04 Limited Sazabys「SOIL」全曲解説|“俺たちのフォーリミ”が耕し続けた10年間

「SOIL」全曲解説

05.

Milestone

──「Milestone」はGENさんの伸びやかなボーカルから始まる、メロディアスな曲です。

GEN この曲が一番すんなりできたと思います。このまま出てきて、そのまま完成した。

──冒頭の歌詞だけ読むとそれこそ希望を歌った曲だと思うんですけど、読み進めていくと、葛藤がつづられていて。タイトルの「Milestone」は「道しるべ」という意味ですが、歌詞にはどういう思いが?

GEN この曲の歌詞はメロディを思い付いたときからなんとなく付いてたんですけど、その歌い出しが「いつか」だったんです。で、「いつか」って歌い出すと「monolith」っぽいかなと思ったんですけど、逆に「monolith」を意識した歌詞にしてみようと思いついて。「monolith」の歌詞で「醒めない夢を静かに観たい」とあるんですけど、“今もその夢を見ている主人公が4年後の今見つけた1つの道しるべ”というストーリーにしました。さっきの話で言うと、歌詞の書き方も「monolith」の時期を意識しました。

──「『monolith』の時期の歌詞」を具体的に説明するとどのようなものですか?

GEN 内省的と言うか……内容としては一筋の光に向かってもがいている状況で、歌詞の書き方としてはちょっとわかりづらい抽象的なもの。今振り返れば、自分たちがステップアップしていくことによって明るいことや希望が歌えるようになったんですけど、実際に「monolith」を作ってた時期は、希望は見えないけど希望にすがりつくしかなかった。だからどっちかと言えば当時の曲は絶望ばっかりを歌ってたんですよね。1曲目の「message」でも「絶望は歌い飽きた」って歌ってるんですけど。

──その葛藤を、今の04 Limited Sazabysが歌うと「Milestone」になると。

GEN そうですね。希望を歌い過ぎたくない、でも絶望を歌いたいわけないという、今の気持ちを当時の手法で書きました。

06.

Password

RYU-TA(G, Cho)

──「Password」は04 Limited Sazabysらしい跳ねるリズムの曲ですが、テンポがゆったりしていて新しさを感じますね。

KOUHEI 明るい中に切なさがあって。

RYU-TA 意外とこれまでにやったことないか。

GEN やってないね。昔の自分たちだったらこのノリは出せなかったと思うし、そういう意味では一番バンドの成長を感じられる曲かもしれない。今までの僕らも全部入っているし、さらにちょっと大人になった僕らも見せられたんじゃないかな。

──この曲の歌詞ではどういうことを歌っているんですか?

GEN 状況がよくなって満たされつつあって、おなかがすかなくなってきているけど、どうなんだ?みたいな。

──まさに今のバンドの状況?

GEN そうです。アーティストとしてどういうモードになれたら正解なんだろう?と思っていて。常に新しいことを追求していたいし、でも一貫して歌い続けてきている通り、聴いてくれてる人にとっての味方でもいたい。10年やってきた今の自分の気持ちの揺らぎをそのまま書いています。

──そしてその正解を「のらりくらり 探してこうよ」と。

GEN はい。

07.

Alien

──このアルバムでもっとも重厚なサウンドですね。

GEN そうですね。

KOUHEI ドロップの曲として「Utopia」を作ったんですけど、それこそギターの持ち替えとかも考えたら、ドロップの曲がもう1曲くらいあってもいいんじゃないかなという話をして、僕が口ギターでイメージをHIROKAZに伝えたのが始まり。

KOUHEI(Dr, Cho)

HIROKAZ それをギターで再現したんですけど、何回作り直したかわかんないくらい作り直しました。

GEN リフ1000本ノックみたいだったよね(笑)。

──曲のきっかけはKOUHEIさんの口ギターとのことですが、KOUHEIさんはどんな曲をイメージしていたんですか?

