「BIGMAMAらしさ」を再構築する
──2015年2月には「The Vanishing Bride」をリリース。このアルバムはロマンチックさが散りばめられた「君がまたブラウスのボタンを留めるまで」的な要素を感じる1枚です。
金井 「ブラウス」で完成したと思っていたBIGMAMAらしさを再構築したアルバムっていう自己評価です。あのときより幸福感があるし、ちゃんと「荒狂曲“シンセカイ”」的なギラつきも「Flameout」で更新できた。「あのアルバムで完成しちゃったBIGMAMAらしさをリパッケージできた」という事実はすごく自信になりました。
──「ワンダーラスト」は打ち込みを初めて取り入れた曲ですよね。ここはBIGMAMAの可能性を広げた1つのポイントになるのかなと。
金井 この曲はリアドと相談して作っていきましたね。もともと僕らは疾走感のある音楽が好きだったし、今だからできるやり方でそれをやりたいとオーダーしたんです。それをリアド的に解釈したらこうなった。
リアド このビートを取り入れることを思い付いたとき、新しい感じの曲ができたなと思った。
柿沼 マニピュレーターを入れたのもこのアルバムが初めてだよね。それをきっかけにバンドの生楽器の音以外も取り入れるようになって、サウンドが変わっていった。
──SNSの反応を見ていると、ファンの方は打ち込みを取り入れたことに驚いていたようでした。
金井 僕らはちゃんとライブで熱量高くプレイできれば打ち込みもアリだなと思ってたんですけど、自分たちのノウハウとして持っていたメロコアのスピード感が生の楽器の音色じゃなくなることでお客さんの感じ方がこんなふうに変わるんだなと驚きました。自分たちとしては守備範囲が広がった瞬間だったなと捉えています。
東出 私たちにとって「The Vanishing Bride」の制作は、また1枚目のアルバムを作る感覚だったんですよ。チームが変わったこともあって、いろんなところに初期衝動を感じる1枚になったと思います。
──なぜここで“1枚目”を作ろうという気持ちに?
東出 「Roclassick2」の次だったからということもありますね。「Roclassick」のあとの「ブラウス」が名盤と言われて、そのときと同じ感覚だったんです。クラシックという足かせが取れて自由度が増す感覚と言うか。
リアド いろいろなサウンドに挑戦しました。今まで知ってた人はBIGMAMAの方向性が変わったと思うかもしれないけど、自分たちはそういうことをほとんど気にしてなかった。1枚目の作品を作るときにバンドのイメージを気にしないのと同じです。
柿沼 ライブを意識したアルバムだったっていうのも大きいかもしれないね。「君想う、故に我在り」でお客さんと距離が離れてしまって、その距離を「Roclassick2」で縮めていって、それに続くアルバムだから「The Vanishing Bride」はライブのどの位置で鳴るのがふさわしいかを、各曲について考えて作っていきました。
──「The Vanishing Bride」のリリースツアーはバンドにとって史上最長のツアーでした(参照:BIGMAMA史上最長ツアーが終幕、半年かけて探した“花嫁”はハリセンボン春菜)。このツアーを終えて、2015年9月にシングル「MUTOPIA」をリリースします(参照:BIGMAMA、7種そろうと「MUTOPIA」になるシングルジャケ)。
金井 「The Vanishing Bride」が当時の自分にとってパーフェクトな作品だったので、何かまた新しい要素を取り入れようと思って、アルバムが完成したあとはアヴィーチーやゼッドをよく聴いていたんです。それを自分なりに飲み込んで吐き出したものを作りたくてできたのが「MUTOPIA」でした。
柿沼 この曲を金井は「The Vanishing Bride」のツアーでやりたいって言ってて。まだアルバムの曲も披露してないのに(笑)。
金井 そうだったね。ライブをする場所によって歌詞を変えて歌うと地元の人が喜んでくれるだろうなって閃いて。ライブだけじゃなくてCDを買った人にもその特別感を感じてもらえたらうれしいなと思って、エリアごとに歌詞とジャケットを変えてリリースしました。
ライブ三昧の中で作った曲が独り歩きし始める
──デビュー10周年イヤーの2016年3月に「SPECIALS」をシングルでリリースしました。この年は「MAMonthly Special」と題して、学生時代の先輩であるグッドモーニングアメリカとの対バンライブ(参照:BIGMAMA、八王子の“実家”でグドモとツーマン「最高のスタートが切れました」)や盟友のUNISON SQUARE GARDENとの対バンライブ(参照:BIGMAMA、盟友ユニゾンと大阪で二夜連続ツーマン「こんな贅沢ないでしょ」)など、毎月ライブをやっていましたね。
金井 僕らのイベントに出てくれたバンドはどれもやっぱりすごく思い入れがあるし、十代の子たちと一緒に対バンできたのもうれしかったですね(参照:BIGMAMA、シャリラ&Little Cedarと迎えた10代限定ツアー最終公演)。2016年はやっぱり忙しかった分、得たものは大きかったけど、このサイクルのままやっていたら自分が破綻するなと思って。その中で「SPECIALS」っていう曲と、HYとのコラボアルバム「Synchronicity」を作りました。
