音楽ナタリー Power Push - Crossfaith
“最強のアルバム”の根幹にある背景
Crossfaithらしさが詰まっている
──今作は前シングル「MADNESS」のダンサブルな路線とは異なり、これまでのCrossfaithの持ち味をすべて集めた上で、新しいステージに突き抜けたようなサウンドになっていますね。
Koie はい。まさにCrossfaithのいいところ、らしさを押し出そうというのがこのアルバムの狙いでした。
Teru 俺たちが持てるものを全部詰め込みました。今まで生きてきた中での経験、感じたこと、それをすべて出し切ろうと。
Hiro このアルバムができるまでにいろんな出来事があったから。この作品を制作する過程でメンバーみんなと向き合って、最後までやり遂げることができました。それもバンドの成長につながってると思う。納得がいくというか、満足できるアルバムになりました。
Tatsuya ツアーやレコーディングを重ねて、その中で経験したことや学んだことをうまく今回のアルバムの中に入れられたと思います。アルバムを作る前に全体的にどういうものにするのか、何度も話し合ったんですよ。その結果自分たちがイメージしたものに近付けることができて。
──イメージしたアルバムの全体像というと?
Teru 1stアルバムから自分たちが掲げていた“ドラマティックハードコア”という言葉や、“破壊と創造”、“凶暴なものと美しいもの”、“天国と地獄”というような二面性ですね。例えば1stアルバム(「The Artificial theory for the Dramatic Beauty」)で打ち出したハードコアなバンドサウンドとメロディアスなピアノの音とか。そこに俺たちは惹かれてきたし、変わらずに俺たちの中にあるものだなって。
──その方向性にしようというきっかけはなんでしたか?
Teru 「MADNESS」でデイヴィッド・ベンデスというプロデューサーとレコーディングして、その段階でフルアルバムを作る予定もあったんですよ。でも「MADNESS」の制作過程で俺たちがアーティストとして譲れないことが出てきて、彼もプロデューサーとしてのセオリーがあって音楽的に噛み合わない部分が出てきたんです。自分たちが考えるオリジナリティの部分が薄れているって危機感を感じた結果、「アルバムはデイヴィッドではない人にお願いしよう」という結論に至りました。それから新しいプロデューサーを誰にするのか、出したいCrossfaithらしさとは何かというのを俺たち自身で考えまして。自分たちのアイデンティティを探っていきました。
──なるほど。
Teru それで俺たちがより見たい景色は何か、自分たちの目標に近付くためにはどんな曲を作ればいいのかって考えた上で、「『これが俺たちだ』っていう最強のアルバムを作ろうぜ」と言ってみんなの意識を統一させました。曲を作るときも、次はバラード、その次は激しいものにしようとか、全体像を踏まえて制作したんですよ。
「Tears Fall」に投影されたもの
──今作でバンドはどんな成長をしたと思いますか?
Teru Kenがサビでメロディアスに歌うとか、より音楽的な幅を広げられたと思ってます。
──Koieさんの歌心は今作のポイントの1つですよね。「Devil's Party」におけるサビのキャッチーな歌メロは抜群の求心力があるし、Crossfaith初のバラード「Tears Fall」での歌唱力も素晴らしいです。
Koie 「Tears Fall」はKazukiが持ってきた曲なんですよ。脳内出血でライブを休止していたKazukiが、サポートギターを入れて海外ツアーから帰って来た俺らに聴かせてくれた曲で。俺の歌い方が変わってきたのもそうだけど、何よりバンドとして表現したいことが増えてきたからこういう曲が生まれたのかなと。だからそれにふさわしいボーカルを乗せなきゃいけないと思って。スクリームで攻めるだけでなくメロディのある歌を入れるようになったのは曲に寄り添う、曲をよりよくするボーカルを意識した結果ですね。それは各楽器にも言えることで、今回は曲のテーマに向かってメンバー一丸となってやれたと思います。
──Kazukiさんはどんなイメージで「Tears Fall」を書いたんですか?
Kazuki どういう曲というよりも、そのときに抱いてた気持ちを形にしたらああいう曲になりました。病気になって思い悩んだというか、今まで感じたことがない不安や負の気持ちと直面して。最初のほうは理解できなくて、自分がどうなってるのかよくわからない状況でした。でも自分の身に起きたことやそのときの気持ちを形にするべきやなって思い始めたんです。こういう気持ちになったのは自分にとって貴重な体験やし、そう何度も経験することではないから。それを素直に曲にしてみたらああいう曲が生まれたんです。
Teru 最初に曲を聴かせてもらったときは本当に感動しました。Kazukiは音楽どころじゃないはずなのに、自分の気持ちを曲にして、アーティストとして着実に前に進もうという姿勢があったので。バンドをさらに進ませてくれた曲が「Tears Fall」ですね。
Koie 「Tears Fall」のデモを聴いた瞬間にKazukiの感情的な部分が出ているな、これはアルバムに入れるべきだなと思いましたね。
Teru あの曲はすごく人間味があると思う。Kenの声色、歌の乗せ方も今までと全然違うし、ほかのメンバーも今までやったことがない曲調だからどう聴かせるかを考えました。音にもメンバーそれぞれのこだわりが出てると思います。
Tatsuya 「Tears Fall」にはKazuki自身の気持ちが宿ってますよね。バラードだけど、その中にパワーやポジティブな気持ちが込められてる。だからドラムも聴いたときに感じた印象のまま自然な形で叩こうって。
Hiro うん。プレイのカッコよさどうこうではなく、この曲にいかに寄り添えるかを意識してレコーディングしました。
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収録曲
- System X
- Xeno
- Raise Your Voice
- Devil's Party
- Ghost In The Mirror (feat. Caleb Shomo from Beartooth)
- Dystopia
- Wildfire (feat. Benji Webbe from Skindred)
- Tears Fall
- Paint It Black
- Vanguard
- Calm The Storm
- Astral Heaven
Crossfaith(クロスフェイス)
2006年11月にKenta Koie(Vo)、Terufumi Tamano(Program, Vision)、Kazuki Takemura(G)、Hiroki Ikegawa(B)、Tatsuya Amano(Dr)により結成。2009年4月にリリースした1stアルバム「The Artifical theory for the Dramatic Beauty」が国内メタルコア、スクリーモシーンを活気付ける起爆剤に。同年10月には「LOUD PARK 09」に出演し、圧巻のライブパフォーマンスで多くのオーディエンスを魅了した。その後、「Warped Tour UK」「Sound Wave Festival 2013」「Download Festival 2014」「Reading / Leeds Festival 2014」など海外の大型フェスにも多数出演し、各国のメディアに取り上げられる。2014年10月、キャリア初となるシングル「MADNESS」をソニー・ミュージックレーベルズからリリース。2015年1月にKazukiの脳内出血の治療によりライブ活動を休止。サポートギタリストを迎えてライブ活動を行う一方で新曲レコーディングを実施し、9月にメジャー1stアルバム「XENO」をリリースする。