バンド結成15周年のアニバーサリーイヤーを迎えた“ロック界の奇行師”アルカラが、ニューアルバム「KAGEKI」をリリースした。音楽ナタリーではこれを記念して、メンバー全員インタビューを実施。新作についてはもちろん、結成当時の懐かしい話なども含めてたっぷりと語ってもらった。
さらに特集の後半では、アルカラと親交があるアーティスト15組から寄せられた質問や相談、物申したいことを掲載。多くの仲間に愛されるバンドの魅力を浮き彫りにする。
取材・文 / 田山雄士 撮影 / 西槇太一
浸るよりはむしろ「ここからや!」
──結成15周年おめでとうございます。
全員 ありがとうございます!
──15周年を迎えた日は何をしてましたか?
稲村太佑(Vo, G) 結成記念日の前夜に、行きつけのサウナに行こうとしたらたまたま休みで「うわっ、休みやがってー!」と思ってるうちに結成日の7月26日を迎えてました(笑)。
下上貴弘(B) 結成前日にみんなでスタジオに入ったとき、「明日で15周年」って話になったんやけど、「あ、そうやったなあ」くらい忘れてました。
疋田武史(Dr) 俺は親父からメールが来ましたね、「15周年やな」って(笑)。親父は、毎日仕事終わりにアルカラのホームページをチェックしてるらしいんで。
田原和憲(G) 厳密に言うと、僕個人としては15周年はあと半年先なんですよ。
──田原さんは最後に加入した形ですもんね。
田原 そうです。だから、今は便乗してる状況(笑)。
稲村 誰もそんなん気にしてないわ! ま、新しいアルバムを出させてもらったり、お祝いの言葉をいただいたり、地元の神戸で身内イベント(7月22日に開催された「ア・ル・カ・ラ 15周年記念『親族的構造改革の夜明け』」)みたいなんをやったり、ちょっとずつ実感は湧いてます。とは言え、浸るよりはむしろ「ここからや!」っていう心境ですね。
──15年前の初ライブのことは覚えてますか?
稲村 覚えてますよ。持ち曲が4曲しかなかったな。しかも、できたてホヤホヤのやつをすぐライブでやった感じ。
下上 ドラムの「ダカドンッ!」を合図に「ジャーン!」って鳴らして、全員がズイッと前に出るのだけは決めてたな。あれ、めっちゃ覚えてる(笑)。
稲村 それで一気にせり出すぞって。そんなことぐらいしか考えてなかった。
疋田 そうそう!(笑)
稲村 僕と下上がやってた前身バンドがそこそこ人気あったんですよ。ART HOUSEではコンスタントに動員できる、いわゆる“優良企業”やったもんな。
下上 ライブハウスが使いやすいバンド。
稲村 解散ライブなんて、人パンパンで入りきらんかったし。その延長で「次、アルカラっていうバンドやりますんでよろしく!」って感じやったから、初回はご祝儀的にまあまあ集まるやろと思ってたんですね。そしたら、アルカラの初ライブはお客さん6人やった。
出鼻を挫かれ「俺らこのままじゃヤバいんちゃう?」
──友達に声をかけたりしなかったんですか?
稲村 しなかったですね。「稲村が新しいことするんやから、そら来るやろ!?」ってタカくくってて(笑)。いきなり出鼻を挫かれた。
疋田 何年か前、ART HOUSEでライブやったときにそのことを聞いたな。
稲村 10周年ライブのときくらいか。「あのときの6人、ここにおる?」って会場で聞いたら、手が挙がったな。
疋田 1人じゃなくて、何人かおった(笑)。
稲村 ありがたい。出鼻を挫いていただけたのもよかったと思いますよ。「俺らこのままじゃヤバいんちゃう?」ってなれたから。
下上 先のライブもすでに4、5本決めちゃってたし。
稲村 梅田バナナホールな。
疋田 バナナホールがライブ2本目やったっけ?
稲村 うん。テーブルと椅子がフロアにズラーッと並んでる中に数人だけおる感じで、「こういうの待ってたで」って思った。
──待ってた?
