FENDER MADE IN JAPAN 35th Anniversary|「ギター・マガジン」編集長と紐解く伝統的ブランドの魅力、46人が語る日本製フェンダーの思い出

フェンダーの魅力とその変遷
(協力:「ギター・マガジン」尾藤雅哉編集長)

世界中のプレイヤーから支持されるブランド

創業当時のフェンダー社工場。

1946年に創業したフェンダーは、ロックやカントリー、ジャズ、R&Bなど幅広い音楽ジャンルのアーティストに世界中で愛用されている楽器メーカー。同社はボディに空洞のないソリッドギターの量産化に世界で初めて成功し、49年にテレキャスターの原型となるエスクワイヤーを発表した。51年には世界初のソリッドベースであるプレシジョンベースを発売。そして54年にはストラトキャスターを生み出し、50年代後半以降、ジャズマスター、ジャズベース、ジャガーといったモデルを次々と世に送り出した。

「ギター・マガジン」の尾藤雅哉編集長は、「フェンダーは世界最大級の楽器ブランド。理由として“音の入口から出口までそろっていること”が挙げられます」と語る。フェンダーはストラトキャスター、テレキャスター、ジャズベース、プレシジョンベースといった世界的なスタンダードとも言えるエレクトリックギター / ベースのみならず、ツインリバーブ、ベースマンなどアンプにも人気モデルを多数展開。音の入り口から出口まで、トータル的にプレイヤーに寄り添ったブランドであることがわかる。

ストラトキャスター裏面。ボディとネックの接合部にはボルトオン方式を採用。

また同社が長年にわたって多くのプレイヤーに愛されてきた理由について尾藤編集長は、商品展開数や機能性だけでなく、「少々雑に扱っても壊れないタフな設計にもある」という。その裏付けとして、フェンダー製のギターやベースはボルトオン方式(ネック交換が容易な設計)でボディとネックが接合されておりコストパフォーマンスに優れているという点のみならず、生産性、過酷な環境下にも耐えうる堅牢性や修理の容易さといった部分でも合理的な設計になっていることを説明してくれた。

ストラトキャスターの人気に火をつけたヒーローの存在

JIMI HENDRIX MONTEREY STRATOCASTERジミ・ヘンドリックス

フェンダーの中でも、とりわけ世界中のギタリストに愛用されているモデルがストラトキャスターだろう。同社の代名詞とも言えるこのモデルだが、実は60年代半ばにはラインナップが非常に少なく、生産中止も検討されていた。そんな中、「『自分もああなりたい』。そう思わせるギターヒーローの登場が、ストラトの人気を大きくしていったんだと思います」と尾藤編集長が推察するように、ジミ・ヘンドリックスが脚光を浴びたことをきっかけにストラトキャスターも日の目を見ることになる。

ジミ・ヘンドリックスの登場後、さらにエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、リッチー・ブラックモアといったスターギタリストたちがこぞってストラトを使うようになる。フェンダーの最上位機種を製作するセクションであるフェンダーカスタムショップからは彼らの愛用した実機を忠実に再現したモデルが発表されており、レジェンドたちのサウンドは今も受け継がれている。またフェンダーでは、カスタムショップ製以外でも、木材や製造工程を見直して価格を抑えたモデルが生産されることもあり、若手のユーザーも憧れのアーティストモデルを手に入れることができる。

また近年では日本人アーティストがフェンダーとエンドースメント契約を結ぶ例も増えており、INORAN(LUNA SEA)、Ken(L'Arc-en-Ciel)、TAXMAN(THE BAWDIES)、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、MIYAVI、山内総一郎(フジファブリック)らトップアーティストが、自らのこだわりをふんだんに取り込んだシグネチャーモデルを発表している。

日本製フェンダーの変遷と魅力

ストラトキャスター

日本製フェンダーが登場したのは82年。本国のフェンダーからライセンスを取得し、日本国内での生産がスタートした。尾藤編集長は、70年代半ばにギターを始めた真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)が「当時のフェンダーは高嶺の花だった」と口にしていたことが印象に残っていると話す。日本製フェンダー登場前にはフェンダー製品が高価だったこともあり、低廉なコピーモデル(海賊版)が多数存在していた。しかし日本製フェンダーが誕生したことにより、低価格かつ高品質なギターが日本の市場に出回るようになり、多くの日本人が高嶺の花だと感じていた“本物のフェンダー”を手に入れることが可能になっていった。

伝統を受け継ぎ、進化した日本製フェンダー

日本製フェンダーの35周年記念シリーズ第1弾として、2017年9月に「MADE IN JAPAN TRADITIONAL」が発表された。このシリーズは、同社が“あらゆるプレイヤーに最適な1本が見つかる”と謳うほどに多彩なラインナップがそろっており、開発にあたっては本国のシニアマスタービルダーであるクリス・フレミング氏が参加。実際に同シリーズの生産工場を見学した尾藤編集長が「神は細部に宿る……そういった日本のもの作り精神が反映されていることが示されています」とコメントしているように、木材の選定からパーツ、製造工程、さらには工場レイアウトに至るまでを綿密に計算して製造された高品質なモデルが登場した。

ブルーフラワーのカラーリングが施された「MADE IN JAPAN TRADITIONAL 69 TELECASTER」。

80年代の日本製フェンダーはペイズリーピンクのテレキャスターや、ジャズマスターなど、本国で生産中止となっていたモデルを復刻させ、日本のみならず海外の需要にも応えた。ユーザーのニーズに合わせた製品展開は日本製フェンダーの強みであり、「MADE IN JAPAN TRADITIONAL」にもその魂は受け継がれている。このシリーズでは音楽ジャンルに合わせてスペックが選べるのみならず、トリノレッド、キャンディブルー、フラミンゴピンクなど新色も追加され、計100種類以上のラインナップを用意。お気に入りの1本を選ぶことができる。

伝統を受け継ぎながら、進化し続けている日本製フェンダー。この冬にはビンテージモデルの個性を踏襲しつつ、モダンなプレイヤビリティを追求した「MADE IN JAPAN HYBRID」が第2弾シリーズとして登場する。


2017年11月14日更新