2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニングテーマ「明日へのbrilliant road」で、キングレコードからメジャーデビューを果たしたangela。音楽ナタリーではデビュー15周年を記念して、angelaの魅力に迫る特集記事を計3回にわたって展開している。
ベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」の発売タイミングに合わせて掲載される2回目の特集では、活動初期に路上ライブをしていたangelaに声をかけたキングレコードのプロデューサー・中西豪とangelaの対談を企画。15年に渡って2人に寄り添い続けてきた中西の視点から、angelaがアニメ業界から重宝され続けている理由に迫る。また3人にはベスト盤の収録曲をもとにangelaのターニングポイントになった曲を挙げてもらうなど、15年のキャリアを振り返るトークを展開してもらった。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 塚原孝顕
- angela デビュー15周年特集
angelaが道端でサラリーマンを躍らせていた
──前回のインタビューで、KATSUさんはangelaを「道端に生えていたよくわからない草」に例え、それをキングレコードの人が「周りの土ごと掘り返して鉢に植えたら変な花が咲きました」というお話をされていました(参照:angela デビュー15周年特集 第1回「SURVIVE!」インタビュー)。
KATSU(G, Key) はい。
──その「よくわからない草」をキングレコードに持ち帰った方が中西さんだとお聞きしたのですが、angelaのどこに惹かれたんですか?
中西豪 2002年のとき、僕は29歳だったんですけど、当時、大ヒットアニメのプロデューサーとしてスターチャイルドの絶対的覇権を握っていた上司から「来年4月の新アニメをお前が担当しろ」と言われていて。そこで僕は彼に「主題歌は自分でやらせてください」と進言したんですよ。今だったら当たり前の話なんですけど、当時のスターチャイルドはその上司がなんでも決めていたので、その一言に対して「よくそんなことが言えたな」と。
atsuko(Vo) 書けるの? ここの部分書けるのかな?(笑)
中西 そうしたら「やるんだったら、オリコンの15位以内に入らないとクビだ」と言われ(笑)。さあ、どうしたもんかなといろいろと悩んで行き詰まっていた時期、僕は新宿アルタ前の果物屋さんのところで信号待ちをしてたんです。そうしたら突然、大音量で音楽が流れてきて。信号を渡った先のステーションスクエアでatsukoさんとKATSUさんが路上ライブをし、現マネージャー兼事務所社長の松浦(珠樹)さんがフライヤーを配っている場面に遭遇したんです。その周りを30~40人ぐらいのお客さんが囲んでたんですけど、atsukoさんとKATSUさんでその人たちを踊らせてるんですよ。「はい、右手挙げて。左手挙げて」って。
atsuko 振り付けの練習をやらせてたんです。ストリートライブなのに。
中西 その光景が衝撃的で、もう、自分の悩みなんかホントにちっぽけなものだったんだって……。
atsuko いやいや、中西さんのお仕事のほうが重要ですよ(笑)。
KATSU たまたまその日は新宿だったんですけど、やっぱりそこを行き交う人は仕事帰りのサラリーマンが圧倒的に多くて。会社で上からは押し潰され、下からは突き上げられ……っていう人たちが道端で何も考えずに踊ることで一種のトランス状態になれる、憩いの場みたいな。
中西 しかも楽曲の完成度が高くて、路上なのに爆音で鳴らしている。そこにatsukoさんの歌声が乗っているわけで、自分の中で路上ライブの概念が覆されまして。路上ライブで足を止めることは滅多にないのですが、結局そのときは最後まで聴いて、CDも売っていたから買って帰ったんです。
翌朝には「明日へのbrilliant road」のデモが
──で、後日angelaのお二人にコンタクトを取られた?
中西 そうです。CDとフライヤーに連絡先が書かれてたので。路上ライブでは「butterfly」とかを歌われていて、CDには「merry-go-round」が入っていたんですけど、こういうメロディアスな曲を書ける人たちはアニソンに向くと思って、主題歌をお願いしようと電話しました。
atsuko たしか松浦のほうに「次のライブいつですか?」みたいな電話がかかってきて「1月の半ばに石丸電気さんでインストアライブがありますよ」ってお返事したら「じゃあ僕、キングレコードの者なんですけど、ちょっとお会いできますか?」って言われたのが最初ですよね。
中西 そしたら松浦さんから「あのキングレコードですか?」って。
一同 ははは(笑)。
中西 「そのキングレコードです」ってお返しして、当日、「宇宙のステルヴィア」という作品の設定資料を持ってお二人に会いに行ったんです。出番前に近くの喫茶店で、あれはベローチェでしたよね?
