angela|「ファフナー」でしか出せない渾身の叫び

angelaがニューシングル「叫べ」をリリースした。

「叫べ」は、angelaがこれまでシリーズを通じてテーマ曲を手がけてきたアニメ「蒼穹のファフナー」シリーズの最新作「蒼穹のファフナー THE BEYOND」の新オープニングテーマ。2019年5月に同作のオープニングテーマ「THE BEYOND」を提供していたangelaは、「蒼穹のファフナー」シリーズを手がける能戸隆監督からの要請を受けて“和”のテイストあふれる新曲「叫べ」を完成させた。本人たちが「ファフみ」と言及するangelaの“ファフナーらしさ”とはどこから来るのか? 作品に寄り添い続けてきたangelaならではの「ファフナー」楽曲への思いやそのこだわりを聞いた。

また今作のカップリングには、angelaのYouTube公式チャンネルで展開中の企画「angelaチャンネル ドーガdeどーだ!!」内で制作過程が紹介されていた「おやすみ」が収録されている。この曲は「奇跡の周波数」と呼ばれる「ソルフェジオ周波数」を用いたangela初のヒーリングミュージック。インタビュー後半では企画の立案者であるKATSU(G, Key)にその効能について熱弁してもらった。

取材・文 / 須藤輝

今、伝えたいメッセージを届けるために

──あまり愉快ではない話題から入りますが、先日、12月27日に神奈川・パシフィコ横浜で開催予定だった「angelaのミュージック・ワンダー★大サーカス 2020」の中止が発表されました(参照:angelaのミュージック・ワンダー★大サーカスが中止に、会場から特番の無料生配信が決定)。

atsuko(Vo) 私たちとしても非常に残念です。

KATSU(G, Key) 新型コロナウイルスが蔓延し始めてから、アーティストたちが「何かやらなきゃ」という使命感から配信という形でライブをやっていて。僕もいろんな形態の配信ライブを観てきたんですけど「生のライブには敵わない」という1つの結論に至ったんですね。

atsuko もちろん配信ならではの面白さというのもあるんですけど。

KATSU そう。だからそういう試みを否定する気はまったくなくて、「大サーカス」も最初は配信の可能性を探ったんです。でも、やっぱり「大サーカス」は叫ばなきゃいけないし、ステージ上は“密”じゃなきゃいけない。生じゃないと伝えられないことが多すぎるんですよ。

──当日は「angelaのミュージック・ワンダー★生特番 ~パシフィコで会いたくて~」というプログラムを無料配信することも発表されましたが、これは配信ライブではない?

angela

KATSU 配信ライブという言い方はしていません。「大サーカス」というのは、笑いあり、感動あり、サプライズありのエンタテインメントなんですけど、それをライブという形でお見せすることはできなくなってしまった。でも、その笑いと感動とサプライズを詰め込んだ「番組」なら作れるんじゃないか。だから「ミュージック・ワンダー★大サーカス」ではなく「ミュージック・ワンダー★生特番」というタイトルにしていて。

atsuko でも、音楽もやります。フルバンドではないかもしれないけど、普段あまり見ないような形態で歌おうと思っていて。本当にありがたいことに当日は会場をバラさず、そのままパシフィコ横浜からお届けできることになり、さらに私たちの「無料で配信したい」というわがままもキングレコードさんが聞いてくださったんです。やっぱり、我々の生業は音楽なので……。

KATSU お笑いじゃなくてね。

atsuko コントもやるかもしれないけど(笑)。angelaは音楽もきちんとやるという部分も含めて、今、伝えたいメッセージをしっかり届けられる番組を作ろうと思っています。

KATSU 配信でも確実に伝わるものってなんだろうと考えたとき、1つはメッセージじゃないかと思ったんです。だから、そこはしっかり届けたいよね。

atsuko 今回、私たちは中止という決断をしましたけど、それに対して「そうだよね。仕方ないよね」という方もいれば「有観客ライブをやるアーティストもいるのに、なんでangelaはやらないの?」という方もいると思うんですね。でも、こんな世界は誰も想像できなかったわけで。だから誰が正しくて誰が間違っているとかじゃなくて、開催決行であれ延期であれ中止であれ、それぞれの判断がすべて正解だと思うんです。そういう優しい世界になってほしいなって。自分がしんどいと、なかなか人に優しくできないじゃないですか。

