3月12日と13日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて、KDDI主催のライブイベント「音楽と行こう SUPER LIVE Presented by au」が開催される。
「音楽と行こう」は2022年、配信ライブをはじめとした映像コンテンツを通じて全国各地の魅力を発信するプロジェクトとしてスタート。4回目となる今年は「未来へつなぐ、2マンライブ!」というテーマのもと、音楽の魅力を直接に届ける有観客のツーマンライブとして行われる。毎年さまざまなアーティストが出演しているが、今年はDAY1にcoldrainとハルカミライ、DAY2に04 Limited SazabysとWurtSが出演する。
音楽ナタリーでは来る対バンに向けて、DAY2より「音楽と行こう」に2回目の登場となる04 Limited SazabysのGEN(Vo, B)と、WurtSにそれぞれインタビュー。お互いの音楽に対する印象、「音楽と行こう」への出演オファーが届いたときの思い、ライブアーティストとしてのこだわりなどを明かしてもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ
公演情報
音楽と行こう SUPER LIVE Presented by au
DAY1
2025年3月12日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
coldrain / ハルカミライ
DAY2
2025年3月13日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
04 Limited Sazabys / WurtS
アウェーであればあるほど“おいしい”
──04 Limited SazabysとWurtSさんのツーマンで行われる「音楽と行こう」のオファーが来たとき、どんなことを思いましたか?
シンプルに面白そうだなと。WurtSくんと一緒なのもいいなと思ったし、悩むことなく「出たい」と思いました。
──フォーリミはこの「オトイコ」に2023年のオンライン開催時にも出演しています。
あの頃は社会全体に閉塞感がある中、auさんをはじめいろんな方々のお力添えもあって「オトイコ」ですごく楽しい1日を過ごせました。今度はそれをたくさんの人数でシェアできると思うとすごくうれしいです。やっぱりオンラインでは伝わらないものがあると思うし、同じ空間にいて、その場で感じた生の感情をダイレクトに伝えられるというのは音楽の健全なあり方だと思うんですよね。それが好きでやってるところもあるし、個人的にはそのほうが気合いが入ります。
──ツーマンライブという形には独特のよさがあると思いますが、GENさんとしてはどういうところが魅力だと思いますか?
フェスとかでたくさんのアーティストがいるときだと、ほかの出演者とあんまり絡めなかったりすることも多いんですけど、ツーマンは入りから打ち上げまでコミュニケーションを取れるタイミングがいっぱいあるのがいいですよね。シンプルに相手のステージをちゃんと観られるというのもありますし。
──おっしゃる通りフェスとは明確に違いますし、ワンマンとも違う魅力がありますよね。
自分たちを観に来てくれるお客さんの前でやれるのはありがたいし、うれしいけど、そうじゃない人たちの前に立ったときの「アウェーでどれだけ戦えるか」と挑む感じが好きなんですよね。アウェーであればあるほど“おいしい”と感じるタイプなんで。
──それはすごくバンドマンっぽい考え方ですね。そもそもライブというものはGENさんにとってどういう意味合いを持つものですか?
バンド活動とされるものの中には制作だったりプロモーションだったりいろんな形がありますけど、音源のリリースを始める前からずっとやってきたのがライブで。僕らにとってはライフワークというか、一番軸にあるものですね。ライブがない人生は考えられない。それこそコロナ禍のときにそれを奪われたときは、自分の中の核の部分がなくなったような感覚でした。生活の一部としてなくてはならない、当たり前にそこにあるものって感じがしますね。
──極端に言えば、バンドをやる意味がそこにある。
そうですね。やっぱり音源を出すのもライブをやるためですし、ほかのいろんな活動にも、すべてライブをやるために出て行っている感覚です。
──そもそもバンドってそういうものですよね。ライブハウスで生まれ、ライブハウスで生きる生き物というか。
僕はわりとそういう感覚ですね。それで言うと、WurtSくんみたいに1人で意欲的に音楽を作るタイプのアーティストは僕からすると異質な存在で。僕が持っているバンド像みたいなものとはまた違う感覚を持って育ってきた世代、ニュータイプだと思うので、そういった人たちと一緒に音楽をやれるのはすごくうれしいです。
圧勝したい
──WurtSというアーティストの特徴を説明するとしたら、どんなふうに言葉にしますか?
俳優さんでいうと、カメレオン俳優みたいな感じですね。なんだってできるし、なんでも取り入れてやっている音楽家という印象があります。バンドサウンドをやってもいいし、クラブミュージックっぽいものをやってもいい。その自由自在さはうらやましくも感じますね。WurtSくんに限らず、今の若い世代を見ているとそれはすごく感じます。ネットネイティブ世代ならではの感覚なのかなって。
──WurtSさんがカメレオン俳優なら、フォーリミは何俳優ですか?
僕らはもう、ずっとVシネマに出てるような……いや、わかんないですけど(笑)。WurtSくんみたいになんでも器用にできるタイプではないので、最初に好きになったものを信じ続けて愚直にそれだけを貫く、特定の役しかやらないタイプの俳優だと思います。
──個性派俳優みたいな。
そんな感じかもしれないですね。僕らがWurtSくんくらいのときは「バンドとはこうでなければいけない」みたいな、はみ出しちゃいけない規範のようなものを感じながら活動していた感覚も今思えばあるんですけど、彼らは本当に自由ですよね。古い音楽にも新しい音楽にもネットでフラットに出会うことができて、自由にネットで発信できる世代なので、そこはやっぱりうらやましくも感じます。
──逆に、何か共通点は感じますか?
