私立恵比寿中学「kyo-do?」インタビュー|現在進行形で再構築、エビ中の2023アップデート計画

2022年末、桜井えま&仲村悠菜の“転入”と柏木ひなたの“卒業”を経て10人体制へと生まれ変わった私立恵比寿中学。長年行動をともにする真山りか、安本彩花、星名美怜、小林歌穂、中山莉子の5人と、新たに加わったココユノノカ(桜木心菜、小久保柚乃、風見和香)とエマユナの5人というメンバー構成になったことが、エビ中というグループに今大きな変化をもたらしている。

満を持してリリースされる10人体制初のオリジナルナンバー「kyo-do?」は、TikTokを通じて大ブームとなったFRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」を筆頭にポップでキュートな楽曲を次々と世に送り出すヒットメーカー・ヤマモトショウの書き下ろし。アップデートされたエビ中の新たな可能性が見える1曲だ。この新曲を携え、エビ中は4月15日より「100%ebism」と銘打った10人体制初のツアーを行っている。2023年春、今現在のエビ中が考える「エビ中の100%」とは?

音楽ナタリー通算20回目のエビ中特集となる本稿では、高学年と低学年の2組に分けてインタビュー。歴史を築き上げてきたエビ中と、新たな歴史を刻み始めたエビ中、2つの視点からグループの現在地を紐解く。

取材・文・撮影 / 臼杵成晃

エビ中 高学年インタビュー
真山りか / 安本彩花 / 星名美怜 / 小林歌穂 / 中山莉子

左から中山莉子、安本彩花、真山りか、星名美怜、小林歌穂。

左から中山莉子、安本彩花、真山りか、星名美怜、小林歌穂。

不安よりも「やってやんぜ!」

──ひさびさのCDシングルリリース、そして春ツアーと、いよいよ本格的に10人体制での活動がスタートしましたね。この10人での活動は、皆さんの中でもすでにしっくりきていますか?

真山りか そうですね。年末の「New Style 大学芸会」(参照:エビ中、新メンバーのエマユナ「大学芸会」で堂々初ステージ!10人体制の今ここがスタートライン)のときは不安が大きかったですけど……エビ中はこれまで何度も新しい形を繰り返してきて、経験で学んできたことも多くて。結局いろいろ悩んだところでライブが解決してくれるんです。年末の大学芸会が10人のエビ中としての基準になっていて、そこからの4カ月はあのライブを基準にどう形作っていくかを考えてますね。

──「New Style 大学芸会」はメンバーにとって、いきなり高得点が出せたという感覚?

真山 そうなんですよ。思った以上に高得点が出てしまったので、そこにどう近付けられるか。スタッフさんには、6人体制になった2018年の「ebichu pride」(参照:エビ中、新体制初ライブで見せつけた6人の誇り「これが“ebichu pride”だ!」)を超えろ!と言われてましたけど(笑)、あのときと状況は似ていますね。正直、10人になることでこれまでの“エビ中らしさ”は失われていくんじゃないかなという不安もあったけど、結果そんなことなかったなって。それに、新しいメンバーが5人になったことで新旧で5:5というバランスの取れた構成になって、それで年下のメンバーも私たちと話しやすい状況になったのかなと思います。9人体制のときは、ココユノノカ(桜木心菜、小久保柚乃、風見和香)はやっぱり先輩との距離感に苦労していたと思うから。風通しのいいグループになったかなと個人的には感じています。

──「ebichu pride」のときもそうでしたけど、今回も柏木ひなたさんがグループを去って(参照:エビ中・柏木ひなた、ラストライブで12年間の集大成を披露「みんなのおかげで輝き続けられた」)感傷に浸る間もなく翌日に新体制で動き出すというのは、メンバーにとってもファンにとっても、ある意味残酷ですよね。

安本彩花 それはありますね。やっぱりエビ中ファミリー(私立恵比寿中学ファンの呼称)の人たちのほうがつらかったと思うし……けどなんか、私の感覚で言うと「やれねえわけねえんだから、黙ってろ」と。

