ハワイアンにアラビアンにカリビアン!angelaと10カ国+1惑星を自由に旅する「アロハTraveling」インタビュー

angelaが7月27日に「Alone」、8月20日に「アロハTraveling」と新曲を立て続けに配信リリースした。

「Alone」は5月のファンクラブツアーで披露された失恋ソング。一方で「アロハTraveling」は10カ国と“1惑星”の特徴をatsuko(Vo)が歌い分ける、“旅”をテーマにしたユニークな楽曲となっている。

音楽ナタリーではatsukoとKATSU(G, Key)にインタビュー。曲調はまったく違うが、ともに偶然や衝動的なアイデアから生まれたという2作品の裏側について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

いや、それだと私、弾けないから

──今回は、リリースタイミング的には「アロハTraveling」のインタビューになるのですが、先月リリースされた「Alone」のお話も少しお聞きしていいですか?

atsuko(Vo)KATSU(G, Key) どうぞどうぞ。

──その「Alone」は、今年5月のファンクラブツアーでお披露目された正攻法の失恋バラードですね。

atsuko ちょうど私たちのデビュー19周年の日にあたる5月21日がファンクラブツアーの初日だったので、せっかくだからずっと応援してくださっている方たちの前で新曲を披露したいというところからスタートしていて。どういう曲を作ろうかなと思ったとき、私は普段はだいたいピアノで作るんですけど、1年ぐらい前にアコースティックギターの練習を始めたんですよ。なので、アコギで作った曲を弾き語りで披露するのはどうかなと、KATSUさんと一緒にアコギを弾きながらメロディラインを先に考えたところ、できちゃったのがああいう感じだったので。

KATSU うすら寂しい感じのね。

atsuko 本来、デビュー記念日に皆さんの前で披露する曲だったら「今まで応援してくれてありがとう」とか「みんながいてくれたから今の私があるんだよ」みたいな、いい感じの歌詞にすべきなんだろうなと思ったんですけど、そういう歌詞を乗せられるメロディじゃないなと。じゃあ、いっそ記念日というのは度外視して、よりフィットするであろうもの悲しい歌詞を書いてみました。

──アコギでの作曲は、普段と違いはありました?

atsuko うーん、より歌に近いって言えばいいのかな?

KATSU これは作曲家あるあるなんですけど、ピアノは自由度が高いがゆえに、ピアノで作曲するとメロディの動きが激しくなりがちというか、歌うのに無理が生じるメロディになりがちで。ただ、それが面白かったりもするので、決して悪いことではないんです。一方、ギターはあくまでコード進行に沿ってメロディを作っていくので、弾いていて気持ちいい、もしくは歌っていて気持ちいいものになるんじゃないかな。

atsuko ピアノって、存在がマシンじゃん。

KATSU はい?

atsuko なんか、人と機械っていう感じなんだよね、関係性が。

KATSU まあ、楽器として有能すぎるよね。表現力が豊かすぎる。

atsuko でもギターは手で持てるし、体にも密着する。だから音が自分に近いというか、確かに歌っていて気持ちはいいですね。あと、今言ったようにKATSUさんと一緒にいろいろコードを探りながら作っていったんですけど、私より若干、KATSUさんのほうがギターをうまく弾けるんですよ。

KATSU 若干ね(笑)。

atsuko 若干うまいがゆえに、私の押さえられないコードを「次はこうじゃない?」と提案してくれるんですけど、「いや、それだと私、弾けないから」みたいな(笑)。そういう意味では、もしかしたらこれからギターを始めたいという人に「Alone」はいいかもしれない。

──angelaにとって失恋ソングは珍しいと思いますが、歌詞はすらすら書けました?

atsuko 書けませんでした。100回ぐらい書き直しましたね。なんかもうダメなんですよ、恋愛の詞が書けなくなってしまって(笑)。普段はアニメのタイアップが多いので、例えば原作を読んだりして「ここのラインを切り取って歌詞に落とし込めばいいんじゃないか」というのが見えるんですけど、それに慣れてしまったせいか「恋愛ってどうやるんだっけ?」「フラれるって、どんな感じだっけ?」みたいな。そこからのスタートだったので、困りました。