なんでしょうね? やっぱ音楽が好きっていうのは共通点だと思います。自分の音楽に自信を持ってやってるというところはお互いすごくあるかなと。まあ、ミュージシャンは全員そうですけど。
──そんなWurtSさんとの対バンに向けて、どんなことを楽しみに臨みますか?
WurtSくんの音楽はすごくカッコいいし、個人的に好きな曲もあるし、バンドメンバーも一流の方々なので、まず間違いないだろうなという安心感はありますよね。ただやっぱり、ライブという世界で生きてきたキャリアで言えば僕たちが圧倒的に長いので、その差を見せつけたい気持ちはあります。圧勝したい。
──圧勝(笑)。素晴らしいです。
あははは。もちろん「ぶっ飛ばしてやる」みたいな意味ではないですけど。WurtSくんのお客さんたちを置き去りにするんじゃなくて、ちゃんとプロとして楽しませてあげたうえで好きになってもらいたいな、という気持ちです。
──具体的にはどういう姿を見せたいですか?
ステージというのはそこに立つ人の生き様をさらけ出せる、さらけ出していい場所だと僕は思っていて。その“むき出し感”というか、裸になっている感じは見せたいかもしれない。
──取り繕ってカッコつけるのではなく。
というよりも、心の底からカッコつけるみたいな感じですかね。恥も外聞も捨ててカッコつける(笑)。本気で自分に酔うじゃないですけど、そのさまを見て人は興奮するものだと思うので。
──WurtSファンに何か言っておきたいことはありますか?
うちのお客さんのテンションが高すぎて、WurtSくんのお客さんたちはびっくりしちゃうかもしれないけど、嫌いにならないであげてほしいです(笑)。モッシュやダイブが起こりうる現場ですし……やっぱりライブハウスというのは普段溜め込んでいるものを解放していい場所だと僕は思っているので、それくらいWurtSくんのお客さんにも目いっぱい楽しんでもらえたらいいなと思っています。
生々しいものが求められていくようになる
──今回のイベントテーマが「未来へつなぐ、2マンライブ!」となっていますが、GENさんが「未来の音楽シーンがこうだったらいいな」と思っていることは何かあったりしますか?
今ってすごく制作環境が発達して、個人でもクオリティの高い音楽が簡単に作れるようになっていますよね。AIとかも急速に進化してるし、誰もが手軽に完成度の高い音源を作ることができる。だからこそ、逆に生々しいものがどんどん求められていくようになるんじゃないかなと個人的には思っていて。録音でも一発録りが今以上に価値を持つようになったり、それこそライブがもっと求められていくようになったらいいなと思いますね。
──実際、フォーリミの音源作りはそっちの方向性ですよね。
そうですね。例えば歌のピッチとかも今は簡単に直せるし、バチバチに直そうと思えばいくらでも手を入れられるんですけど、それをやればやるほど僕という人間が歌っている意味から離れていっちゃう気がするんですよ。そのライブ感やはみ出した部分にこそ人はキュンとくるものだと僕は思っているので、音源を作るときにはそこをけっこう心がけているかもしれないですね。
──形を整えすぎると、どうしても想定の範囲に収まってしまいやすいというのはありますよね。
僕らのようにライブハウスでやっているバンドを観に来るお客さんって、そんなふうに整ったものは求めていない気がするんですよ。クラシック音楽やオーケストラが好きな人の場合は「完璧な演奏や高い表現力こそが素晴らしい」って思うのかもしれないですけど、僕らはそんな高級料理じゃなくて、街の定食屋みたいな感じでやっているので。
──行くたびに味が違うのがいいんだと。
そのときに入った食材で出せるものを楽しむというか、そのときの瞬間的なモードを体感することを僕自身が求めていますね。例えば僕が銀杏BOYZの音源を聴いていて心を撃ち抜かれる瞬間って、ミネタ(峯田和伸)が勢い余って咳きこんじゃってる部分だったりするんですよ。そのテンション感みたいなものって、べつに音楽的な素養があろうがなかろうが伝わるものだと思うんですよね。
──これはあくまで個人的な感覚ですが、キレイに整った音楽しか聞こえてこない状況に大衆が飽き始めているのは少し感じます。
そうなっていくのが自然だと思うんですけどね。ちょっと話は脱線しますけど、今って写真の加工アプリが全盛じゃないですか。加工するのが当たり前みたいな感じになっていて、確かにみんなすごくキレイなんだけど、全員似たような顔になっちゃうみたいな。その人が持っている個性やオリジナリティが失われて、平均化しちゃってる状態がよしとされている。それって別にその人である必要ないよな、と僕なんかは思っちゃうんですよ。
──おっしゃる通りですね。
まったく加工できない「BeReal」みたいなアプリが流行ったのはその反動もあると思うんですよね。「なんかわかんないけどカッコいい」とか「なんかわかんないけど異様に興奮する」みたいな、説明のつかない価値がどんどん認められる時代にここからなっていくんじゃないかな? いや、なったらいいなと思っています。
──そんな未来へ向けて、WurtSさんをはじめとした若手のアーティストに期待することはありますか?
やっぱり、僕じゃ思いつかないような新しい音楽を聴かせてもらいたいですよね。最近、マンガとかを読んでても「これだけ出尽くしたと思われている中で、まだ新しいものって生まれるんだな」ってよく思うんですよ。それと同じように、音楽でもまだまだ新しい概念とか新しい切り口は生まれてくるはずだと僕は思っているので、そんな音楽に触れられることがすごく楽しみです。
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