KOUHEI 軽くフィルターかかった冒頭のイメージだけあって。と言うのも、フェスのセトリを考えてるときに思い付いたんですけど、あのリズムがあれば曲のつなぎとかで使えるかなと。で、重たくするかどうかというのは初めのイメージでは一切考えてなかったです。

GEN それはSiMのコピーをしたのも影響してるかも(笑)。

──「DEAD POP FESTiVAL 2018」ですね。04 Limited SazabysはステージでSiMの「Amy」をカバーをしていました。その影響を受けたというこの「Alien」は、後半にRYU-TAさんのシャウトパートもあります。

GEN このバンドの要素の1つとしてRYU-TAのシャウトは大きいので、RYU-TAの出番がいくつか欲しくて。みんなに「RYU-TA出すぎじゃない?」って言われたんですけど(笑)、「俺はもっと入れたい」って言って入れました。

KOUHEI 出すぎと言うか「お前こんな声出るんや」ってぐらいの声出しててビックリしたんですよ。RYU-TAも言ってたやん、「俺もこんな声出るとは思わんかった」って(笑)。

RYU-TA 思わんかった(笑)。

HIROKAZ 初めて聴いたらビックリしちゃうよね(笑)。

──GENさんのボーカルとのギャップも面白いですよね。歌詞はどのようなイメージで?

GEN 初めは実験されてる宇宙人を助け出す、みたいなSFっぽいストーリーで書いてたんですけど、差別とか移民問題へのヘイトの要素も入ってきて、一言では説明できなくなりました。

KOUHEI 僕はいまだに全然わからん(笑)。一生解読できんわ。

GEN (笑)。

08.

Kitchen

──続いては「Kitchen」。ユニークなギターリフが印象的な曲です。

KOUHEI この曲はGEN以外の3人でスタジオに入ってたときに、HIROKAZに「バカっぽいフレーズ弾いて」って言って出てきたフレーズがもとになってて。

GEN この曲が一番、HIROKAZ節が炸裂してる気がします。

RYU-TA(G, Cho)

HIROKAZ 僕はアルバムの中でこの曲が一番好きですね。中でも懐かしさのあるBメロが特に好き。

KOUHEI それこそこのBメロは、昔の僕だったら嫌がってたようなアレンジで。

GEN あー、KOUHEIは嫌がりそう。

KOUHEI このテンポでやったらちょっとダサくなりそうな気がして。でも歌詞が乗ったら全然違う聞こえ方で、04 Limited Sazabysっぽくなっていたのですごいなと思いました。

──間奏なしでAメロ、Bメロ、サビまで一気にいく構成にも驚きました。

KOUHEI これだけ間奏っぽい間奏がない曲は初めてかもしれないですね。

GEN 落としどころを作ろうか悩んだんですけど、間奏を入れない状態がすでにキャッチーだったので、そのまま突き進もうと。

KOUHEI 歌詞の面白さも相まって、間奏がないことで展開がコロコロ変わっていくような印象になるのは面白いなあ。「そろそろあいつ」っておばけのこと?

──おばけ?

RYU-TA 当時、レコーディング中にスタジオによくおばけが出てたんですよ。

KOUHEI そうそうそうそう。だからその話かと。

GEN いや、ここで言ってる「そろそろあいつ」っていうのは自分に押し寄せる不安みたいなものを表していて。

KOUHEI そうなんだ。

──確かに、歌詞に登場する「25時半」なんかは急に不安が押し寄せてきやすい時間帯ですよね。

GEN そう、2番には「28時半」になるんですけど、3時間経っても眠れてないっていう。

RYU-TA その状況、わかる(笑)。

──「Kitchen」と「基地」をかけてストーリーが展開していくのも面白いです。

GEN その連想ゲームみたいな感じが深夜っぽいですよね。「nem...」(「monolith」収録曲)みたいな。

KOUHEI あとこの曲には「フィクション」って単語が入ってるよね。

GEN そうそう。「フィクション」とか「泳ぎたくなる」とか、僕らのファンだったらピンと来るであろう言葉を入れました。

──今作ではこの曲に限らず、過去曲のタイトルや歌詞なんかが随所に散りばめられていますよね。

GEN はい、10周年なんで、意図的に入れてみました。いろんなところにあるので、見つけてもらえたら。

──あと「Kitchen」の歌詞には愛猫家のGENさんらしい、猫にちなんだフレーズもたくさん出てきます。

GEN 「にゃんゴロ にゃんゴロ」言ってますもんね。確かに、猫を歌詞に登場させたの初めてかも。

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