BIGMAMAらしさを模索する
東出 昔back numberにもツアーに出てもらったよね。
柿沼 あー、そうだった。「Love and Leave」のレコ発ツアーで前橋DYVERでやったときに出てもらったよね。
金井 back numberはジャンルは違えどバンドマンとしては同じ泥水をすすってきた感覚があるバンドだよね。BIGMAMAはこの時期、メロコアのカルチャーの中でバイオリニストがいることでどう差別化していくか、戦っていくかに重きを置いて活動していて、あえてそれ以外のジャンルのバンドともたくさん対バンしてた。そのおかげで僕は日本語歌詞を書くバンドをカッコいいって思えるようになって、2枚目のフルアルバム「Dowsing For The Future」で初めて日本語の歌詞の曲を作った。
柿沼 俺らの周りには演奏がうまいバンドが多かったよね。で、俺らは下手なりにセンスで勝負して、いろんなバンドのいいところを勝手に吸収していって。この年のライブは本当に印象深くて打ち上げまで覚えているものが多い。みんなでそれぞれのバンドの歌で替え歌を作ってイッキ飲みを煽ったりしてね……俺らはなんの曲だっけ?
安井 「CHAIN」だよ。
柿沼 そうだ(笑)。それが本当に面白かったんだよね、当時は。
リアド 今のメンバーがそろって「Love and Leave」をリリースしたのは2007年。俺らが大学4年生のときだったね。
金井 その翌年くらいからthe telephonesをはじめ、ジャンルに特化したアーティストが身の回りでブレイクスルーしていったんだよね。この頃はUNISON SQUARE GARDENと一緒にツアーを回っていて、同い年で完成度の高いものをやっているバンドがいるということに刺激を受けた。どんどん周りのバンドがブレイクしていく様子を見ていて、僕は「速いビートだけで勝負していていいの?」「自分たちはちゃんと好きな音楽を全部やれてるのか?」って自分に問いかけて、その結果として「Dowsing For The Future」を完成させることができた。
バンド内とバンドを取り巻く状況のギャップに悩む
──2009年にリリースされた「and yet, it moves ~正しい地球の廻し方~」には今でもライブで披露されることが多い「かくれんぼ」や「ダイヤモンドリング」が収録されています。
金井 このアルバムのツアーの頃、さらにいろんなジャンルのバンドと対バンするようになってきたんです。この頃は売れようと思ってがんばっていたわけじゃなくて、必死に自分たちをどう磨いていこうかと、バンドの内側を見ていました。
──自分たちを見つめ直して、どういう発見がありましたか?
金井 当時僕はBIGMAMAがメロコアやエモというジャンルに括られることに愛憎があったんです。そのジャンルはもちろん好きだけど、そこだけにとどまってちゃダメだなと。メロコアやエモを武器として兼ね備えたロックバンドでありたいという自我が目覚めましたね。バンド全体で「自分たちにしか作れないものを作りたい」っていう欲がどんどん出てきて、1曲の中で物語を作り上げていくことがほかのバンドにはない、BIGMAMAの強みになり得るのではないかと思い始めた頃です。
──日本語で歌詞を書き始めたことなど、金井さんの作風に変化があったことについてほかの皆さんはどう思っていたんですか?
柿沼 日本語で初めて作った曲は「Paper-craft」だったんですけど、すごくナチュラルで、むしろ英語よりいいじゃんと思ったくらいです。金井は言葉の選びがうまいなと思いました。物語性のある歌詞については、金井の世界観で作り上げていくのはいいけど、俺はもうちょっと金井のストレートな言葉を聞きたいと思っていました。
──なるほど。「"MISSION 481"」は歌詞もそうですけど、タイトルでも遊んでいますよね。歌詞に下ネタを忍ばせ始めたのもこの頃ですか?