atsuko そうでした。でもそのときは「まあ、立ち消えになるだろうなあ」と思ってましたね(笑)。
KATSU それまでの3年間、僕らはずっと路上ライブをやってたんですけど、毎週のようにプロデューサーを名乗る怪しい人が声をかけてくるんですよ。でも結局、何一つモノにならなかったから、人間不信になってて。
atsuko そこに突然「アニメの主題歌を歌ってください」だなんてね。しかも中西さん、今もお若く見えますけど、当時はこれより15歳も若かったわけで、大学生みたいな見た目だったんです。だから「この人、ホントにプロデューサー?」って、それまで私たちの中にあったプロデューサー像を覆されすぎて。
中西 お互いに覆され合ってたんですね。
KATSU そのベローチェでの顔合わせはライブ直前だったこともあり、中西さんから「主題歌をぜひ」っていうお話だけ聞いて、事態が把握できないまま終わって。で、次の打ち合わせを池袋の三越に入ってた喫茶店でね。
atsuko アフタヌーンティーだったね。ベローチェの次はアフタヌーンティー(笑)。このときにね、中西さんがチャイを頼んだんですよ。ただオーダーのときに「チャイをくだチャイ」って小声で言ってて、「あ、この人絶対いい人だ」って思いました。
中西 よくそんなこと覚えてますね(笑)。
KATSU アフタヌーンティーでの打ち合わせで、中西さんが「このままだとお二人も不安だろうし、今度の打ち合わせはキングレコードでやりましょう」って言ったんですよね。
中西 なんか嘘ついてると思われてそうだったので(笑)。
KATSU 「こいつら信じてねえな」って思ってましたよね(笑)。さっき「人間不信になってた」って言いましたけど、当時の僕らは野良犬みたいな状態で「よーしよし、おいでおいでー」って言ってくる人には「ううー!」って警戒するようになっちゃってたから。
中西 でも、そのあとがすごいんですよ。キングに打ち合わせに来ていただいて、そのときにサンプルとしてほかのアニメ作品の映像とかもお見せしてアニメソングの空気感を説明しつつ「オープニングはマイナー調の速い曲で」みたいな相談をしたら、その翌朝には「明日へのbrilliant road」(2003年5月発売の1stシングル)のデモが会社に届けられていたという。
KATSU ちょっと補足すると、その打ち合わせに僕らは「宇宙のステルヴィア」のエンディングになる2曲、「綺麗な夜空」と「The end of the world」を用意して、「これどうっすか?」って中西さんに聴いてもらったんですよ。そしたら今おっしゃったようなオーダーをいただき、打ち合わせが終わったらそのまんま僕の家でatsukoと一緒に曲を作って、仮歌を入れて、明け方にデモができたんです。で、とにかく早く聴いていただきたかったんで、「キングレコードは9時ぐらいには開いてるんじゃない?」なんて言いながら寝ずにキングさんに行ったら、開いてはいるんですけど掃除のおばちゃんしかいない。
一同 ははは(笑)。
KATSU しょうがないからそのおばちゃんに「あの、スターチャイルドの中西さんにCDを届けたいんですけど」って言ったら「ああ、渡しとく」って(笑)。
中西 あのおばちゃんは何気にキーパーソンでしたよね。
KATSU あのおばちゃんがいなかったら今の僕らはなかったかもしれない。当時は今みたいなファイル転送サービスもないし、持参するしかなかったから。
中西 その「明日ブリ」も衝撃的で。その日のうちに監督に会いに行って聴いてもらったら「この曲で行こう!」って即決でしたからね。
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ピッタリ15位だったオリコンランキング
- angela
「angela All Time Best 2003-2009」 - 2018年10月24日発売 / KING RECORDS
-
[CD2枚組] 3564円
KICS-3755~6
- DISC 1 収録曲
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- 明日へのbrilliant road
- 綺麗な夜空
- The end of the world
- over the limits
- 幸せの温度
- How many?
- merry-go-round
- butterfly
- Stay With Me
- 笑顔でバイバイ
- fly me to the sky
- in your arms
- Shangri-La
- Separation
- cheers!
- DISC 2 収録曲
-
- 未来とゆう名の答え
- DEAD SET
- Peace of mind
- 果て無きモノローグ
- 人生遊戯
- gravitation
- 恋の first run
- Beautiful fighter
- 約束
- Spiral
- Link
- 光、探せなくとも
- 此処に居るよ
- オルタナティヴ
- memories
- angela
「angela All Time Best 2010-2017」 - 2018年10月24日発売 / KING RECORDS
-
[CD2枚組] 3564円
KICS-3757~8
- DISC 1 収録曲
-
- 蒼い春
- FORTUNES
- 蒼穹
- さよならの時くらい微笑んで
- 「リアル」は…
- キラフワ
- THE LIGHTS OF HEROES
- いつかのゼロから
- KINGS
- To be with U!
- 僕じゃない
- ANGEL
- 遠くまで
- バイバイオーライ
- キラキラ-go-round
- DISC 2 収録曲
-
- シドニア
- Different colors
- イグジスト
- 暗夜航路
- その時、蒼穹へ
- 愛、ひと欠片
- 騎士行進曲
- DEAD OR ALIVE
- ホライズン
- 愛すること
- KIZUNA
- 僕は僕であって
- 全力☆Summer!
- Calling you
- 笑顔をみせて
- angela(アンジェラ)
- 岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのちに結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2017年3月に自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。10月にはベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」を同時リリースし、東京・日比谷野外音楽堂にてワンマンライブ「angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音」を開催する。
2018年11月27日更新