10代最強ラッパーを決めるフリースタイルMCバトル「激闘!ラップ甲子園」の第2回決勝大会が、8月8日に神奈川・CLUB CITTA'にて開催された。若きラッパーたちがトーナメント形式で頂点を争う本大会には、北海道、東京、愛知、大阪、福岡の全国5カ所で行われたオーディションを通過した個性豊かな16名のファイナリストが集結。4月に行われた前回大会(参照:MCバトル「激闘!ラップ甲子園」決勝大会レポート)と同様、あるいはそれ以上に白熱するバトルが繰り広げられた。
また、当日はオープニングアクトとして前回覇者・shinによるミニライブ、エキシビションマッチとして「全国学校対抗3on3 チャンピオンShow Caseバトル」、さらにクロージングアクトとしてBAD HOPのスペシャルライブも行われた。本特集ではその模様をレポートする。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / Kenji Kitazato、Makiko Takada
多彩なプログラムが盛り込まれた第2回大会
定刻となり場内が暗転すると、オープニングアクトを務める前大会覇者・shinが姿を現し、不穏なムードのトラックに乗せて新曲「If other life」を披露。これはTOKYO MXで放送中のテレビ番組「激闘!ラップ甲子園への道」のエンディングテーマとして制作中の楽曲で、前回の優勝賞品として与えられた「番組エンディングテーマ制作権」が結実したものだ。開会を華やかに彩るというよりは会場中をシリアスな空気で満たていくようなパフォーマンスで、ここが戦いの場であることを言外に告げているかのようでもあった。
続いて、ステージではエキシビションマッチ「全国学校対抗3on3 チャンピオンShow Caseバトル」が開催された。これは「第1回 激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3バトル-」および「激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3スタジオバトル-」それぞれの優勝校同士が3人対3人のMCバトルを行うもので、前者を制した滋賀S高校チームと後者の覇者・滋賀県立瀬田工業高校チームが激突。奇しくも滋賀県勢同士の対決となった。
このあと行われる1on1のトーナメントにも出場するME7Oを擁する滋賀S高校だったが、エースである彼を温存する戦術が裏目に出てか、よもやのストレート負けを喫してしまう。しかしながら審査員たちからは「僅差だった」との評が相次ぎ、そこまでの実力差はなかったとの見解で一致。勝利を収めた瀬田工業には「激闘!ラップ甲子園賞」として、interfm「My Generation MIC -激闘!ラップ甲子園-」オープニングジングル制作権が与えられた。
1回戦は波乱の幕開け
会場がライブとエキシビションで温められると、いよいよメインイベントである1on1ファイナルトーナメントがスタート。対戦は8小節×3ターン(決勝戦のみ4ターン)で行われ、先攻後攻はコイントスで直前に決定する。勝敗は審査員たちが優勢と思うほうの札を上げる形式で決定され、判定同数の場合は延長戦が行われる。審査員を務めるのは、BAD HOPからT-Pablow、Tiji Jojo、YZERRと、KEN THE 390、呂布カルマ、NAIKA MC、TKda黒ぶち、Fuma no KTR、S-Kaine、DJ CELORYの計10名だ。BAD HOPチームは3人で1票を担う形がとられたため、審査員票は全部で8票という計算になる。
1回戦の結果は上記の通り。優勝候補の最右翼と目されていたChanceが中学生ラッパー・MC知葉瑠を相手にまさかの初戦敗退を喫する波乱の幕開けとなった。もう1人の中学生ラッパー・TAPPERは、北海道からの刺客・クフェアの確かな実力に一歩及ばず敗北。Chanceと同様に前回大会から連続で決勝進出を果たしているSirogaras、楓、LARK FIENDといった面々は確かな実力を見せつけて順当に勝ち上がったが、その一方でKampfは接戦を落とし初戦で姿を消した。
今大会唯一の女性ラッパーとして注目されていた彼岸は、得意の韻を差し込みながら持ち味は発揮したものの、呂布カルマが「完璧だった」と評するビシキマのスキルフルなラップを前にあえなく敗退。試合前から一触即発の様相を呈していたNovA GOLD.Jrとsosumeによる一戦は大会ベストバウトに挙げる声も多い名勝負となり、僅差でsosumeが勝ち抜けている。また、3on3エキシビションが不本意な結果に終わったME7Oは、1on1でも思うように実力を発揮しきれず、無念の脱落となった。
次第に熱を帯びていく2回戦
2回戦に進出した8名は、1回戦にも増して熱のこもったバトルを展開。Sirogarasは安定したスキルの高さでビートを乗りこなし、呂布カルマに「票が割れたことが意外なくらいSirogarasが圧倒的だった」と言わしめてクフェアを退ける。1回戦で大番狂わせを演じてみせたMC知葉瑠は「尊敬する先輩に噛み付く後輩」という構図を作り出すも、それを楓に逆手に取られる形で利用され敗戦。ビシキマは1回戦以上に鬼気迫るラップスキルを冴え渡らせ、T-Pablowも思わず「ビシキマくんはラップが上手ですね。今日の出場者で一番うまいんじゃないですか?」と漏らすほどの力量を見せつけてM.C.Tを撃破。sosumeとLARK FIENDの一戦は伯仲の展開となったが、地元・岸和田をゴリ推しするスタイルで審査員陣の心をつかんだLARK FIENDに軍配が上がった。
第1回大会では比較的“舌戦”よりも“音楽的であること”を重視する対戦も多く見られたが、今回は様相が一変。どちらかというとフリースタイルバトル本来の様式に近い「いかに効果的なディスを相手に刺していくか」というやり合いが目立つ傾向が見受けられた。
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準決勝はハイレベルな攻防に