音楽ナタリー PowerPush - amazarashi
秋田ひろむ“イズム”の源流に迫る
「後期衝動」はライブでの名刺代わり
──音楽家としてのリアルな感情を一気に吐き出して終わる「後期衝動」。ここに詰まっている思いは今の秋田さんの感情なのでしょうか? それともamazarashiが生まれた理由なのでしょうか?
フェスに出演が決まった時に自己紹介の歌を歌いたいなと思って作りました。一発でああこういうバンドなんだって分かってもらえる様な。そういう意味でamazarashiの生まれた理由から始まり、今の僕の感情含め、ライブでの名刺代わりみたいな曲です。
──ポエトリーリーディング的なアプローチの2曲「夜の一部始終」「生活感」。今回も全体の流れを意識して最後に創り上げられたのでしょうか?「生活感」の雰囲気はどこか新しい雰囲気を感じることができましたが。
はい。曲が出そろってから流れを意識して作りました。「夜の一部始終」は現実的な所から「穴を掘っている」の非現実的なところへの導入を意識して作りました。あとラップっぽいアプローチも一曲やってみたかったです。「生活感」はライブ「スターライト」の製作期間とかぶって作ったので、ファンタジーと現実の境目とか、そういうものに影響されて出来た曲です。
作為的な発想が一切ない個人的なアルバム
──明確な対象に向けて歌われた私信のような「ひろ」。感動的なバラードで、サビでの歌声は圧倒的な優しさと美しさをたたえています。この曲はどんな経緯で生まれたのでしょうか?
「ひろ」は昔一緒にバンドをやっていた友達の歌です。十九歳で死んでしまった友達です。友達に向けた手紙のような気持ちで書いたのですが、今の自分の立ち位置を再確認する様な歌になりました。昔からこのテーマで曲を作りたかったんですが、なかなかうまくいかなくて、今回ようやく形に出来ました。
──「ひろ」を含め、本作には“友人”“恋人”“親父”など身近な人がもたらす“生きる理由”が散りばめられているような気がしました。そこには秋田さんのどのような思いが反映しているのでしょうか?
すごい身近な、小さい範囲で出来たアルバムだと思います。自分にとって大事なものを歌いたかったので、日記の様な形になりました。こんな時代だからこう歌おうとか、そういう作為的な発想が一切ない、とても個人的なアルバムになりました。
──アルバムはシンプルで温かな「それはまた別のお話」で幕を閉じます。この曲のような穏やかな感情にカラダが包まれる瞬間はどんなときですか?「後期衝動」内の“浅虫の黄昏”というワードがこの曲にも登場することから、ライブ後はいつもこういう感情なのかなあ……と勝手な想像をしたのですが。
そうですね。この曲のニュアンスが一番生活に近いというか、理想というか。そんな感じです。“浅虫の黄昏”はアマチュア時代のライブの帰り道の情景なんですが、僕の中では失敗してへこんでたイメージですが、綺麗なものの象徴でもあります。失敗も悲しい事もひっくるめてハッピーエンドになれたらいいと思ってこの曲をラストにしました。
お客さんの心が動いたらその他はどうでもいい
──11月1日からは全7公演のライブツアーが始まります。どんな思いで各地をまわろうと思っていますか?
バンドとしても結構成長出来たんじゃないかなと思ってるので、その成果を見てもらえたら嬉しいです。今回のアルバム、プラスαのメッセージを表現しようと思ってます。
──初ライブの衝撃から約3年。現在のamazarashiにとってライブとはどういった感情をもたらしてくれるものですか?
僕にとっては達成感。毎回ツアーごとにハードルを一個ずつ越えてる感じがあるので、今回もそこに挑戦したいです。あとはお客さんにちゃんと届くように。お客さんの心が動いたらその他はどうでもいいです。
──ツアーで地方に滞在する際、どのように過ごすことが多いですか? 旅先で曲が生まれることもありますか?
ツアー先ではあんまり時間がないのでのんびりできないですね。皆でご飯食べてお酒飲んで終わりです。
──最後に、ナタリー読者にメッセージをお願いします。
amazarashiの曲を聴いた事ない人もいると思うんで、まずは聴いてみてください。Youtubeで検索するとMV見られます。映像もかっこいいですよ。
- ニューアルバム「夕日信仰ヒガシズム」2014年10月29日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット]3600円 / AICL-2753~4
- 通常盤 [CD] 3000円 / AICL-2755
CD収録曲
- ヒガシズム
- スターライト
- もう一度
- 夜の一部始終
- 穴を掘っている
- 雨男
- 後期衝動
- ヨクト
- 街の灯を結ぶ
- 生活感
- ひろ
- それはまた別のお話
初回限定盤DVD収録内容
- 空っぽの空に潰される(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- つじつま合わせに生まれた僕等(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- 美しき思い出(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
ツアー情報
amazarashi LIVE TOUR 2014「夕日信仰ヒガシズム」
- 2014年11月1日(土)大阪府 なんばHatch
- 2014年11月3日(月・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年11月15日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2014年11月23日(日・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2014年11月24日(月・祝)宮城県 Rensa
- 2014年11月29日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2014年12月21日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
amazarashi(アマザラシ)
青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていく。2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発売した。2012年6月にミニアルバム「ラブソング」、2013年4月にミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」をリリース。2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演し、11月にアルバム「あんたへ」を発表した。2014年9月にはインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催。秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月29日に約3年ぶりとなるフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリース。