ナタリー PowerPush - amazarashi

秋田ひろむから「あんたへ」

初めてamazarashiを客観視できた

──本作のとっかかりは、5年ほど前に作られた「あんたへ」という楽曲だったそうですが、その曲から受け取った感情はどんなものだったのでしょうか?

僕はまだまだ創作意欲も何か吐き出したいっていう貪欲さもあるつもりだったんですけど、「あんたへ」を聴いた時に、もっと頑張れるなと思わされました。そこはまだ限界じゃないよって言われた気がしました。久々に聴いた曲だったので、初めてamazarashiを客観視できたんだと思います。

──「あんたへ」という曲をきっかけに、“伝える”ということを強く意識するようになったそうですが、そのことは今回のタイミングの歌詞や楽曲の制作に、具体的にどのような変化をもたらしましたか?

9月30日に東京・LIQUIDROOM ebisuで行われたライブの様子。

「あんたへ」自体が僕自身に歌っている歌だったので、それをどうリスナーに向かって発信するかを考えました。「まえがき」の“あんたへ捧ぐ”という歌詞だったり、アルバムのタイトルも、こういうインタビューでもちゃんと言わなきゃ伝わらないなとか、ちょっとずつ色んな事を意識しました。

──聴いてくれる“誰か”を意識して書いた曲はありましたか?

「匿名希望」の“君”はamazarahiを好きだと言ってくれる人達をイメージしました。

──ちなみに「あんたへ」のようなストック曲は現状どのくらい存在しているのでしょうか? またそれらは今後、どのようなタイミングで音源化されていくのでしょう?

数は結構あります。さすがにもう歌えない曲も多いですが。出来るだけ音源化はしたいです。CDをリリースする時は出来るだけその時の気持ちを込めたいので、それに沿う様な曲だったら入れると思います。今回の「あんたへ」みたいに。

打ち上げで笑えたらそれでゴール

──「匿名希望」では「僕は君の代弁者じゃない」と言い切りつつも、「君の代弁者は君以外にいない」とラストで歌われることで聴き手へのメッセージをしっかりと感じることができました。同時に、それはご自身へのメッセージでもあるんだろうなと。amazarashiなりの“伝える”を意識したことがいかに表れたのがこの曲のような気がしたのですが、秋田さんがここに込めた思いをお聞かせください。

9月30日に東京・LIQUIDROOM ebisuで行われたライブの様子。

頑張れって言えたらそれが一番いいと思うんですけど、それは無責任な気がしてて、amazarashiのリスナーに対して。色んな状況があるし、人それぞれだし、“結局最後は自分がやるしかない”って僕が言うのが自然かなと思いました。

──初の長編ポエトリーリーディング曲となった「冷凍睡眠」。アルバムの流れを整えるために作っていたというこれまでのポエトリー曲とは意味合いが違っていそうですが、どのようなお気持ちで制作されたのでしょうか?

いわゆるインタールード的な曲は「まえがき」「あとがき」があるから今回はいらないかって思って、長編のポエトリーリーディングは以前から何回か挑戦してたんですけど、今回ちゃんと完成させようと思いました。一番実験的な曲だと思います。自分なりの歌詞の方法論とか、表現方法とか、新しいものを模索して作った曲です。

──「ドブネズミ」は限られた言葉数の中、シンプルに“信じること”の意味を歌った曲だと思いました。言葉がたっぷりと詰まった曲がある一方で、こういったスタイルの曲はどんな思い、きっかけで生まれるものなのでしょうか?

メロディーを先に作るとこういうシンプルな曲になる気がします。「ドブネズミ」は純粋なラブソングなのでこういう優しい感じになったんだと思います。

──本作の中で個人的に一番衝撃的だったのが「終わりで始まり」でした。これまでも作品を追うごとに、楽曲が最終的に伝える希望の彩度(それは秋田さんの心の彩度でもあると思うのですが)が強まっている印象を受けていたのですが、この曲で感じられる開けた感情は今までになかったもののような気がするのです。こういった曲を書くことができた理由を教えてください。

落ち込んでいる時こそこういう前向きな曲を書ける気がします。「あんたへ」もそうなんですけど。この曲を作ってる時はそんなに意識してなかったんですが、なんか僕の集大成的な歌になりました。いい事も悪い事も積み重なって、丁度気持ちが溢れた時期だったんだと思います。

──また、「終わりで始まり」に顕著ですが、本作には“笑う”という単語が散りばめられています。今の秋田さんは“笑う”という行為にどんな意味を抱いていますか?

ハッピーエンドの最たるものというか、最後に笑えたら全部オーケーみたいな。ライブも制作も、打ち上げで笑えたらそれでゴールだと思います。毎回そう簡単には行きませんが、そうなる為に頑張ってるんだと思います。

適度にさぼりつつ頑張ります

──「ここからがスタートラインだよ」(「終わりで始まり」)というフレーズを引用するならば、メジャー4年目に突入し、この素晴らしい作品を作り上げたamazarashiのここからはどんなものになりそうですか?

出来れば変わらずにこのペースでやっていきたいです。いい曲を作って、それを歌って、がずっと続くように頑張りたいです。

──本作を引っ提げて来年には全6公演のツアーも決定しています。そこにかける気持ちを教えてください。

このアルバムに込めたメッセージから、もう一歩踏み込んだ所を表現できたらと考えてます。

──最後に、これから寒さ厳しい季節がやってきます。この冬をどう過ごされる予定ですか? じっくりと取り組んでみたいことがあれば教えてください。

来年すぐツアーだから年末は忙しそうです。それまでに曲作りを集中的にやりたいです。適度にさぼりつつ頑張ります。

amazarashi LIVE TOUR 2014「あんたへ」

  • 2014年1月11日(土)
    東京都 Zepp Tokyo
  • 2014年1月18日(土)
    愛知県 名古屋CLUB DIAMOND HALL
  • 2014年1月19日(日)
    福岡県 福岡イムズホール
  • 2014年1月25日(土)
    大阪府 Zepp Namba
  • 2014年2月8日(土)
    北海道 札幌PENNY LANE24
ニューアルバム「あんたへ」/ 2013年11月20日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤[CD+DVD] 2000円 / AICL-2603~4
通常盤[CD] 1800円 / AICL-2605
収録曲
  1. まえがき
  2. あんたへ
  3. 匿名希望
  4. 冷凍睡眠
  5. ドブネズミ
  6. 終わりで始まり
  7. あとがき
初回限定盤DVD 収録内容
  • 匿名希望(2013年9月30日 / 東京・LIQUIDROOM ebisu)
  • MC(2013年09月30日 / 東京・LIQUIDROOM ebisu)
  • あんたへ(2013年09月30日 / 東京・LIQUIDROOM ebisu)
amazarashi(あまざらし)
amazarashi

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていく。2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」をリリースした。2012年1月に渋谷公会堂で開催したアルバム発売記念のワンマンライブのチケットはソールドアウト。2012年6月にアルバム「ラブソング」を、2013年4月にアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」を発表する。2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演し、9月にはTK from 凛として時雨と対バンライブを開催。11月にニューアルバム「あんたへ」をリリースする。