音楽ナタリー Power Push - amazarashi

2ndシングルに凝縮した秋田ひろむの心的情景

女子高生がトイレで踊り狂う“後味の悪い”MV

──常に革新的で刺激的なミュージックビデオを届けてくれるamazarashiですが、女子高生が学校のトイレで踊り狂うという「スピードと摩擦」のMVもかなりの衝撃です。秋田さんはどんな印象を受けましたか?

今回も「穴を掘っている」「季節は次々死んでいく」を担当してくれた本山(敬一)さんが作ってくださいました。なんか見ちゃいけないものを見てしまったような、後味の悪い作品だと思います。褒め言葉です。僕が曲を作ったときの視点より、もう1つ上から俯瞰して見ているような映像だと感じました。僕は僕なりの苦悩を歌おうと四苦八苦したんですが、その姿すら隠し撮りされていたような気持ちになりました。このMVを観るとより多面的に楽曲を楽しめるはずです。

──カップリングについても聞かせてください。美しく切ないピアノの音色で始まるポエトリーリーディング的な楽曲「風邪」はどのように生まれたのでしょうか?

これはまんま風邪を引いてるときに作った曲で、締め切りが迫ってる最中に風邪を引いてしまって、「ああ、やってしまった」っていう気持ちをそのまま歌詞にしました。頭が朦朧として何も考えられなかったんですが、それはそれで面白いものができるだろうとやけくそになって作りました。

──ポエトリーリーディングを取り入れた楽曲のレコーディングは、感情的な表現という部分で通常のボーカルとは違った難しさがあるような気がします。意識すること、大変なところ、逆に面白さを感じるところなどを教えてください。

amazarashiのライブの様子。(写真提供:ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

ライブでもポエトリーリーディングは毎回やっていて、たぶん伝わりづらいだろうなとは思うんですが、自分ではちょっとうまくなってきたかなっていう手応えがありまして。ライブでポエトリーリーディングをやっていると原曲の熱量を越える瞬間があって、そういうふうにわかりやすく感動できたり、鳥肌が立ったりするようなところをもっと提示できたらなと思ってます。

──アルバムの場合、全体の流れを見てポエトリー曲を作るとおっしゃっていましたが(参照:amazarashi「夕日信仰ヒガシズム」インタビュー)、シングルの場合でもその役割は同様ですか?

はい。今回も最後に作りました。「スピードと摩擦」と「名前」をつなげるインタールードとしてイメージしました。

カテゴライズされることについて

──もう1曲の「名前」が生まれたきっかけ、背景も教えてください。

田舎に住んでいると、“職業・ミュージシャン”っていうものほど胡散臭いものはなくて。ましてや有名ではないですし、生活の中で面倒くささを感じる瞬間が多々あって。でも思えばずっとそういう肩書きとか呼び方に悩まされ続けてきたな、と思ってこういう曲を作りました。

──音楽活動をしている中でも、さまざまな“名前”で括られる窮屈さを感じることはやはり多いものですか?

例えばジャンル分けとか、「僕らそういうところに括られるんだ」という違和感を感じることはありますが、それは僕自身にとっては大した問題ではないです。ただそれが、誰かのamazarashiを聴く機会を奪ってるんだとしたら悲しいなと思います。

amazarashiのライブの様子。(写真提供:ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

──曲の着地点として「どんな風に呼ばれようと好きにやるべき」「名前がなんであろうと君の行動一つ程には雄弁じゃない」という歌詞で、外に向けられたメッセージが放たれているのが素晴らしかったです。「あんたへ」で手に入れた“伝えること”という明確な思いは引き続き、楽曲を作る上で大切なものとなっていますか?

はい。この曲は明確に伝えることを意識した曲です。もちろん自分に向けて言ってる部分は大きいですが、このテーマは多くの人に伝わるんじゃないかと思いました。

──今回は、タイトル曲「スピードと摩擦」の弾き語りバージョンも収録されています。その意図は?

たくさんのプロの方と関わる中で、僕1人の力量ってたかが知れてるなって落ち込んだ時期があったんです。だけどそこを磨いていかないと居心地が悪くなってしまうだけなので、弾き語りは機会があればやっていこうと思ってます。あとはメジャーレーベル、事務所をクビになって1人になっても音楽やっていくための準備をしておこうと思って。

──シンプルなアコースティックサウンドで歌うと、ボーカリゼーションや感情の乗せ方などに変化を感じるところもありますか?

サウンドがシンプルな分、歌が寂しくなってしまうことはあります。その分がなったり、声量を出しすぎたりして失敗することもあるんですけど、やり過ぎてるくらいのほうが弾き語りにはちょうどいいのかなと思ってます。

ニューシングル「スピードと摩擦」 / 2015年8月19日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / AICL-2930~1
通常盤 [CD] 1296円 / AICL-2932
期間限定盤 [CD] 1404円 / AICL-2975~6
初回限定盤 CD収録曲
  1. スピードと摩擦
  2. 風邪
  3. 名前
  4. スピードと摩擦 acoustic Version
  5. スピードと摩擦 instrumental
  6. 風邪 instrumental
  7. 名前 instrumental
初回限定盤 DVD収録内容

LIVE @nikoniko 2015.05.12

  1. 光、再考
  2. ムカデ
  3. 季節は次々死んでいく
  4. 無題
  5. スターライト
通常盤 CD収録曲
  1. スピードと摩擦
  2. 風邪
  3. 名前
  4. スピードと摩擦 acoustic Version
期間限定盤 CD収録曲
  1. スピードと摩擦
  2. 風邪
  3. 名前
  4. スピードと摩擦 acoustic Version
  5. スピードと摩擦 TV Edit
  • 「乱歩奇譚 Game of Laplace」OPノンテロップムービーのダウンロードシリアルナンバー封入

    DL期間 2015年8月18日(火)0:00~2016年2月17日(水)23:59

amazarashi(アマザラシ)

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発売した。2012年6月にミニアルバム「ラブソング」、2013年4月にミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」をリリースし、2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演。11月にアルバム「あんたへ」を発表した。2014年9月にはインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催。秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月29日に約3年ぶりのフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリースし、翌11月より全国ツアーを開催。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A(ルートエー)」の主題歌となり、アニメファンにも大きな注目を浴びた。6月にデビュー5周年を迎え、8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを実施。アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のオープニングテーマ「スピードと摩擦」を書き下ろし、8月19日に2ndシングルとしてリリースした。