなったりはしないと思うの。だったら自分のキャラクターを立てたほうがいい」とアドバイスを受け、自身のキャラクターに合った表現にたどり着いた。歌詞を書き直していく中で生み出されたのが、「一目置かれる存在 困った りんりん『姫だし』」というキラーフレーズ。自身のキャラクターを前面に打ち出した村上の個性的なパフォーマンスとリリックは、国民プロデューサーのみならず、TikTokなどSNSを通してオーディションを観ていない人々の間にもあっという間に広がり、彼女は“りんりん姫”と呼ばれて一躍人気を集めた。

オリジナル曲を通してそのコンセプトを最大限に表現するコンセプト評価では、グループ再編成ルールに従って村上がチーム移動を強いられる場面があった。ステージ本番が間近に迫り、たった数日で移動後のチームの課題曲に対応しなければいけない状況下で、村上は「別のチームに行っても全然がんばれるので大丈夫」と前を向く。実際に彼女は移動後のチームでラップトレーナー・KEN THE 390をうならせるほどの高いラップスキルを発揮し、ラップポジションの地位を確固たるものにした。オーディション終盤の第3回順位発表式では村上の順位が17位から3位へ一気にジャンプアップ。順位発表式で「今の自分を本当に誇りに思っています」と彼女がまっすぐに語ると、努力する自分自身を認めることができる、そのマインドにも多くの人々が魅了された。

デビュー決定から数日後、ME:Iメンバー直筆の手紙がSNS上で公開された。村上の手紙には「いつでも自分らしく『りんりんmind』で突き進んでいきたいと思っています」「私を見つけたこと絶対に後悔させません。姫なので」という彼女らしい言葉があった。強い芯を持って自分を貫き通していく村上の姿は、きっとこれからも多くの人の心を惹き付けていくに違いない。


高見文寧

高見文寧(たかみあやね)

生年月日:2005年5月15日
出身地:岩手県

ME:Iの色の濃度を深める、中毒的な歌声

岩手県出身の18歳、高見文寧は番組初回で国民プロデューサーに“見つかった”練習生だ。初回のレベル分けテストで、高見は東北出身の6人組チーム「Cool Girls」として、IZ*ONEの「好きと言わせたい」をパフォーマンス。歌唱パートは決して多くなかったが、Aメロの「昔のようにときめきましょう」というワンフレーズで魅惑的な歌声を披露し、多くの国民プロデューサーの心をつかんだ。ビハインド映像で普段の高見の姿を見ると、控えめで小さな声と、丁寧な口調が印象的。その姿からは想像できないステージでの豹変っぷりに魅了された国民プロデューサーも多いだろう。高見のパフォーマンスにフィーチャーした“推しカメラ”の再生回数は留まることなく伸びていき、ポジション評価の「First Love」、コンセプト評価の「TOXIC」はともに150万回再生を超えている。初回配信から「BLACKPINK・ロゼのよう」と国民プロデューサーに評された、艶やかで張りのある歌声は中毒性が高い。

また、高校の軽音学部でボーカリストとして活動してきた高見は、常に楽曲と真摯に向き合い、細かく歌詞を分析している。オーディション序盤のグループ評価で乃木坂46の「制服のマネキン」を披露することになった際には、「“君”という存在を具体的にしたほうがいいです。それは観客なのか、それとも観客に“君”とのストーリーを見せているのか。それを具体的にすることによって、表情や演出にも出る」とグループの中でいち早く意見していた。楽曲の世界観に深く潜り込んでいき、丁寧に物語を構築していく姿勢が、彼女の表現力の根底にある。その唯一無二の歌声と高い次元にある表現力は、これからME:Iが作っていくグループカラーの中でも強いアクセントになるだろう。


櫻井美羽

櫻井美羽(さくらいみう)