──「言葉が無くなった時が終わりだったんだ」など、身につまされるものがありましたが……。

KATSU 最近フラれたんですか?

atsuko 100回書き直した甲斐があったかな? もう1つ歌詞に関して言うと、作詞にはいつも私の名前がクレジットされていますけど、ときどきKATSUさんもアイデアをくれるんですよ。今回もそうで、まだ私が歌詞を書き始める前に「サビは『壊れ』で始まるのがいいんじゃない?」と言ってきて。それがうまくハマったので、サビは「壊れた心が独りぼっちなんだ Alone」という歌詞になったという経緯があります。

喉が治る前にレコーディングしよう

──「Alone」のアレンジは往年のJ-POP感があるといいますか、どこか懐かしさを感じます。

KATSU さっきatsukoが言ったように、ことの発端はデビュー19周年を迎える今年5月21日に新しい曲を披露したいというのがあったんですけど、たぶん当日この曲を聴いてくれる人の9割以上は、angelaのことをアニソンアーティストとして認識していると思うんですよね。でも、実はデビューする以前の僕らは「Alone」みたいな恋愛曲ばかり作っていたし、じゃあ今回どんなサウンドにしようかと考えたとき、真っ先に思い付いたのがJ-POPだったんですよ。要はアニソン屋が作るJ-POPというか、新宿アルタ前でangelaが歌ってそうな曲にしたくて。

atsuko デビュー前にやっていた路上ライブでね。

KATSU 今ってスマホで音楽を聴く人も多いと思うんですけど、もし可能なら「Alone」は夜のアルタ前で聴いてもらいたくて。アレンジしているときも、僕の頭の中にはビルの照明とかネオンに照らされたアルタ前の映像が常にあって、例えば「帰宅途中の人たちはどういう音楽に足を止めるのかな?」みたいなことを考えたりしていたんです。そのアレンジの手法や技術もこの20年でどんどん更新されて、僕らもそれを取り入れてきたんですけど、「Alone」はangelaが路上ライブをやっていた90年代のサウンドに仕上げたかったので、20年前に存在しなかった技術は使っていないんですよ。

angela

──そこに乗るatsukoさんのボーカルは、普段とは違い抑制が効いていて、説得力があります。

atsuko 私って、声を張り上げて攻撃的に歌うボーカリストというイメージがあると思うんですけど、実際そうで、声のトーンを抑えて歌うのはどちらかといえば苦手なんですよ。

KATSU 「わあー!」って歌いたいんだよね。

atsuko ところが、4月にコロナに感染しちゃいまして。ちゃんと療養期間を終えて体調は回復したんですけど、喉の痛みだけしばらく残っていたんですよ。でも「Alone」の制作は進めなきゃいけなくて、大声を張り上げられない状態だったけれども、一応、仮歌を録音したんですね。そしたらKATSUさんが「こっちのほうがいい」って。

KATSU 「今がチャンスだ!」と思いました。

atsuko 「喉が治る前にレコーディングしよう」と言い出して。

KATSU だから「Alone」のボーカルは、angelaのプライベートスタジオで録音しているんですよ。普段はキングレコードのスタジオを借りるんですけど、スタジオの予約とかしている間に声が戻っちゃう可能性があるから「明後日録ろう!」みたいな。もちろん「喉が痛かったらやめよう」という前提で。結果、atsukoとしては消化不良だったと思うんですけど、作品としてはすごくいいなと。

atsuko そうなんですよ。特に高い音を出すときは、喉に負担がかからないように力をセーブないといけないし、「もっと出せるのに……」という感じではあったんですけど、むしろそれがよかったみたいで。

KATSU ちょっと声のかすれた感じとか、何かを訴えかけられているかのように聞こえるんですよね。もしangelaが路上ライブをしていた当時にこの歌い方ができていたら、CDとかバカ売れしたと思う。

atsuko もうちょっと早くデビューできたかな? でも、もう喉が治っちゃったんで、この音源のような歌い方はできない(笑)。

KATSU 5月21日のライブでも普通に歌えちゃってたからね。

atsuko もうね、声が出ちゃってしょうがない。