音楽ナタリー Power Push - BIGMAMA

絵本作家の顔を持つミュージシャンと芸人の対話

BIGMAMAが7枚目のアルバム「Fabula Fibula」をリリースした。今作の特徴は楽曲それぞれに当てはまる架空の街をイメージして作られたこと。街ごとに設けられたルールに則って書かれた歌詞はファンタジックで、まるでショートストーリーを束ねた短編集のような作品に仕上がっている。

音楽ナタリーでは今作の発売を記念して、金井政人(Vo, G)とプライベートでも親交のある西野亮廣(キングコング)による対談を企画。これまでに2冊の絵本を発表してきた金井と、絵本「えんとつ町のプペル」が話題の西野に、作品に対する思いや2人が思う音楽の魅力について話を聞いた。

取材・文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介

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二人の出会いは「ガリゲル」

──お二人は、西野さんがMCを務める番組「ガリゲル」にBIGMAMAが出演したことがきっかけで知り合ったそうですね。

金井政人(BIGMAMA) 僕、どんな音楽番組より「ガリゲル」に出てます(笑)。

左から西野亮廣(キングコング)、金井政人(BIGMAMA)。

西野亮廣(キングコング) 確かに。全然音楽の企画じゃないときも普通に出てますよね(笑)。うちの番組プロデューサーがBIGMAMAのことを大好きなんですよ。で、番組スタッフもみんな大好きで、僕もプロデューサーから「超かっけえのがいる!」って薦められて、BIGMAMAが好きになりました。

金井 「ガリゲル」に僕がこんなに出るようになったのは、ここ2、3年ですよね。去年は番組のライブ(2016年3月開催の「ガリゲル音楽祭 おとあい5」)でコラボもさせていただいて。

西野 ステージで「MUTOPIA」を歌わせてもらいましたね。BIGMAMAのファンは金井さんの歌声を聴きたくて来てるのに、自分みたいなもんが横から歌うわけですから、それはもうちゃんと向き合って歌わせていただきましたよ。

──西野さんは、もともと音楽がお好きだったんですか?

西野 超好きです。やるよりも聴くほうが好きですけどね。BIGMAMAはライブがカッコよくて。もうとにかくお客さんがノッてるし。あとね、登場の仕方がちょっとニクいんですよね。僕は高校生の頃THEE MICHELLE GUN ELEPHANTをよく聴いていて、彼らはライブのときに「ゴッドファーザー」の「愛のテーマ」を流しながら登場するんですよ。あれがむちゃくちゃカッコよくて。BIGMAMAのライブはあの感じにすごい近くて気持ちが高ぶりました。

──BIGMAMAの入場SEはベートーヴェンの「交響曲第9番」ですよね。

金井 そうです。ロックバンドにバイオリニストがいたり、クラシックの要素を散りばめた楽曲をやっているので、それを登場から感じてもらえたらと思って。

西野 なるほど。うまいなあ。あの演出、すごくキュンときちゃいました。

アイデアで勝負するしかない

──西野さんは「Fabula Fibula」を聴いてどんな印象を持ちましたか?

西野 作業量がすごいんじゃないかなと思いました。まず街を作るところからじゃないですか。13個の街を1回作ってから曲にしていくわけですよね?

金井 そうですね。ことの始まりは「MUTOPIA」っていう2年前にリリースした曲で。その曲は2015年の1月に目的なく入ったスタジオで「今のギターのフレーズがよかったから、バイオリンでユニゾンして」みたいな感じでセッションしているうちに完成した曲なんです。その曲ができあがったとき、誰にダサいと言われようとも「これは音楽の楽園の歌だ。ミュージック×ユートピアで『MUTOPIA』だ」って閃いて、それが「Fabula Fibula」というアルバムの構想の始まりになりました。

西野 へー! 面白っ!

金井 僕は僕なりにいろんなミュージシャンに対してライバル心があって。そういった中で僕らの音楽を聴いてくれる人たちに、自分が一番好きでいてもらえる理由をどうやったら作れるのかを考えたら、アイデアで勝負するしかないなと思ったんです。

西野 うんうん。

左から金井政人(BIGMAMA)、西野亮廣(キングコング)。

金井 「MUTOPIA」ができてから、“音楽の楽園”っていうものがあるならその逆もあるはずだと思って、曲に対して場所をイメージするようになっていったんです。そこで今回僕が取り入れたアイデアは、場所やシチュエーション、ルールみたいなものをイメージして、それを曲に落とし込むこと。それが自分なりのスペシャルワンになるためのアイデアだったんです。例えば1曲目の「ファビュラ・フィビュラ」。僕にとって嘘を付くことは創作活動をするうえですごく重要なことなんですけど、もちろん嘘を付くと同時に後ろめたさも感じていて。それから「じゃあこの街では嘘を付いた人に罰を与えよう。その罰を飴玉にしよう」「嘘を付いた人に不幸味の飴玉を舐めさせる街っていう設定にしよう」と曲を作っていったんです。そういうものが、この2年間の中でちょっとずつできあがっていって。

西野 曲を思いっきりファンタジーにしちゃうってのは面白いですね。

金井 例えば絵本にもなった「Merry-Go-Round」の根本はダジャレだったんですよね。メリーゴーラウンドを馬目線で考えて生まれた曲なんですけど、1行目の歌詞にある「背中の杭が痛いの」っていうの言葉を最初に思い付いて、背中の「杭」がなくなって、後悔の意味での「悔い」がなくなるっていうストーリーの曲を書きたいとずっと思っていたんです。