──そうですね。

atsuko 私も誰かにきつく当たってしまったあとに自己嫌悪に陥るんですよ。そういう自分は嫌なので、なるべく自分自身をよい状態に保つべく、明るく楽しく生きるようにしていますし。そんな私たちの姿を番組を通して観てくださった方が、少しでもポジティブな気持ちになってくれたらうれしいです。

とにかく“和”を感じる曲を作りたかった

──ここからはニューシングルについて伺います。表題曲「叫べ」は「蒼穹のファフナー THE BEYOND」の新オープニングテーマです。8月にはangelaさんが歌ってきた「ファフナー」関連楽曲のプレイリストが公開されましたが、「叫べ」もそれらに連なる“ファフナー因子”を持つ曲だと感じました。

atsuko 毎回、テレビアニメの新シリーズとか映画とか音楽劇とか舞台とか、いろんな形で「ファフナー」の曲を作ってきたんですけど、たぶん我々が一番正攻法で作ったものが「ファフナー」に合うんだろうなというのは感じますね。

KATSU atsukoは声が「ファフナー」だから。

atsuko ただ、とても明るく楽しいアニメの主題歌を歌うときは、その“ファフみ”を抑えなきゃいけなくて。

KATSU “バブみ”みたいに言わないで(笑)。

atsuko だから「乙女のルートはひとつじゃない!」(「2020年4月発売の29thシングル。アニメ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」オープニングテーマ)とかは3倍くらい大変です。普段は開けていない引き出しをこじ開けるみたいな作業だったので。

KATSU おそらくこの「叫べ」で「島民」と呼ばれる「ファフナー」ファンの方々には完全にバレたと思うんですけど、「蒼穹のファフナー THE BEYOND」の曲では“和”を積極的に取り入れているんです。今まではそういうことはしてなくて、例えばアニメ第1期の主題歌「Shangri-La」(2004年8月発売の6thシングル)のテーマは「土臭さ」だったんですよ。ファフナーはほとんど空を飛ばなかったから。シリーズ開始から16年経つ中でファフナーはバンバン空を飛ぶようになったし、その最新作たる「THE BEYOND」のテーマは、僕の中ではアニメ第2期の「EXODUS」と地続きなんですよね。「EXODUS」では、最後に海に沈んでしまった竜宮島の設定もそうなんですけど、ファフナーの機体名にしてもアマテラス、スサノオ、ツクヨミと日本神話がモチーフになっていたりするので、続編の「THE BEYOND」ではとにかく“和”を感じる曲を作りたかった。その一連の流れの終着点が「叫べ」なんです。

──「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のイメージソング「Prologue -君の向こう側-」(2017年12月発売の9thアルバム「Beyond」収録曲)と、前オープニングテーマ「THE BEYOND」(2019年5月発売の28thシングル)は、いずれも民謡風のメロディを取り入れることで「島唄」であることを示したかったとおっしゃっていましたね(参照:angela「THE BEYOND」インタビュー)。

KATSU そう。僕らは「Prologue」のことをデジタル民謡と言っていて、その延長に「叫べ」もある。ただangelaとしては、主題歌は「THE BEYOND」で終わりだと思っていたんです。

atsuko 私たちは毎回すべて出しきるので、「この『THE BEYOND』でオープニング的な曲は終わりか」としみじみしていた矢先……。

KATSU うれしいことに能戸監督から「シリーズ後半の展開に合わせてもっと激しい、いきなりピークを迎えるような曲が欲しい」と言われまして。確かに「THE BEYOND」はヌルッと入っていくタイプの曲だったので、そうじゃない主題歌も作れるのならぜひ、という感じでした。