中山莉子 わあー(笑)、カッコいい。

小林歌穂 カッコいいッスね。

安本 私、追い詰められるとトガりにトガっちゃうから(笑)。大人から「『ebichu pride』を超えろ」って言われても「うるせえな、やれっから!」みたいな感じで(笑)、不安はなかったです。エマユナ(桜井えま、仲村悠菜)の力はオーディションのときからひしひしと伝わっていたし(参照:エビ中、新体制誕生の瞬間を生配信!「未確認中学生X」オーディション結果発表)、レッスンでがんばっている姿を見ていてもすごく頼もしかったから、不安よりも「やってやんぜ!」という気持ちが大きかったです。

小林 とは言っても私は、やっぱり私情を挟んじゃうと切り替えが難しいから、考え方を変えようって。ひなちゃんの卒業式は笑顔で送り出せる楽しい気持ちで臨んで、新体制はこれからの姿をしっかり見せていかなければいけないから……真剣さは新体制のほうに向けて、ハッピーな気持ちをひなちゃんに向けて、という感じで自分の心に落とし込めるように切り分けて考えました。それでも不安は大きかったですね。ココユノノカの3人が入ってきた段階で、私と莉子ちゃんは一番下の立場から中間管理職に変わったのもあって、自分のパフォーマンスの仕方に迷いもあったんです。中間の立場としての軸をつかまなくちゃいけないなという個人的な課題を持ったライブでもありました。

中山 2日連続のライブで、ひなちゃんの卒業式もあるけど、私たちは先のことも考えなくちゃいけないから、どうしても2日目の不安が頭の中で大きくなっていたんです。でもリハーサルのときに突然「あ、これは大丈夫だ」って吹っ切れちゃって。変に自信が付いていいのか悪いのかわかんなかったけど、結果「いいライブだった」って言われることが多いライブになったので、成功だったのかなと思います。

──星名さんは喉の療養中で今日は話せないということなので、一応スマートフォンでコメントを書いてもらってますが……めちゃめちゃテキパキと入力してますね(笑)。ゆっくり書いてもらって記事に入れられたらと思ってましたが、リアルタイムでいけるようでしたら。

星名美怜 (テキスト読み上げソフトを使って)新体制をファンの人に受け止めてもらえるかが一番の勝負だなと思っていました。柏木ひなたのエビ中での存在感が大きかったので、そこが抜けたときの空白を絶対に見せたくないという私たちのプライドがあったと思います。正直、2日目はファンの方との戦いだった。みんながついてきてくれるかに今後のすべてがかかっているというか。

安本 すごい力強い発言に聞こえるね(笑)。

──ファンが10人のエビ中をどう見るか、どう受け止めるかが皆さんにとっては一番の勝負どころだったと思いますが、結果的に「その勝負に勝った」という感じはその後のファミリーの反応を見ていても思いますね。自信を持って2023年を迎えられたのではないでしょうか。

真山 手応えはあったものの、勝負に勝てたのか、成功だったのかどうかは、ライブを終えた直後はわかりませんでしたけど……。

小林 でも明るい感じはあったよね。明るい未来が見えた実感はありました。

武者修行フリーライブを提案した理由

──その後ファンクラブイベントなどいくつかのライブを挟みつつ、その中で“低学年”の5人のみによる「武者修行フリーライブ」が始まったときに「そういう見せ方もあるのか!」と驚きました(参照:エビ中低学年メンバーが5人だけで武者修行、冬空の下でフリーライブ)。これまでの歴史を背負った5人、新しい5人、そして10人全員という3つの世界線が見せられるグループになったのかという。あれは真山さんが提案したのだそうで。