稲村 当時のバンドマンはお客さん入ってないのが当たり前で、床に向かってやる、PAさんとライブする感覚なんですよ。そういうほうが燃える。人少ないからこそ、絶対そいつだけには「いい!」って言わしたろ、みたいな。
下上 ただすぐその状況に慣れちゃって、お客さんいようがいまいがやることは同じと言うか。逆に言うと、なまじお客さんが入ってると手応えがないけど、いないほうがシビアに自分たちを省みられて、なんか盛り上がる(笑)。
疋田 少ない中で2、3人が反応してくれるほうが「届いてるんやな」ってわかりやすいもんな。
稲村 そんなんザラでしたね。枚方ブロウダウンでもライブしたなあ。お客さんは入らへん、出るバンドは少ない、クーラーは壊れてる中で「今日はありがとう!」とか言いつつ、「何がありがとうやねん! 苦行やないか」って思ってた。まったく生産性はなかったんですけど、やたらとインパクトがあったし、今もこんだけ覚えてるから、僕ら的にはすごく価値があるライブだったんだと思います。
──その経験がバンドの原動力になっているわけですか?
稲村 そこまでカッコいいもんではなく、単純におもろい。ただ、そのおかげかわからないですけど、お客さんが来てくれることに慣れてきてしまったり、それありきでMCを考えてる自分に気付いたりすると、ものすごく反省しますね。「今の俺、アカンなー!」ってなって、また立て直す。最近でもよくありますよ。
──田原さんは集客が厳しいときのライブを知らないんですか?
田原 いや、加入した頃もまるで人気なかったです。僕が入ったのは2003年の2月で、(LIVE SQUARE) 2nd LINEからかな。
稲村 2月14日やったと思う。ドーナツ買ってきてくれたやん(笑)。
下上 そんなんはなぜか覚えてる。
田原 ART HOUSE店長の西本さんに「ギター探してるバンドいたら声かけてください」って相談してたんですけど、実際アルカラに入ってみたら「どうすりゃええんやろ」と。みんな人見知りやし、なじむのに時間かかりましたね。
下上 4人共、人見知りやからな(笑)。
稲村 結成してしばらく……東京に出てくるまでは大変やったよな。初めての土地に行ってもガラガラやから、対バン相手にどんだけ気に入ってもらえるかが勝負で。お客さんが入ってないゆえに、競演者と熱くつながれたのはありますね。千葉のK's Dreamとかでいろんなバンドとつながっていったり、それを積み重ねてきた結果が「ネコフェス」(アルカラ主催のサーキットイベント)なんですよ。
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結成以来最大の事件は?
- アルカラ「KAGEKI」
- 2017年7月26日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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完全生産限定盤 [CD+グッズ]
4500円 / VIZL-1194 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64811
- 収録曲
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- 3017
- HERO
- キリギリスのてんまつ
- 如月に彼女
- さ・あ・な
- コンピュータおじさん
- ひそひそ話
- LET・IT・DIE(Album ver.)
- 箱
- ピーターパンと夢の中
- 銀河と斜塔
- さすらい
ツアー情報
- アルカラ「KAGEKIにやってくれないかチュアー」
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- 2017年10月27日(金)千葉県 K'S DREAM
- 2017年11月1日(水)宮城県 仙台MACANA
- 2017年11月2日(木)岩手県 Club Change WAVE
- 2017年11月24日(金)北海道 苫小牧ELLCUBE
- 2017年11月25日(土)北海道 Sound Lab mole
- 2017年11月30日(木)香川県 DIME
- 2017年12月1日(金)岡山県 PEPPERLAND
- 2017年12月3日(日)広島県 SECOND CRUTCH
- 2017年12月5日(火)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年12月14日(木)石川県 vanvanV4
- 2017年12月15日(金)新潟県 CLUB RIVERST
- 2018年1月6日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年1月8日(月・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2018年1月27日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- アルカラ
- 稲村太佑(G, Vo)、下上貴弘(B)、田原和憲(G)、疋田武史(Dr)の4人からなるロックバンド。2002年7月に結成され、2003年2月に現メンバーとなる。2008年に1stアルバム「そうきたか」を発表。2011年7月にアルバム「こっちを見ている」でメジャーデビューを果たす。2013年には地元・神戸を舞台にしたサーキットイベント「ネコフェス」を主催し、以降毎年実施している。また9月にリリースしたアルバム「むにむにの樹」を携えて行った全国ツアーでは全25公演で10000人を動員した。その後もコンスタントにリリースを続け、2016年11月にアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「炒飯MUSIC」を収録したシングルを発表。2017年7月には結成15周年を迎え、同月にアルバム「KAGEKI」をリリースした。自らを「ロック界の奇行師」と名乗って活動中。