中学生、JKも決勝進出! 早くも世代交代が始まった「第2回 激闘!ラップ甲子園」の見どころをチェック

10代最強ラッパーを決めるフリースタイルMCバトル「激闘!ラップ甲子園」の第2回決勝大会が、8月8日に神奈川・CLUB CITTA'にて開催される。本大会では、北海道、東京、愛知、大阪、福岡の全国5カ所で行われたオーディションを通過した16名のファイナリストたちがトーナメント形式で対戦し王座を争う。当日のバトルをより楽しむための一助として、本特集ではあらかじめ知っておくべき大会の見どころについて解説する。

文 / ナカニシキュウ

大会の見どころ

4月3日に行われた前回大会の熱戦(参照:MCバトル「激闘!ラップ甲子園」決勝大会レポート)からわずか4カ月という短いスパンで実現する第2回決勝大会。今回もまた“本家・甲子園”であるところの全国高校野球選手権大会の開催時期と時を同じくして催される運びとなった。高校球児たちが青空の下で白球を追いかけるなら、10代ラッパーたちはスポットライトの下でビートとフロウを追い求めようというわけだ。

「激闘!ラップ甲子園」第1回決勝大会の最終決戦の様子。左からNERVE、shin。

「激闘!ラップ甲子園」第1回決勝大会の最終決戦の様子。左からNERVE、shin。

第1回の参加条件が15歳から19歳までだったのに対し、第2回は対象年齢を「19歳以下」と設定。さらに予選オーディションを北海道から九州までをカバーする全国5カ所で開催したことも影響してか、決勝進出者の顔ぶれは大幅に入れ替わることとなった。ファイナリスト16名のうち、実に11名が決勝大会初出場である。

特筆すべきは、決勝大会では初となる中学生ラッパー2名と女性ラッパー1名が名を連ねている点だ。このことは、若年層にラップの裾野が着実に広がっている現状を象徴的に示していると同時に、「年齢や性別など関係ない、ラップの技術こそが正義」というヒップホップならではのシンプルな思想も垣間見えるラインナップと言えるだろう。彼らに加え、さらに8名もの新たな顔ぶれが決勝の舞台を賑わせる。

「激闘!ラップ甲子園」第2回決勝大会のトーナメント表。

「激闘!ラップ甲子園」第2回決勝大会のトーナメント表。

一方、前回大会で準決勝進出を果たしたChanceとSirogaras、上位進出は逃したものの確かな実力を見せつけたKampf、LARK FIEND、楓の計5名にとっては、絶好の雪辱機会となる。狙うは当然、“優勝”の2文字のみ。この舞台をすでに経験している彼らがどんな戦いを見せるのか、要注目だ。

バトルの審査員にはT-Pablow、Tiji Jojo、YZERR、KEN THE 390、呂布カルマ、NAIKA MC、TKda黒ぶち、Fuma no KTR、S-Kaine、DJ CELORYというそうそうたる顔ぶれが集結。フリースタイルを知り尽くした10人の猛者たちが果たして若きリリシストたちの戦いをどう裁いていくのか、これも大きな見どころの1つだ。また、当日はBAD HOPによるスペシャルライブも行われる。

BAD HOP

BAD HOP

さらには、エキシビションマッチとして「3on3 チャンピオンShow Caseバトル」も開催される。これは過去2回にわたり実施されたチーム戦の大会「第1回 激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3バトル-」および「激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3スタジオバトル-」それぞれの優勝校同士が3人対3人のMCバトルを行うもので、前者を制した滋賀S高校チームと、後者の覇者である瀬田工業高校によって争われる。奇しくも近年の関西ヒップホップシーンで注目されている滋賀県勢同士の激突となり、お互いに相当意識せざるを得ない。

ファイナリスト&対戦カード紹介

第1試合 Sirogaras(兵庫) vs nover(埼玉)

第1試合に出場するSirogarasは、前述の通り前回のセミファイナリスト。相手を威圧する巨体とグルーヴィなラップが持ち味で、優勝候補の一角との呼び声も高い。対するnoverは、クリティカルなワードセンスを武器に噛み付いていくスタイル。Fuma no KTRが「ラップしてる人にはわかるうまさがある」と評するように“玄人受け”要素を備えており、その強みを生かしてジャイアントキリングを狙う。

第2試合 TAPPER(大阪) vs クフェア(北海道)

第2試合には中学生ラッパー・TAPPERが登場する。14歳ならではのピュアな感性でBボーイイズムに特化した、純度の高い正統派ブーンバップのラップスタイルが特徴だ。対するクフェアは過去に不登校も経験したという繊細なメンタリティを備える技巧派ラッパーで、ビートを乗りこなすセンスと技術は大会随一とも評される。いわば剛速球vsテクニック、正反対のスタイル同士がぶつかり合う一戦だ。

第3試合 楓(愛知) vs yujing(兵庫)

前回大会で屈辱の1回戦敗退を喫した楓は、第3試合に登場。豊富なボキャブラリーを生かしたテクニカルなライミングを特徴としており、同音異義語を駆使して畳みかけるのが得意のスタイルだ。その楓と激突するyujingは今大会の“台風の目”とも称されており、MCバトルの経験がほぼないという異色の経歴を持つ。しかしながら、シンプルに音楽家として築き上げてきたラップの基礎体力は折り紙付きで、「真面目にバトルだけやってきたやつらを蹴散らす」と余裕をかましている。

第4試合 MC知葉瑠(大阪) vs Chance(東京)

第4試合では、もう1人の中学生ラッパー・MC知葉瑠が前回のセミファイナリスト・Chanceに挑む。ラップの技術や繰り出すワードの説得力はもちろん、それらすべてを音楽的に高いレベルで表現できるChanceが「ファイナリスト16名の中でも総合力で頭ひとつ抜けている」と見られる中、経験値の面で大きなハンデを抱えるMC知葉瑠がどんな戦いを見せるのか。SILENT KILLA JOINTも認めたという確かなその実力で、番狂わせを見据える。

第5試合 Kampf(東京) vs M.C.T(兵庫)

第5試合には、前回大会でSirogarasに敗れ2回戦敗退の苦汁をなめたKampfがお目見えする。「東京の10代トップ」を自称するなど、あえて退路を断つスタイルでよどみないフロウを叩きつける実力者だ。対するM.C.Tは、八方破れな発声でビートにとらわれない自由律ラップを得意とする直情型ラッパー。個性的でアクの強い両者の対決だけに、熱のこもった戦いが期待できそうだ。

第6試合 彼岸(s埼玉) vs ビシキマ(広島)

今大会唯一の女性ラッパー・彼岸は第6試合に登場。偏差値65の名門校に通うという“リケジョJK”は、一見おとなしい可憐な少女風の見た目ながら、その実体はテクニカルな韻を内包した痛烈なパンチラインを次々に繰り出すハードパンチャーだ。これに対するのは、ヘアスタイルもヒップホップに対する気持ちもビシッとキマったビシキマ。聞くとニヤっとしてしまうMC名や見た目のイメージに反し、ラップの技術は本物だ。ビジュアル的にも特徴的な2人が激突するとあって、エンタテインメント性という意味でも注目度の高い一戦となる。

第7試合 NovA GOLD.Jr(大阪) vs sosume(東京)

第7試合には、前回大会でリザーバー(予備人員)を務めたNovA GOLD.Jrが満を持して本戦出場を果たす。対するsosumeは、Chanceも所属する世田谷のサイファークルー・Mad scienceの一員。両者ともにバトルに対する熱量が著しく高く、いわば生粋のバトラー対決とも言える構造だ。ラップ技術に関しても申し分ないものを持っているだけに、ストイックなテクニック対決となることが予想される。

第8試合 ME7O(滋賀) vs LARK FIEND(大阪)

1回戦ラストを飾る第8試合でマイクを握るのは、5月に開催された「激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3バトル-」で滋賀S高校チームの一員として優勝を果たしたME7O。前述の通り、当日は3on3のチャンピオンバトルも行われるため、ME7Oは当然そちらにも出場する。狙うは3on3と1on1のダブル制覇、すなわち“完全優勝”だ。対するLARK FIENDは前回大会で1回戦敗退と不本意な結果に終わっており、その雪辱に燃えている。どちらにも負けるわけにはいかない明確な理由があるだけに、鬼気迫るバトルが展開されることになるだろう。

「激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3バトル-」で優勝した滋賀S高校チーム。左がME7O。

「激闘!ラップ甲子園 -全国学校対抗3on3バトル-」で優勝した滋賀S高校チーム。左がME7O。

以上の16名がノックアウト方式で勝ち上がりを競い、頂点を目指す。それが「激闘!ラップ甲子園」だ。

10代ラップシーンの興隆

近年、ますます盛り上がりを見せている10代ラップシーン。前回大会はもちろん、前述した「学校対抗3on3バトル」も含め、ひと昔前では考えられないほど10代のラッパー人口は増え、技術レベルも格段にアップしている。今回行われる第2回大会にしても、もちろん日本のヒップホップシーンの明るい未来を感じられる催しとしての側面もありながら、シンプルに音楽興行として楽しむに耐えるイベントとなることも間違いない。もし少しでも興味があるのなら、10代という今の時期ならではの輝きを放つ彼らの姿をその目に焼き付け、時代の証言者になってみてはいかがだろうか。

なお、もっと彼らのことを知っておきたいという熱心な読者諸氏においては、サブスク配信されているファイナリストたちのオリジナル楽曲をチェックしておくといいだろう。

このように、今回の出場者の中には10代にしてすでにハイクオリティな音源をリリースしている者が少なくない。バトルにおいて彼らが見せるラップとはまたテイストの異なる、作り込まれた作品ならではの新たな魅力に出会えるはずだ。

公演情報

第2回 激闘!ラップ甲子園 -FINAL TOURNAMENT-

2022年8月8日(月)神奈川県 CLUB CITTA'
OPEN 14:00 / START 15:00

対戦カード
第1試合 Sirogaras(兵庫) vs nover(埼玉)
第2試合 TAPPER(大阪) vs クフェア(北海道)
第3試合 楓(愛知) vs yujing(兵庫)
第4試合 MC知葉瑠(大阪) vs Chance(東京)
第5試合 Kampf(東京) vs M.C.T(兵庫)
第6試合 彼岸(埼玉) vs ビシキマ(広島)
第7試合 NovA GOLD.Jr(大阪) vs sosume(東京)
第8試合 ME7O(滋賀) vs LARK FIEND(大阪)

審査員
T-Pablow / Tiji Jojo / YZERR / KEN THE 390 / 呂布カルマ / NAIKA MC / TKda黒ぶち / Fuma no KTR / S-kaine / DJ CELORY

SPECIAL LIVE
BAD HOP

OPENING ACT
shin(第1回 激闘!ラップ甲子園 優勝者)

MC
カミナリ / 東京ホテイソン

アシスタント
えまぽち

DJ
DJ IZOH

レフリー
DJ TY-KOH

リリース情報

「激闘!ラップ甲子園 ORIGINAL BATTLE BEAT Vol.2 Beat By illrain」

2022年8月9日(火)配信開始
「第2回 激闘!ラップ甲子園 -FINAL TOURNAMENT-」で使用されるバトルビートのリリースが決定!