BUMP OF CHICKENメンバーとクリエイターが語り合うパッケージ作品論、藤原基央がエンディングテーマに込めた「ヒロアカ」愛 (2/2)

みんなが「ヒロアカ」のことを超好きだから

──新曲「I」のCDシングルについての話も聞かせてください。楽曲自体については改めてしっかり聞かせていただくので、ここでは限定盤シングルのパッケージについてお伺いしますが、いわゆるCDシングルというより、BUMP OF CHICKENと「僕のヒーローアカデミア」の強い結び付きを手に取って感じられるアイテムになっていると思います。これはどのように始まった話なんでしょうか。

藤原 このパッケージデザインも基本的には8%がいろいろと冴えたアイデアをいっぱい投げてくれて。その中から僕たちも意見を言わせてもらって、こうなっていった感じです。本当にカッコいいなと思っています。これ以上に言葉が浮かばないぐらい。

BUMP OF CHICKEN(撮影:太田好治)

BUMP OF CHICKEN(撮影:太田好治)

──このアイデアはどういう発想から生まれたんでしょうか。

8% 今、アニメのタイアップのCDはたくさんありますよね。既存のCDシングルのフォーマットにアニメの絵を描き下ろしてもらってジャケットにするというテンプレートも、ある程度存在している。でも、今回はBUMP OF CHICKENと「ヒロアカ」が巡り会ったときにしかできないことをやったほうが絶対にいいという思いがまずありました。そのためにはいわゆるスペシャルなものを作るべきと考えて。僕も「ヒロアカ」が好きだし、構想段階から力が入ってました。

──アートワークはボンズフィルムによる描き下ろしのデクと爆豪勝己がフィーチャーされたものになっていますが、これについてはどうでしょうか?

8% 最初に「どういう絵を使おうか」と話し合って。曲を聴いて「ヒロアカ」の最終章の中からいくつかよさそうなシーンを僕がピックアップして、メンバー含めて全員で「このシーンいいよね」「曲に合ってるよね」と話し合いました。打ち合わせは、だんだんただの「ヒロアカ」談義になることもありましたけど。最初のリストには違うキャラクターも入っていたんですけれど、自然とこの絵になりました。

「I」TOY'S STORE限定盤ディスクケース © 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会(撮影:山田隆史)

「I」TOY'S STORE限定盤ディスクケース © 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会(撮影:山田隆史)

直井 基本的には8%が選んだものに4人とも大賛成で。「これしかないよね」という感じでした。

8% それで、こういう感じでやりたいですとお伝えして、素晴らしい絵を描いていただきました。

太田 補足すると、あの絵は原作マンガだと上半身しか描かれてないんです。でも今回は全身イラストを描き下ろしてもらった。今回の「I」だからこそのオリジナルで。そこにも意味があるな、すごくいいなと思いました。

8% で、僕が最初に曲を聴いたときに、イントロの段階でキラキラしたイメージがあったんです。絶対ホログラムみたいなキラキラした感じのデザインにしたいと思ってました。「ヒロアカ」のタイアップで曲を出すことになりました、パッケージを作りますって話になったときに、BUMP OF CHICKENのファンもうれしいし、「ヒロアカ」のファンも巻き込んで楽しめるようなパッケージにしようというのがみんなの共通認識にあって。その比率をどうミックスするかをデザインの基準にしていました。例えばこの絵を「ヒロアカ」の公式グッズとして出すなら、デクは緑、爆豪はオレンジになると思います。でも今回は、BUMP OF CHICKENのロゴの青を使った配色にできた。そういうことも意識していました。

直井 みんなが「ヒロアカ」のことを超好きだから、読者としての「こういうのがあったらうれしいよね」という気持ちも乗っかっているんです。8%がこのカルチャーにすごく詳しいからこそできたものだと思います。

アニメカルチャーの発想を音楽のパッケージに落とし込む

──特殊な形状のダイカットディスクケースについてはどうでしょうか。

8% 音楽CDを作るというところとは別軸で考えたから、こういうパッケージになったと思います。最初はデカいアクスタにCDが付いてたらいいな、という考えがあったんです。アニメサイドのプロダクトのカルチャーの発想を、音楽のCDのパッケージに落とし込むことができるのかという。それを手探りでやった感じです。

増川 最初は2つ折りの案もあったよね。

直井 でも、最終的には立てかければいいという結論になった。

8% それでこういう、見たことがないような形になりました。

──メンバーの皆さんとしては、このパッケージができあがっての実感はどうですか?