生年月日:2002年1月11日
出身地:愛知県

仲間たちとの時間の中で見つけた、ありのままの自分

3度目のサバイバルオーディション番組出演となる櫻井美羽は、オーディション序盤から常に自分自身と戦い、葛藤していた。櫻井は最初のクラス分けテストでaespa「Spicy」をパフォーマンスし、これまで磨き上げてきたスキルを発揮。ダンスにおいても歌においても、彼女が高いレベルにあるのは一目瞭然だった。しかし、パフォーマンスを終えたあとの櫻井の表情は硬い。ボイストレーナーのイ・ホンギからも「ボーカルもダンスも全部うまいと思うんですけど、もうちょっと自由に表現できるはずなのに、何かで固まっている」という指摘を受ける。ダンストレーナー・仲宗根梨乃に「心当たりはありますか?」と尋ねられると、櫻井は涙で声を詰まらせながら「何回もデビューを逃しているので、何か足りていないと思っていて、自分のことを信じられていなかった」と胸の内にある不安をさらけ出した。

グループ評価では櫻井が中心となってメンバーを集め、Aクラスの実力者が集まる“アベンジャーズチーム”を結成。SPEEDの名曲「Body & Soul」を披露することになる。しかし自ら集めたメンバーの中で、彼女はグループにおける自身の役割やメンバーとのコミュニケーションに悩み、「自分がこのチームにいる意味はあるのかな」と孤独を抱えていた。櫻井はダンスレッスン中、勇気を出して仲宗根に「チームでつらい子がいても、どうしてつらいのかをみんなより察知できなかったりして、チームワークを乱してしまうんじゃないかなって……」と悩みをぶつける。仲宗根から「これまでと違うところに行く自分に勇気を持って」と厳しくも力強いエールを送られた彼女は、グループのメンバーと本音をぶつけ合い、伝説のステージを作り上げるために前を向いた。

そうした葛藤を経て、オーディションが終盤に近付くにつれて櫻井の表情はどんどん柔らかくなっていったように見える。デビュー決定後の特番では「最初と一番印象が変わった人は?」というお題でメンバーから最も多い票が集まり、「しっかりしていそうに見えて、フニャッとしてるときもある」「たまに出るへにゃっとした子供みたいなところがかわいい」という声が上がった。櫻井自身も「最初のほうの私ってだいぶ怖かったと思うので……すごく決めてました」とはにかみ、その自覚はある様子。「思い返してみれば最初は素ではなかったのかなと思うときもあって、それはみんなやトレーナーさんのおかげで気付きました。ありがとうございます」と笑顔を見せた。

3度目の挑戦でついに夢を叶えた櫻井が、憧れのステージでどのような景色を描いていくのか。高いスキルを持ちながらも、どこか不器用で、人間味あふれる彼女から目が離せない。


山本すず

山本すず(やまもとすず)

生年月日:2006年12月16日
出身地:東京都

高い向上心で身に付けた表現力

まだ16歳だったオーディション開始当時から大人びた雰囲気を漂わせていた山本すずは、番組序盤から高い順位をキープするも、常に危機感を抱いていた。高校1年生の頃に単身で韓国に行き、練習生としてレッスンに励むも、半年で事務所との契約が切れてしまった過去を持つ彼女。そんな経験から「自分に何かがなかったんだろうなというのはわかっていて。それがどこなのかというと、表現のところだと思っていて。それがまだできていない」と焦りを見せていた。

第2回順位発表式で5位となった山本は、トップ4の壁を越えるためにコンセプト評価でセンターに立候補する。しかし結果的にセンターを逃してしまい、「自分のできなさぶりに直面して、すごく悔しい。このままだと前と一緒になってしまう。どうすりゃいいんだ」と苦悩。毎回「上手だね」「よかったね」という無難な評価で終わってしまう自分から脱却するため、圧倒的なダンスの実力を持つ石井蘭のいる「TOXIC」チームの練習を見学し、センターに立たずとも輝くためのヒントを見つけた。

第3回順位発表式では14位まで順位が落ちてしまったが、最終投票で63万1708票が彼女に集まり、最終5位という順位に返り咲いたのは、きっと多くの国民プロデューサーが「デビューグループには山本すずが絶対に必要」と思ったからだろう。彼女の向上心と、磨き上げられた表現力は、ME:Iのグループカラーを豊かに彩っていく。