真山 はい。9人になった時点で、下の子たちにそういう経験を積ませたほうがいいんじゃないかという話は、私たちのほうからスタッフさんにずっとしていたんです。やっぱり私たちとは経験値が違うじゃないですか。経験値も、ファンの皆さんと積み重ねてきた思い出の数も違う。武者修行の一番の目的としては……6人時代の楽曲は、彼女たちにとっても触れづらい部分があったりするのかなと感じていて。ファンの人たちもそこはセンシティブになってしまう部分もある。だから、そこの思い出を彼女たちだけで作ってもらって、歌っている意味は違えど、今までとはまったく違うエビ中になってもいいから、イチからエビ中ファミリーの皆さんとの関係を6人時代の楽曲を通して築いてほしかったんです。

真山りか

真山りか

真山りか

真山りか

──6人時代の楽曲には「なないろ」や「感情電車」など、松野莉奈さんとの思い出が込められているものも多いし、その背景も背負って歌い継いでいくのは、確かに新メンバーにとって大きなプレッシャーかもしれないですよね。

真山 その中で彼女たちが予想以上に変化していて……10人のエビ中に帰ってきたときにパッションが違うんですよ。いい傾向だなと思います。若いエネルギーがあふれすぎて目の前のことだけにぶつけてしまったり、若さゆえがむしゃらになりすぎたりしている部分もあるから、そこは10人になったときに調整が必要な部分ではありますけど。グループ全体として明るいムードになっているのはすごくいいなと思います。

星名 しっかりと経験になるし、自分のファンを作るきっかけにもなることなので、低学年メンバーが自信を付けるいい機会になったと思います。

──武者修行中の5人を見て、昔からエビ中を見ている人は懐かしさを感じているんじゃないかと思うんですよ。もちろん新メンバー5人だからつたなさはあるんだけど、ショッピングモールでのフリーライブというシチュエーションも相まって「このつたなさ、知ってる!」という。

安本 それはあるかも(笑)。私たちは大人になっちゃったし、「成長過程を楽しんでもらう」という面白さには欠けて違う次元に入っているから、そこもこういう形でプラスできるんだという発見はありましたね。「私たちに求められてもできないことだけど、こっち(下級生)がしてくれている。これってグループだからできることなんだ」って。エビ中のあるべき形、可能性がすごく広がった感じがして、今のエビ中はけっこう無敵ポジに突入してるんじゃないかな(笑)。

──10年以上やってきたエビ中でまさかまだ「頑張ってる途中」を見せてもらえるとは!というお得感と言いますか(笑)。実際に皆さんから見てどうですか? 懐かしい気持ちになります?

安本 懐かしさは感じるけど、当時の自分たちよりはるかにレベルは高いんですよ。

安本彩花

安本彩花

安本彩花

安本彩花

真山 そうそう! 私たちは本当に手探りだったから、環境が整っている中でできているのがうらやましい気持ちもあり、その分「エビ中」という重い看板を背負っているのはかわいそうだなという思いもあり。武者修行フリーライブでは毎回1曲、心菜がフォーメーションを作り直している曲があるんですよ。加入してすぐの頃は心菜もまだ子供な部分がたくさんあったんですけど、低学年の中で一番のお姉さんとして活動することで、全体を俯瞰して見られるような冷静さを持てるようになっていて。いい成長をしているなと思います。

小林 和香はLINEで「この曲はどういう気持ちで歌ってるんですか?」と聞いてきたり、前よりも曲に対して積極的になってくれていて。それもうれしかったです。

中山 10人でのレッスンのときも、みんな前より自信が付いているように見えて、こっちもがんばらないとなと思いました。みんな目が違うんですよ。

──その成長ぶりに下からの突き上げも感じている?

真山 それは感じますよ。“推し変”とか“推し増し”とかもありますから(笑)。私たちを彼女たちの年代の頃から応援してくださっている人は、懐かしさから新メンバーのほうに青春を求めてしまうんじゃないかという焦りはありますよね。同じ土俵で戦う必要がないからこそ、今の自分の魅力をもう一度考え直さないと。

星名 特に校長(エビ中のチーフマネージャー・藤井ユーイチ氏)がそうだよね。青春を思い出してる感じがする。

真山 生き生きしてるよね(笑)。

小林 エビ中ファミリー代表としてね(笑)。