音楽ナタリー Power Push - amazarashi
2ndシングルに凝縮した秋田ひろむの心的情景
amazarashiの2ndシングル「スピードと摩擦」がリリースされた。このシングルのタイトル曲は、現在フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送中のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のオープニングテーマとして大きな話題を呼んでいる。疾走していくバンドサウンドと、さまざまな葛藤や軋轢の中で力強く生きていこうとする意志を文学的表現でつづったリリックが相まった世界観は、amazarashiとしての新たな進化を感じさせる仕上がりだ。
今回音楽ナタリーでは、青森に住むamazarashiの中心人物・秋田ひろむへのメールインタビューを実施。秋田はタイトル曲に関する話題はもちろん、カップリング曲や初回盤DVD収録のライブ映像に関することまで、たっぷりと回答してくれた。
取材・文 / もりひでゆき
江戸川乱歩が下敷きならエッジの立った曲だろう
──今年2月にリリースされた1stシングル「季節は次々死んでいく」に続き、今回もアニメタイアップの楽曲となりました。アニメとのコラボレーションに対して、どんな思いをお持ちですか？
うれしいです。メジャーでやってる以上はたくさんの人に聴いてもらいたいし、amazarashiを知らない人に聴いてもらえるチャンスなのでありがたいと思ってます。デビュー当時からタイアップの話はいろいろあったんですけど、それをつかむことができなかったのは僕らの力量不足だったっていう悔しい思いがあって。最近になってこういうふうに楽曲を使ってもらえる機会が増えて、何か1つ認めてもらえたのかなっていう気持ちでいます。
──アニメはお好きですか？ これまでの人生の中でリスナーとして印象に残っているアニメにまつわる楽曲があれば教えてください。
アニメはあまり詳しくないです。すいません。アジカン（ASIAN KUNG-FU GENERATION）の「遥か彼方」（「NARUTO-ナルト-」第2期オープニングテーマ）は衝撃的で印象に残ってます。ロックバンドがアニメタイアップをする流れにamazarashiは乗れないんだろうなと漠然と思っていたので、こういうふうに立て続けに使ってもらえたことには驚いています。
──アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」オープニングテーマとなった今回の新曲「スピードと摩擦」。オファーを受けたときのお気持ちはいかがでしたか？
驚きました。最初は資料と江戸川乱歩を下敷きにした作品だという情報だけいただいて、僕らのどういう部分を出したらいいんだろうかと悩みました。歌モノよりはエッジの立った曲の方がいいのかなとか。
──ちなみに「乱歩奇譚 Game of Laplace」でモチーフとされている江戸川乱歩の作品にはどのような印象をお持ちですか？
小学生のときに図書室で何作か読んだ記憶があります。子供ながらに「こんなの図書室に置いてていいのか」っていうやばい作品もあったりして、そういう印象です。
雪道でスリップした状況をイメージ
──どのような思い、メッセージを楽曲に落とし込みましたか？
必死に生きようとすると軋轢とか、障害とかが増えるもので、それを例えた「スピードと摩擦」という言葉のイメージだけあって、そこから考えはじめました。なんとなく焦って「なんとかしなきゃ」っていう気持ちが伝わる曲にしたいと思ってました。
──短いセンテンスを連ね、リズムよくスリリングに世界観を紡いでいくリリックは、いつにも増して文学的な印象を強く受けました。今回の作詞に関してこだわったところを教えてください。
語尾を"e"で韻を踏んで、センテンスの区切りも言葉数もある程度決めて、始めから定型的な“詩”を書こうと思って作った曲です。あとは隠喩表現とか、ちょっと煙に巻く表現をやってみたいと思ってました。amazarashiは直接的な、説明的な歌詞が多かったので。何か縛りの中で作ったら面白いものができるんじゃないかっていう実験的な側面もあります。
──タイトルにもなっている“スピードと摩擦”という印象的なフレーズはどんな状況で生まれたのでしょうか？
車で雪道を走っていたらスリップして事故ったことがあって。その感じというか、今すごいスピード出てるけどこれ以上アクセル踏んだらやばいんじゃないか？ まだいけるか？みたいな、ギリギリな状況のイメージです。
──疾走するスピードを感じさせながらも、美しく、またどこか悲しげでもあるさまざまな感情を伴って景色を変化させていくドラマチックなサウンドメイキングにやられました。デモができたタイミングに思い描いていた完成図のイメージと、アレンジして仕上がった楽曲に対しての率直な感想を教えてください。
この曲は僕のデモの段階でバンドアレンジを漠然と作って、その段階で疾走感があるものだったので、わりとそれを汲んだ完成形だと思います。と言っても、スピード感や勢いだけじゃなく情緒的なサウンドになったのはアレンジャーの出羽（良彰）くんの力量だと思います。12弦ギターのフレーズとか、「ああ、これでこの曲が完成形になったな」と思いました。最後のピースがかちっとはまったような。
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- ニューシングル「スピードと摩擦」 / 2015年8月19日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / AICL-2930～1
- 通常盤 [CD] 1296円 / AICL-2932
- 期間限定盤 [CD] 1404円 / AICL-2975～6
初回限定盤 CD収録曲
- スピードと摩擦
- 風邪
- 名前
- スピードと摩擦 acoustic Version
- スピードと摩擦 instrumental
- 風邪 instrumental
- 名前 instrumental
初回限定盤 DVD収録内容
LIVE @nikoniko 2015.05.12
- 光、再考
- ムカデ
- 季節は次々死んでいく
- 無題
- スターライト
通常盤 CD収録曲
- スピードと摩擦
- 風邪
- 名前
- スピードと摩擦 acoustic Version
期間限定盤 CD収録曲
- スピードと摩擦
- 風邪
- 名前
- スピードと摩擦 acoustic Version
- スピードと摩擦 TV Edit
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「乱歩奇譚 Game of Laplace」OPノンテロップムービーのダウンロードシリアルナンバー封入
DL期間 2015年8月18日（火）0:00～2016年2月17日（水）23:59
amazarashi（アマザラシ）
青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発売した。2012年6月にミニアルバム「ラブソング」、2013年4月にミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」をリリースし、2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演。11月にアルバム「あんたへ」を発表した。2014年9月にはインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催。秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月29日に約3年ぶりのフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリースし、翌11月より全国ツアーを開催。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A（ルートエー）」の主題歌となり、アニメファンにも大きな注目を浴びた。6月にデビュー5周年を迎え、8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを実施。アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のオープニングテーマ「スピードと摩擦」を書き下ろし、8月19日に2ndシングルとしてリリースした。