西野 もう小説家さんっすよね。考え方が。作家さんがたまたま歌えたみたいな。「ファビュラ・フィビュラ」の話で言うと、「人の不幸は蜜の味」という言葉を飴玉として表現しているわけでしょう。直接的な言葉のほうが共感されやすいはずなのに。

金井 野球で言うとものすごい速い球が投げられる人がいれば、カーブが得意な人もいるように、やっぱり適性があると思うんですよね。声がまっすぐ飛ぶ人ならそういう直接的な表現が向いているかもしれない。僕はそういうのじゃないってひねくれちゃったのかも。

西野 僕もひねくれてんのかな。共感される表現だとわかって使うのって、なんか若干ドーピングしてるなって思っちゃうんですよね。「えんとつ町のプペル」で言うなら、えんとつ町なんて場所はないし、ゴミ人間なんていない。もうちょっと身近にあることを描いたほうが共感されやすいのをわかってるのに、なんかストレートな表現を使えないんですよ。それを音楽で表現するのはすごい大変なことだなって思うんです。

金井 自分の作品を何回聴いてもいろんな楽しみ方ができるようにしたいっていう思いがあるから自然とそうなっているのかもしれないです。棺桶にまで持っていきたい作品って言えるかどうか、そのこだわりがどんどんこういう執着に変わっていったんだと思います。

BIGMAMA ニューアルバム「Fabula Fibula」 / 2017年3月22日発売 / RX-RECORDS / UK.PROJECT
初回限定盤 [CD+DVD] / 5184円 / RX-127
通常盤 [CD] / 3024円 / RX-128
CD収録曲
  1. ファビュラ・フィビュラ
  2. MUTOPIA
  3. ヒーローインタビュー
  4. Make Up Your Mind
  5. BLINKSTONEの真実を
  6. Merry-Go-Round
  7. Weekend Magic
  8. Heartbreak Holiday
  9. 737 3rd Ave, RT 10017
  10. レインコートになれたなら
  11. ALL RIGHT
  12. SPOON DIVING
  13. SPECIALS(FFver)
  14. 愛はハリネズミのように
初回限定盤DVD収録内容

「THE BEGINNING 2007.02.10」

  1. look at me
  2. Weekend Magic
  3. CPX
  4. #DIV/0!
  5. Swan Song
  6. Neverland
  7. little cloud
  8. Merry-Go-Round
  9. ワンダーラスト
  10. 神様も言う通りに
  11. CHAIN
  12. Do you remember?
  1. 春は風のように
  2. A KITE
  3. 君想う、故に我在り
  4. Make Up Your Mind
  5. 秘密
  6. SPECIALS
  7. 荒狂曲“シンセカイ”
  8. ファビュラ・フィビュラ
  9. Sweet Dreams
  10. MUTOPIA
  11. until the blouse is buttoned up

BIGMAMA「ファビュラ旅行記 2017」

2017年5月14日(日)東京都 Zepp Tokyo
2017年5月27日(土)福岡県 DRUM Be-1
2017年6月11日(日)宮城県 Rensa
2017年6月17日(土)香川県 高松MONSTER
2017年6月18日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2017年6月24日(土)大阪府 大阪なんばHatch
2017年6月25日(日)愛知県 Zepp Nagoya
2017年7月1日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2017年7月8日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
2017年7月9日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE

BIGMAMA in BUDOKAN

2017年10月15日(日)東京都 日本武道館
BIGMAMA(ビッグママ)
BIGMAMA

金井政人(Vo, G)、リアド偉武(Dr)、柿沼広也(G, Vo)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)からなる5人組バンド。2002年に東京・八王子で結成され、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2006年7月にミニアルバム「short films」をUK.PROJECT傘下のレーベル・RX-RECORDSから発表し、2010年10月には“ロック×クラシック”をテーマにしたコンセプトアルバム「Roclassick」を発売した。その後も彼らはコンスタントにリリースやライブツアーを重ね、2015年2月に6枚目のオリジナルアルバム「The Vanishing Bride」を発表。同年4月から10月にかけてキャリア最長のワンマンツアー「The Vanishing Bride Tour 2015 ~消えた花嫁を探せ!~」を開催した。デビュー10周年の2016年、現体制になって10周年の2017年は「BIGMAMAnniversary 2016~2017」と題したアニバーサリー期間とし、これまで以上に精力的に活動を行っていくことを発表。2017年3月に7thアルバム「Fabula Fibula」をリリースし、これに伴う全国ツアーを5月より行う。さらに10月にはキャリア初の東京・日本武道館での単独公演「BIGMAMA in BUDOKAN」を控えている。

西野亮廣(ニシノアキヒロ)

兵庫県川西市出身のお笑い芸人。1999年に梶原雄太とお笑いコンビ・キングコングを結成した。絵本作家や小説家としての顔も持ち、これまでに小説、エッセイ、ビジネス書を1冊ずつ、絵本は5冊出版している。クラウドファンディングを利用し、2016年10月に刊行した絵本「えんとつ町のプペル」は、発行部数27万部を超える大ヒット作となった。