2003年にキングレコードからメジャーデビューを果たしたangelaのデビュー15周年を記念して、音楽ナタリーでは計3回にわたる特集記事を連載中。最終回となる本特集では、劇場アニメ「K SEVEN STORIES」のエンディングテーマを集めたミニアルバム「K SEVEN SONGS」の発売を記念して、「K」シリーズの監督を務める鈴木信吾との対談を実施した。2012年放送のテレビアニメ「K」より6年にわたってシリーズのテーマ曲を提供し続け、すでに20曲近いタイアップ曲を手がけてきたangelaは「K」シリーズにとってどのような存在になっているのか? 鈴木監督との対談をもとにアニソンシーンに寄り添い続けるangelaの魅力を浮き彫りにする。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 曽我美芽
- angela デビュー15周年特集
このキャッチボールはいつまで続くんだ?
──鈴木監督はangelaさんのことをどこでどのように知られたんですか?
鈴木信吾 お仕事をご一緒する前からお名前もどんな音楽をやられているかも知ってはいたのですが、恥ずかしながら楽曲を真剣に聴き込むようになったのはアニメ「K」を監督することが決まってからになります。でもそれ以来すっかり虜になってしまい、アニメ「K」シリーズをやるならangelaさんと継続してお付き合いをさせていただきたいなって、ずっと思っています。
atsuko(Vo) こちらこそ長くお付き合いさせていただいて。「K」の第1期の放送が2012年ですから、もう6年ですか。そう、私は前々からGoHandsさんに言いたいことがあったんですよ。それは、進行が速すぎる!(笑)
KATSU(G, Key) GoHandsさん自体とのお付き合いは「生徒会役員共」(2010年放送のテレビアニメ。angelaはエンディングテーマ「蒼い春」を担当)からなんですけど、その頃からね。
atsuko いつも「主題歌だけ最後までできてない」みたいな感じになるんです。
KATSU 僕らが主題歌をレコーディングするときには、すでに主題歌用のカッティング(編集)済みの動いてる絵があるんですよ。実際にそんなに進行の速いアニメってそんなに多くないんですけど、GoHandsさんはどのアニメも進行が速い! まあ、それが本来あるべき姿なんでしょうけど……。
atsuko そのままプレッシャーとして私たちにのしかかってくるっていうね。
KATSU だからねえ、ちょっとゆっくりやってほしいんですよ(笑)。でもそのおかげで、前にもお話ししましたけど、「SURVIVE!」(劇場アニメ「K SEVEN STORIES」共通オープニングテーマ)のときは最初のデモを提出したらすぐに絵コンテを描いてくれて、それを見て「あ、歌詞を変えよう」って(参照:angela デビュー15周年特集 第1回「SURVIVE!」インタビュー)。
鈴木 それは僕もびっくりしたんですよ。
atsuko Bメロで、最初は「永遠に SURVIVE!」っていう歌詞にしてた箇所があるんですけど、コンテを見たらシロ(伊佐那社)っていうキャラクターが落下してたんですよ。まあ、シロくんってオープニングの映像とか、アニメ本編とかでいろんなところから落下するキャラクターなんですけど、コンテを見て「ああ、また落ちてる!」ってなって、「じゃあここは『堕ちてまた SURVIVE!』に変えよう」ってね。
KATSU そのBメロに「もっと Fire」「ずっと Fire」「もっと Fire」っていう、「Fire」が3回出てくるコーラスがあるんですけど、そこも当初は《赤のクラン》(アニメの登場人物・周防尊が率いる集団)をイメージして1回目は「Fire」にして、あとの2つは《青のクラン》と《緑のクラン》に合わせてそれぞれ別の言葉を当てようと考えてたんです。でも絵コンテを見たらみんな火を出してる。青の人たちも青い火を出してて、シロくんも火を出してて。で、緑の人たちもファイアーパターンの車に乗ってるんですよ。
一同 ははは(笑)。
KATSU 「あ、そこは本物の火じゃないんだ?」って思ったんですけど、じゃあこれも全部「Fire」で統一しようって。
鈴木 僕らからしたら、angelaさんからいただいた楽曲からイメージしたものをコンテに描いているので、それをお戻しして、そこからまたangelaさんが歌詞を膨らませるっていうのは、すごい不思議な体験でしたね。
atsuko 膨らませ合いだよね。
KATSU もうね、「このキャッチボールはいつまで続くんだ?」って(笑)。
こんな図々しいマネができるのはangelaだけ(笑)
──angelaのお二人は、「K」という作品の第一印象は覚えてらっしゃいますか?