──「SPECIALS」はファンとの関係を大切にしてきたBIGMAMAだからこそ歌えたテーマだなと思います。
金井 「こういうところはよくないと思うけど、こういうところは好きだよ。嫌いなところもあるけど特別なんだよ」っていうのはずっと歌いたかったことなんですよ。最近は曲が独り歩きしていて、「誰かと誰かが特別な関係だよ」って言うときに「SPECIALS」の歌詞を使って動画を作っている人もいるらしいんです。僕、それはすごくいいことだなと思ってるんですよ。僕と誰かの間にある“特別”だけじゃなくて、誰かと誰かの間に“特別”というものが生まれて、そのときにこの歌が浮かぶのであれば本望だなって。やっぱり目に見えるものにとらわれがちで、ライブでは盛り上がる曲をやろうとしてしまうんだけど、ここにきて「SPECIALS」っていい曲なんだなって自分でも思うし、そう言ってもらうことも多くて、この曲を作れてよかったなと思いますね。
──ベストアルバムの最後に収録されているのは新曲「(50)days of flower」です。すごく金井さんらしい歌詞ですよね。
金井 ベストアルバムにどういう新曲を入れようかなってすごく悩んだんですよ。10周年は物語性のある歌詞の曲がいいなと思ってこの曲をスタジオに持っていって、リアドが「サビをツービートにしよう」って提案してくれて、BIGMAMAの10年を凝縮した感じのある曲になったかなと思っています。僕はこれがベストに似合うと思ってるけど、聴く人にとってはわからないから僕と同じように思ってくれたらうれしいですね。
- BIGMAMA「BESTMAMA」
- 2017年9月6日発売 / UK.PROJECT / RX-RECORDS
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[2CD]
3240円 / RX-135~6
- DISC 1
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- We have no doubt
- Look at me
- CPX
- CHAIN
- Do you remember ?
- Neverland
- the cookie crumbles
- Cinderella~計算高いシンデレラ~
- 「それはきっと天使が長く勤まらない理由」
- "MISSION 481"
- Dowsing For The Future
- Paper-craft
- ダイヤモンドリング(2035/09/02)
- かくれんぼ
- I Don't Need a Time Machine
- No Way Out
- Lovescape
- 虹を食べたアイリス
- 走れエロス
- 荒狂曲“シンセカイ”
- DISC 2
-
- 秘密
- until the blouse is buttoned up
- #DIV/0!
- 最後の一口
- アリギリス
- 俯瞰show
- Mr. & Mrs. Balloon
- Jeffery Campbellのスケートシューズで
- 春は風のように
- 君想う、故に我在り
- Sweet Dreams
- Swan Song
- No.9
- alongside
- A KITE
- ワンダーラスト
- 神様も言う通りに
- MUTOPIA
- SPECIALS
- (50)days of flower
- BIGMAMA in BUDOKAN
- 2017年10月15日(日)東京都 日本武道館
- BIGMAMA(ビッグママ)
- 金井政人(Vo, G)、リアド偉武(Dr)、柿沼広也(G, Vo)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)からなる5人組バンド。2002年に東京・八王子で結成され、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2006年7月にミニアルバム「short films」をUK.PROJECT傘下のレーベル・RX-RECORDSから発表し、2010年10月には“ロック×クラシック”をテーマにしたコンセプトアルバム「Roclassick」を発売した。その後も彼らはコンスタントにリリースやライブツアーを重ね、2015年2月に6枚目のオリジナルアルバム「The Vanishing Bride」を発表。同年4月から10月にかけてキャリア最長のワンマンツアー「The Vanishing Bride Tour 2015 ~消えた花嫁を探せ!~」を開催した。デビュー10周年の2016年、現体制になって10周年の2017年は「BIGMAMAnniversary 2016~2017」と題したアニバーサリー期間とし、これまで以上に精力的に活動を行っていくことを発表。2017年3月に7thアルバム「Fabula Fibula」をリリース。9月に初のベストアルバム「BESTMAMA」を発表し、10月にはキャリア初の東京・日本武道館での単独公演「BIGMAMA in BUDOKAN」を行う。