安井 そうですね。しかも忍ばせてカッキーに歌わせるというね(笑)。
柿沼 だから俺が変態扱いされて。
東出 カッキーがセクシーになってきたのはこの時期かもしれないね。
リアド 確かに(笑)。
安井 実は「Dowsing For The Future」をリリースした頃、俺すごいスランプだったんですよ。全然フレーズが思い浮かばなくて。
柿沼 俺もその頃スランプだった。
金井 僕もそうだったから、5人中3人がスランプだったということですね(笑)。でもBIGMAMAの動員がグンと増えたのはそのスランプ期なんですよ。だからバンドの内側と外側でギャップがあって。バンド的にはすごく苦しい時期だった。
「Roclassick」という武器を手に入れる
──そんな苦しい時期を経て、2010年にクラシックのフレーズを取り入れたコンセプトアルバム「Roclassick」がリリースされました。今作は2作目が出るほどに評価の高いアルバムでしたが、このアイデアはどういったところから?
金井 「Would you marry me?」のフレーズのあとに「カノン」が流れてきたら歌わずとも、プロポーズが成功したって誰しもが解釈できるんじゃないかなと思って、「カノン」をフレーズを取り入れた「Cinderella~計算高いシンデレラ~」をライブでやったときにすごくリアクションがよかったんですよ。それで、自分たちの中で「BIGMAMAにしかできないことをやりたい」「ライブで誰でもわかりやすいということを追求したい」という気持ちを反映できるのはこのアイデアなのではないかと閃いて、これを武器として研ぎ澄ますことにしました。「Roclassick」の曲が僕らが立つステージを大きくしてくれたことは確かです。
東出 「Cinderella~計算高いシンデレラ~」はライブで初披露したときに大合唱が起きたんだよね。言葉の通じない韓国でも同じことが起きて、その光景に感動して、私たちはものすごい武器を手に入れたんだなって感じた。
安井 本当に「Roclassick」という作品ができたのは、自分たちにとってターニングポイントだったなと思います。俺個人としてはクラシックのフレーズをベースで弾くなんて今までしなかったし、そういう部分でも各々スキルアップできたから。
次のページ »
2011&2012年:音楽的な転機を迎える
- BIGMAMA「BESTMAMA」
- 2017年9月6日発売 / UK.PROJECT / RX-RECORDS
-
[2CD]
3240円 / RX-135~6
- DISC 1
-
- We have no doubt
- Look at me
- CPX
- CHAIN
- Do you remember ?
- Neverland
- the cookie crumbles
- Cinderella~計算高いシンデレラ~
- 「それはきっと天使が長く勤まらない理由」
- "MISSION 481"
- Dowsing For The Future
- Paper-craft
- ダイヤモンドリング(2035/09/02)
- かくれんぼ
- I Don't Need a Time Machine
- No Way Out
- Lovescape
- 虹を食べたアイリス
- 走れエロス
- 荒狂曲“シンセカイ”
- DISC 2
-
- 秘密
- until the blouse is buttoned up
- #DIV/0!
- 最後の一口
- アリギリス
- 俯瞰show
- Mr. & Mrs. Balloon
- Jeffery Campbellのスケートシューズで
- 春は風のように
- 君想う、故に我在り
- Sweet Dreams
- Swan Song
- No.9
- alongside
- A KITE
- ワンダーラスト
- 神様も言う通りに
- MUTOPIA
- SPECIALS
- (50)days of flower
- BIGMAMA in BUDOKAN
- 2017年10月15日(日)東京都 日本武道館
- BIGMAMA(ビッグママ)
- 金井政人(Vo, G)、リアド偉武(Dr)、柿沼広也(G, Vo)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)からなる5人組バンド。2002年に東京・八王子で結成され、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2006年7月にミニアルバム「short films」をUK.PROJECT傘下のレーベル・RX-RECORDSから発表し、2010年10月には“ロック×クラシック”をテーマにしたコンセプトアルバム「Roclassick」を発売した。その後も彼らはコンスタントにリリースやライブツアーを重ね、2015年2月に6枚目のオリジナルアルバム「The Vanishing Bride」を発表。同年4月から10月にかけてキャリア最長のワンマンツアー「The Vanishing Bride Tour 2015 ~消えた花嫁を探せ!~」を開催した。デビュー10周年の2016年、現体制になって10周年の2017年は「BIGMAMAnniversary 2016~2017」と題したアニバーサリー期間とし、これまで以上に精力的に活動を行っていくことを発表。2017年3月に7thアルバム「Fabula Fibula」をリリース。9月に初のベストアルバム「BESTMAMA」を発表し、10月にはキャリア初の東京・日本武道館での単独公演「BIGMAMA in BUDOKAN」を行う。