音楽ナタリー PowerPush - amazarashi
秋田ひろむ“イズム”の源流に迫る
amazarashiが3年ぶりのフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリースする。前作フルアルバム「千年幸福論」以降、「ラブソング」「ねえママ あなたの言うとおり」「あんたへ」という3枚のミニアルバムを発表し、ライブも精力的に行ってきた彼らは、そこで手に入れた多くの経験を糧として、より鮮烈でダイナミズムにあふれた世界を本作で繰り広げることに成功している。“日常”を舞台に、揺れ動く感情の機微を繊細かつ激しく吐露する全12曲。そこに込められた思いとは? amazarashiの中心人物、秋田ひろむにメールインタビューに応じてもらった。
取材・文 / もりひでゆき
あまざらし名義の朗読ライブ「スターライト」回想
──まずは、9月9日に一夜限りで行われた「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」について。デビューから5年を迎えた今年、インディーズ時代の名義でライブを開催した意図を教えてください。
ライブとしての「スターライト」は、アマチュア時代から大事にしてた楽曲の「スターライト」をいかに感動的に聴いて貰えるかっていうのを目標に作り上げました。最初はアコースティックライブをやろうというだけのもので、だったら“あまざらし”名義でやるのもいいんじゃないかという感じだったんですが、思ったより豪華になって自分でも驚いてます。でも思いついた事を何でもやって、実験的な事も試せて、amazarashiとして新しい表現方法も見つかった気がするので、やれて良かったです。
──ライブで朗読された「スターライト」という物語はどんな思いで書き上げ、どんなメッセージを込めたものだったのでしょうか?
始めは童話のような、絵本のような、朗読ライブみたいなものをイメージしてたんですが、結局自分の過去を巡る物語みたいになりました。amazarashiの過去から現在みたいなものを曲とリンクして表現できたと思います。
──ストリングスを加えたバンド編成でのライブはいかがでしたか?
歌が前面に出るアレンジだったので、それには苦労しました。歌に関しては相当鍛えられた感じがあります。あとは音楽に対する視点がより細かになったというか、僕自身は割と大雑把なんですが、より細かい単位で音符を見る事が出来るようになった気がします。
──“あまざらし”名義を復活させ、初期楽曲を中心として展開されたライブ。そこで改めて見えたもの、感じた思いなどを聞かせてください。
ここまで大きな表現方法というのは僕も含め皆初めてだったと思うんですけど、試行錯誤して、結果すごいいいものが出来たので達成感はすごいあります。最初は大変そうだなと尻込みしてたんですが、こういうちょっと普段の道を外れた事をやるのも悪くないなと思いました。
「それはまた別のお話」から見えたアルバムの方向性
──今回リリースされる約3年ぶりの2ndフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」。制作はいつ頃からスタートし、どのくらいの期間で完成させたものですか?
制作を始めたのは曖昧なんですが、前作「あんたへ」のレコーディングが終わってから曲は作ってました。去年の10月、11月くらいからでしょうか。
──本作を制作するにあたって、何か思い描いていたコンセプトはありましたか? コンセプトがあった場合、それを掲げた理由も教えてください。
始めはコンセプトもなく曲をいっぱい作ろうと思ってて、「それはまた別のお話」という曲が出来てからなんとなく方向性が見えた気がします。テーマは生活とか暮らしです。なんとなくこれから生きて行く事を考えていた結果だと思うんですけど、自分にとって自然な流れでした。
──本作を編む上で指針となった楽曲を理由とともに教えてください。
「それはまた別のお話」が出来た事が一つの区切りになったと思います。とてもゆったりした、悪く言えば地味な曲なんですが、アルバム制作とか、アーティスト像とか、そういう所からはみ出て僕個人の中からぽっと出て来た曲なんで、この感じでアルバムが出来たらなと思って制作しました。
──前回のフルアルバム「千年幸福論」は東日本大震災の影響が色濃く反映されていた作品だったと思います。今回は、作品を作る上で心を揺り動かす何かのきっかけがあったりはしましたか?
小さな喜怒哀楽みたいなきっかけは沢山あったと思います。一つこれ、という大きなものはないです。だからこそ生活がテーマになったのかもしれません。
邦楽ロックのフォロワーであることも表現したかった
──前作からの約3年で、アーティストとしての心情や楽曲制作に対する思いが変化したことはありましたか?
音楽に対しては知識も増えたし、技術も多少上がったかもしれないんですけど、同時に大抵の事はどうでもいいんだなって思うようになりました。メロディー一音上がるか下がるかとか、歌詞のてにをはとか、以前はすごい悩んだりしたんですけど、そういうのはどうでもいい事だなと思うようになりました。
──本作の仕上がりに関して、率直な感想を聞かせてください。
詰め込んだというか、出し切ったというか、僕は間違いなくいいと思ってるんですが、ただちょっとやり過ぎたから後が大変だなという気がしてます。
──今回、新たなトライをすることができたと感じている曲があれば教えてください。どのようなトライで、どんな意図を込めたのでしょう?
今回アッパーな曲が多くて、「もう一度」「スターライト」「ヨクト」とか、ギターロック的な表現は以前からあったんですが、これだけ開き直ってやるっていうのはトライだったと思います。僕自身邦楽ロックのフォロワーであるし、そこはちゃんと表現したいなと思いました。
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- ニューアルバム「夕日信仰ヒガシズム」2014年10月29日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット]3600円 / AICL-2753~4
- 通常盤 [CD] 3000円 / AICL-2755
CD収録曲
- ヒガシズム
- スターライト
- もう一度
- 夜の一部始終
- 穴を掘っている
- 雨男
- 後期衝動
- ヨクト
- 街の灯を結ぶ
- 生活感
- ひろ
- それはまた別のお話
初回限定盤DVD収録内容
- 空っぽの空に潰される(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- つじつま合わせに生まれた僕等(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- 美しき思い出(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
ツアー情報
amazarashi LIVE TOUR 2014「夕日信仰ヒガシズム」
- 2014年11月1日(土)大阪府 なんばHatch
- 2014年11月3日(月・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年11月15日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2014年11月23日(日・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2014年11月24日(月・祝)宮城県 Rensa
- 2014年11月29日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2014年12月21日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
amazarashi(アマザラシ)
青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていく。2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発売した。2012年6月にミニアルバム「ラブソング」、2013年4月にミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」をリリース。2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演し、11月にアルバム「あんたへ」を発表した。2014年9月にはインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催。秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月29日に約3年ぶりとなるフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリース。