音楽ナタリー Power Push - HIKAKIN&SEIKIN×小室哲哉

異色のコラボ実現!TK版「YouTubeテーマソング」ができるまで

「小室哲哉? 古いね」って言われないように

──では、ここからは楽曲のお話を。リアレンジの作業はどのように進めていったのですか?

小室 EDMはそれこそYouTubeのようにすごく現代的なものなんだけど、流行り廃りのスピードも速くて。だから、今流行っている音でアレンジすると、もう夏頃には「古いね」って言われる可能性があるんです。だからシンプルにしてあげたいなっていう思いがありました。ちょっとでも長持ちするようにね。あと、もともとの曲にある明るい雰囲気はなくしたくなかったのと……「小室哲哉? 古いね」って言われないものにしようと(笑)。そのモチベーションもあったね。

左から小室哲哉、HIKAKIN、SEIKIN。

HIKAKINSEIKIN あはははは(笑)。

──お二人から小室さんにリクエストはあったんですか?

小室 何度もやりとりしましたよ。

HIKAKINSEIKIN ああ、すいません!

小室 すごくこだわりがあるんだなあと思って。いや、実は難しいんです。ミュージシャン同士だと“共通言語”があるから意思疎通はスムーズに行くんだけど、彼らはミュージシャンではないので「こういう雰囲気で」っていうように空気感を伝えてくれるんですよね。その空気感をどうやって音に落とし込むか、っていうのは“翻訳”をするような感じというか。例えば「明るくして」って言われても「音楽的に明るいってどういうこと?」って。まあ、何をすれば明るくなるのかを考えるのは僕らの仕事だから僕らがわかればいいことなんですが、思いを理解することが一番大変でしたね。

SEIKIN 一度お会いしてイメージを伝えたあとは、ロンドンでアレンジの作業をやっていただきました。

小室 結果、ボーカル以外のトラックは全部入れ替えましたね。

SEIKIN ああ……そんなにやっていただいたんですね。でも本当に、曲が生まれ変わりました。

HIKAKIN もう、毎回アップデートされて戻ってくるのが本当に楽しみでした!

SEIKIN ラフの時点で車の中でかけて聴いてましたもん(笑)。

百戦錬磨の力を感じた

──完成した曲を聴いたときの感想を教えてください。

HIKAKIN

HIKAKIN 僕らが雰囲気でしか希望を伝えられないのに、この仕上がり……本当に、小室さんの百戦錬磨の力を感じました。僕らには聴き取りきれないような細かいこだわりもいっぱい詰まっていると思うし……。

SEIKIN 間奏に小室さんらしさが詰まっているから、僕は特にそこを聴いてほしい。若い世代の皆さんにも絶対伝わると思う。

小室 うれしいね。そう、間奏はAとB、2つのバージョンを提案したんです。Bのほうは「もう1パターン作ってみよう」と、朝起き抜けに考えて作ったほうなんですけど、そっちを選んでくれたね。

HIKAKINSEIKIN そうだったんですね! 僕ら即「Bがいい!」ってなったんですよ。

小室 モチベーションなのかな。妥協したくなくて、「もう1つ聴いてもらおう」っていう気持ちになって、追加でBを作ったんです。それがよかったんだね。

SEIKIN うれしいですね……。

──ちなみに小室さん、シンガーとしての2人の技量はいかがですか?

HIKAKIN ああ! それはちょっと……!(笑)

小室 倍音もしっかり出ている、いい声だと思いますよ。しっかりした声質だからトラックも持つし、もっとうまくなると思います。いろいろなジャンルの曲をやったらいいですよ。あと、2人共いろんなものを作ってるから、作詞なんかもうまくできるんじゃないかな?

そんな指摘しょっちゅうありました

──「YouTubeテーマソング」は前向きなメッセージにあふれた楽曲ですね。歌詞についてはいかがですか?

小室 サビの「YouTube、YouTube」っていうフレーズがやっぱり頭に残るけど、AメロBメロの歌詞もいいですから。

SEIKIN ああ、これはうれしいなあ!

──お二人は、この曲でどういったことを伝えようと思ったのですか?

SEIKIN もう本当に、当時言いたかったことを並べたという感じです。専門的に見るとすごく浅い歌詞かもしれないけど、でも僕らはストレートにしか伝えることができないから。

HIKAKIN そうそう、「YouTube」の言い方にはちょっと試行錯誤がありました。英語の発音ではなく、日本人の言う「ユーチューブ」っていう、平坦な発音のまま歌っているんですけど……。

SEIKIN

SEIKIN たまに指摘されるんです。「発音がおかしい」って。でもこちらのほうが子供たちも歌いやすいと思うし、結果よかったと思う。

小室 僕なんか、そんな指摘しょっちゅうありましたから。

HIKAKINSEIKIN ええ!

小室 どれだけ英語圏の人から言われたかわからないですよ(笑)。文法も、例えばglobeの「Feel Like dance」は正確には「Feel Like dancing」だろう、とかね。そんなのたくさんあります。

SEIKIN 英語の歌詞書くの、怖いんですよ……。

小室 でも、最近は洋楽でもスラングをいっぱい使っていたりするから、歌詞は「なんでもOK」みたいな風潮になってますよ。文法とか、もう関係ないから気にしないのが一番だね。

HIKAKIN&SEIKIN「YouTubeテーマソング-Tetsuya Komuro Rearrange-」 / 2月17日配信開始
「YouTubeテーマソング-Tetsuya Komuro Rearrange-」
収録曲
  1. YouTubeテーマソング-Tetsuya Komuro Rearrange-
  2. YouTubeテーマソング-Tetsuya Komuro Rearrange-(Karaoke Version)
  3. YouTubeテーマソング-Tetsuya Komuro Rearrange-(Instrumental)
HIKAKIN(ヒカキン)

新潟県出身のYouTuber。高校生の頃にYouTubeへの投稿を始め、「スーパーマリオブラザーズ」の音楽をヒューマンビートボックスで表現した「Super Mario Beatbox」の動画が世界中で話題となる。2013年にはAerosmithのツアーに参加し、シンガポール公演および大阪公演でビートボックスを披露した。YouTubeでは日常の“おもしろいもの”を独自の視点で紹介する「HikakinTV」やゲーム実況チャンネル「HikakinGames」など4つのチャンネルを運営しており、チャンネル総登録者数は国内で1位。

SEIKIN(セイキン)

新潟県出身のYouTuber。HIKAKINの2才上の兄にあたる。「SeikinTV」「SeikinGames」の2つのチャンネルを運営。自身が作詞作曲を手がけ、HIKAKINのメインチャンネル「HikakinTV」で公開したMV「YouTubeテーマソング」は再生回数4300万回を超える人気作品となった。2015年に初のソロシングル「Just Do It Now」をリリース。2016年には2ndシングル「Keep Your Head Up」を発表する。最近ではYouTubeのみならずテレビCM出演や声優デビューも果たし、活躍の場を広げている。

小室哲哉(コムロテツヤ)

1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、翌年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花させた。1993年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒットを記録した。2010年に作曲家としての活動を再開し、AAA、森進一、超特急、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供している。