増川 言うことないです。

直井 やっぱり、「ヒロアカ」に対する感謝がめちゃくちゃあります。原作も最後までずっとワクワクさせてもらったし、さらにまさかアニメのエンディングテーマをやらせてもらえるなんて本当にまったく思ってなかったから。最初に話を聞いたときから、もうずっとテンションがマックスなんですよ。僕らのこの気持ちは音楽にも絶対に乗っかったと思うし。「ヒロアカ」の視聴者の皆さんからも喜びのコメントをいただいて、本当にうれしいです。

──メンバー全員が「ヒロアカ」が大好きなんですと、言わずとも伝わるパッケージだと思います。

藤原 結果そうなっちゃった。恥ずかしいぐらいにそれが出ちゃったかもしれないです。

直井  リスペクトですね。「ヒロアカ」に対するリスペクトの気持ちがめっちゃあります。あと、付属のバッジのサイズにもこだわりましたね。

8%  缶バッジを作るにしても「アニメカルチャーでの缶バッジのサイズはこれだよね」というのをしっかり踏襲して作ることで、より親和性が高くなったと思います。

──ヒロアカ風にデザインしたオリジナルロゴのステッカーやキーホルダーもいいですよね。

「I」通常盤パッケージ展開図 © 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会(撮影:山田隆史)

「I」通常盤パッケージ展開図 © 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会(撮影:山田隆史)

藤原 こういうことを8%は思いついてやってくれるわけですよ。エンブレムの形の中に「ヒロアカ」のキャラクターがデザインされていたり、こんなのうれしいじゃないですか。

増川 ここまで喜ばせてもらっていいのかなって。

8% これもアニメ側に提案したら快諾してもらえた。こういう遊び心も含めてパッケージを作れたのは、リスペクトがちゃんと伝わってるからだと思います。

これから「I」と一緒に自分も成長していきたい

──「ヒロアカ」のエンディングテーマとして「I」という曲を作ったことには、改めてどんな手応えがありますか?

直井 最初に藤原くんが作ったデモを再生して0.何秒から今の今まで、ずっと楽しいんですよ。駆け抜けていくような感じがある。藤原くんが楽曲を聴かせてくれたその瞬間にパチンって音が鳴って、これがみんなに届くまで、ずっとあの曲が流れている。そんな感じで、本当にずっと楽しいです。

増川  今回のレコーディングはデモの段階からバンドで編曲して、半年間ずっと「I」と一緒に全てのことをしてきた感じです。

──先日、韓国のフェス「WONDERLIVET 2025」に出演したときにはこの曲を初披露したそうですが、いかがでしたか?

直井 めちゃめちゃ楽しかったです。ただすごく難しい曲で、リハの段階ではイヤだったんですよ(笑)。全員が超忙しくて、一瞬でも気を緩めるとコースアウトしてしまう。

増川 自分としては、「I」はそのときのマックス以上を出さないと演奏できない曲なんです。そこまで制作から半年かけて持っていく必要もあったし、もちろんレコーディングでもそのときの100%以上のベストを出さないとクリアできなかった。プレイヤーとしてのスキルを底上げしないと完成しなかったし、ライブで実演もできなかったので、とにかくメンバーが新鮮なものを見せてくれたし、自分自身もそうなれた感覚がありました。

 ライブではまだ全然余裕がないので。せっかく演奏したのに、お客さんの反応をあんまり見られなかったんです。この曲がどんなふうに聴かれているかを、これから「I」と一緒に自分も成長していって確かめていきたいと思います。

──藤原さんはいかがでしょうか。作った楽曲がこういうパッケージに仕上がったことについて、どんな実感がありますか?

藤原 ひとえにうれしいです。「ヒロアカ」のエンディングテーマを書かせてもらえるという光栄な事実に、まず本当に感謝しています。僕はエンディングのオファーをいただく前から、「ヒロアカ」のマンガを読んでいるときに勝手に脳内で鳴ってた音があったんです。かなり具体的にイメージしていた音をそのまま取り出して作品にできた。まさかそんな機会が来るなんて、ファンとして感無量です。そして、僕らの思いを全部汲んでくれて、こういうデザインを8%が上げてくれたこともうれしいです。この「I」というロゴもカッコいいんですよね。そこに「I」という曲について僕たちが思っていたことが視覚化されている。ロゴデザインから始まって、シングルのパッケージもポスターも、キーホルダーやバッジもそう。この曲を書く機会があったおかげで、こういうデザインが生まれたことを、すごくうれしく誇らしく思います。太田さんも「僕にとってヒーローってどういうものだろう」というアーティスト写真のコンセプトを考えてくれた。太田さんが撮ってくれた写真とか、8%がデザインしてくれたロゴとか、そういうものがものすごく自分たちの背中を押してくれます。そのすべてに本当に深く感謝しています。

<後編近日公開>
藤原基央ソロインタビュー
「I」で表現した「ヒロアカ」への熱い愛

プロフィール

BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にシングル「天体観測」が大ヒットを記録した。2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京・東京ドーム公演などでも話題を集める。2015年末には初めて「NHK紅白歌合戦」に出場した。2024年9月に10枚目のオリジナルアルバム「Iris」をリリースし、同月よりドーム、ホール、ライブハウスを巡る全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous」を開催。2025年12月にこのツアーの模様を収録した映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous at TOKYO DOME」と、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON」のエンディングテーマ「I」を収録したCDシングルを同時リリースする。