KATSU 最初に「いつかのゼロから」と「境界線Set me free」というイメージソングを2曲書かせてもらって、そこからangelaの代表曲の1つにもなった「KINGS」(テレビアニメ「K」オープニングテーマ)ができるんですけど、そのイメージソングの時点での印象と、アニメ本編ができてからの印象が全然違うんですよね。「あ、完成形がこれだったんだ」っていう驚きがすごかった。
──実際、イメージソングの2曲はその後の「K」シリーズの楽曲とは毛色が違いますね。
KATSU そうなんですよね。正直、最初は手探りでした。
鈴木 文字通り「ゼロから」ですからね。
KATSU うまいこと言った(笑)。
atsuko 私なんて最初の印象が「やだ、カッコいい!」でしたから(笑)。でも、このイメージソングから始まって、今回の「K SEVEN SONGS」の収録曲まで含めると「K」の関連楽曲は20曲ぐらいになるのに、監督サイドから「これ違うんだよな」みたいにダメ出しをされたことが……。
鈴木 ないですね。angelaさんはシナリオを読み込んで、作品の世界観を深く理解したうえで曲も詞も書いてくださるので何も外してこないと言うか、むしろ上乗せしていただいてる感じです。自分としては、曲にしても歌詞にしてもすごく刺激になりますし。
atsuko ホントですか?
鈴木 はい。特に「K」第1期の最終話のエンディングテーマ「To be with U!」を聴いたときに、ものすごい衝撃を受けました。それと「K」シリーズは第1期、劇場版、第2期と続きますけど、常にエンディングで驚かされるんです。曲の雰囲気が1期と劇場版で変化しているし、劇場版と2期でも変化している。その変化が完全に、作品の変化とつながっている感覚があって。
atsuko うれしいです。でも私たちって、勝手なことするんですよ。
鈴木 ええ。
atsuko 「ええ」って(笑)。
鈴木 会話の相槌です(笑)。
atsuko 今おっしゃってくださった「To be with U!」にしても、もともとは「レクイエム・オブ・レッド」っていう挿入歌をオファーされたときに「こういうのも作ったんですけど」って、「ご一緒にポテトもいかがですか?」みたいに捉えられてもおかしくないような言い方で提出した曲なんです。頼まれてもいないのに曲を書いてくることについて、ホントはどう思ってるんですか?
鈴木 いや、まず曲を聴いて「こんな風に『K』の世界を表現できるんだ!?」と感じましたし、その雰囲気を自分も演出的に取り入れられないかって考えるようにもなったんです。それぐらい、もう鈍器で頭を殴られたようなショックを受けました。こんなことはangelaさんしかできないだろうなって。
atsuko こんな図々しいマネができるのはangelaだけ(笑)。
鈴木 いやいや(笑)。ホントに曲によって作品を昇華してもらっていると言うか、こちらとしても一緒に一段高みに登れてる感じがするんです。
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あまり「赤が好き」ってばっかり言わないで
- angela「K SEVEN SONGS」
- 2018年11月28日発売 / KING RECORDS
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[CD+Blu-ray] 3024円
KIZC-464~5
- CD収録曲
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- BLAZE
- 天狼の如く
- 上書き世界
- Lost Small World ~檻の向こうに~
- BURN
- Nameless Song
- Blu-ray収録内容
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- オープニング主題歌「SURVIVE!」ミュージックビデオ
- angela(アンジェラ)
- 岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのちに結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。10月にはベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」を同時リリースし、東京・日比谷野外音楽堂にてワンマンライブ「angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音」を開催した。同年11月、劇場アニメ「K SEVEN STORIES」のエンディングテーマを集めたミニアルバム「K SEVEN SONGS」を発表する。
- 鈴木信吾(スズキシンゴ)
- 監督・演出家・アニメーター、キャラクターデザイナー。株式会社GoHands所属。数々のアニメーションの原画を担当し、劇場アニメーション「マルドゥック・スクランブル」シリーズではキャラクターデザイン・アニメーションディレクターを、テレビアニメ「プリンセスラバー」「COPPELION」「ハンドシェイカー」といった作品ではキャラクターデザインや監督を務める。2012年より数多くの作品が作られている「K」シリーズでは監督、キャラクターデザイン、美術設定、絵コンテ、3DCGIなど多岐に制作に携わっている。