スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH」30周年ライブ盛況、“現在進行形のSDP”も体現

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スチャダラパーが1995年にリリースした、日本のヒップホップシーン、そして音楽史に燦然と輝く傑作アルバム「5th WHEEL 2 the COACH」。その発売から30周年を記念したライブ「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」が、9月2日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて行われた。

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

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開場を待ち切れない観客がオープン前から列をなし、ファンやアーティスト、関係者が挨拶を交わすLINE CUBE SHIBUYA前。その光景からも、いかにこの日が待ち望まれ、このアルバムが愛されてきたかを感じさせられる。チケット完売となった客席には、オープンとともにDJのセク山がセレクトしたBGMが流れる。また客席にはこの日のために制作された「余談号外」が配布され、「5th~」の制作秘話などに目を通し、オーディエンスは開演を待った。

前半では最新曲から過去へとさかのぼって代表曲を披露

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

18時に照明が落ちると、DJのSHINCOとサポートギターのKASHIFが登場し、KASHIFが時事ネタを織り込んだギタープレイを披露。そのネタに気付かない奴はもういない……のであった。そしてANI、BoseのSDPの2MCと、サイドキック&ゲストのロボ宙がステージに上り、スチャダラパーの最新曲である「ビート道 feat. ロボ宙」でライブはスタート。続けて、トークボックスのLUVRAWが合流し「リンネリンネリンネ feat. ロボ宙 & LUVRAW」へ。「B-BOYブンガク」から引用された「オレンジの街灯」という歌詞など、過去と現在と未来をつなぐ楽曲のメッセージに、会場の熱気が高まっていく。そのままBoseが「かせきさいだぁインザハウス!」とゲストのかせきさいだぁをステージに呼び込み、「ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ」をパフォーマンス。曲間での「飽きずに懲りずにやっております!」というBoseの言葉や、ステージ上でのかせきとの変わらぬ関係性に、会場は喜びの手拍子に包まれた。

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

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「『5th~』の記念ライブなのに、最新のスチャダラパーをお見せしております」というBoseの言葉からもわかるように、最新曲から過去曲へとさかのぼる構成となった前半のセットリスト。「昔のスチャダラパーが聴けると思ったのにね。でもアルバムが1時間弱で、始めるとすぐ終わっちゃうから」と話すANI。「だから『最近のSDPはこんな感じなんです』という時間。ずっとやってるとEGO-WRAPPIN'とも一緒に曲が作れるんです」というBoseの言葉に続き、EGO-WRAPPIN'とのコラボ曲「ミクロボーイとマクロガール」へ。続く「レッツロックオン」では、フックでの大合唱やレスポンスが会場に大きく響いた。

みんな30年後にワーワーやってると思ってなかったでしょ?

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

「みんな『5th~』の30年後にワーワーやってると思ってなかったでしょ? ヘタしたら孫とかいるのに……」(Bose)、「『レッツロックオン!』って手を上げるとは」(ANI)、「今日はみんなも手を上げて、可動域を広げていこう。明日になったら『肩が軽いわ』と感じるから(笑)」(Bose)という世代トークに続いて、「平凡中庸パンチ」から「ザ・ベスト」へ。ノスタルジーを歌いながら、そこに溺れず「今が最高」と歌うSDPに大きな拍手が寄せられる。そしてKASHIFのギターに、SHINCOがベースとビートをDJで被せ、LUVRAWのトークボックスが絡むことで、より芳醇な形に再構築された「ライツカメラアクション」から「ソング オブ ザ ヒル」「LET IT FLOW AGAIN feat. ロボ宙」と、アルバムごとに代表曲が次々披露されていく。続くMCでは、「30年前の渋公も来てくれた人もいるでしょ? SDPのライブは生存確認だってよく言ってるけど、みんな生きて、会場に来れてよかった。僕たち3人だって、そろってステージに立ててるのもありがたいこと。でも、あのときのかわいかった我々やお客さんは、“もう~い~な~い~”」と、冒頭のKASHIFのギターを引き継いだ、感謝とシニカルさを織り交ぜた、SDPらしいトークが繰り広げられた。

「5W1H」ではBoseが「素晴らしい曲をありがとう! DAVE!」と、2023年に亡くなった、この曲のプロデューサーであるDe La SoulのDave a.k.a.TRUGOYへシャウトアウト。現在もSDPのライブでは定番となっている「アーバン文法」、スクリーンに短冊形8cmCDのジャケットが映し出された「大人になっても」、そして「アフター ドゥービー ヌーン」が披露され、前半戦が終了した。

後半は「5th WHEEL 2 the COACH!」全曲再現ライブ

インタールードではスクリーンに1995年と2025年のSDPの写真がオーバーラップする映像が流れる。続いてSDPの3人が、シングル「From 喜怒哀楽」やアルバム「5th WHEEL 2 the COACH!」のジャケットを撮影したANIとSHINCOの旧実家付近を訪れ、当時を振り返るシークエンスが上映された。そして当時に近い服装に着替え、当時と同じアングルで、現在の3人が「5th~」をオマージュした写真の撮影風景へと続く。

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

「AM0:00」のビートが流れると、SDPの3人が再びステージへ。「5th WHEEL 2 the COACH!」というコール&レスポンスに続いて、スクラッチの音が響き「B-BOYブンガク」へとアルバムの曲順通りにライブは展開する。オーディエンスはタフなビートに頭を振り、スクリーンに映された歌詞をなぞり合唱し、「ANI、Bose、SHINCO」というフックをステージに呼びかける。大歓声に包まれたのは「ノーベルやんちゃDE賞」。 音楽コントとも言えるこの曲では、ANI演じる小松伸郎さんが、セリフパートのラストをオリンピックの名言でまとめるという、“画期的などうでもよさ”に会場から笑いが起きる。「今日来た人はみんな運動不足! 渋公全員そろいもそろって、我々も運動不足!」という、なぜか全員が健康について考える結論になった「南極物語」に続き、スクリーンには1995年の渋谷公会堂でのライブを収録したVHS「RESCHADA LIVE」からピックアップされたナオヒロックの映像が上映され、2025年現在の映像とシンクロする中、ステージにもナオヒロック本人が登場。SDPと「今が1995年だと思い込んでいるナオヒロック」というSF的なコントが展開される。そして「今年は95年だっちゅーの! チョベリグ! チョベリバ!」という恐怖すら感じるナオヒロックの超強引なコールから「5th WHEEL 2 the COACH」へ。この曲のラストのスネアの一打から、流麗なビブラフォンの音色がつながるという、アルバム通りの質感で披露された「サマージャム'95」への丁寧な展開は、アルバムの再現ライブならではと言えるだろう。

ジゴロ7集結

「ジゴロ7」パフォーマンスの様子。(撮影:三浦憲治)

「ジゴロ7」パフォーマンスの様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

「ジゴロ7」パフォーマンスの様子。(撮影:三浦憲治)

「ジゴロ7」パフォーマンスの様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

脱線3のロボ宙、M.C.BOO、KING3LDK、そしてSDPの映像作品を数多く手がけるタケイグッドマンが登場し、フルメンバーでの披露となった「ジゴロ7」。振りがそろっていないサークルダンスや観客への指差しなど、曲の内容通りの悪ふざけが展開され、「ライブを遊びだと思ってた頃を思い出した」とメンバーたちは当時を振り返る。そして、「今日の『5th~』のパートは、全部のトラックをレコードで流してるんですよ。だからアナログに収録されたバージョンでやってみましょう」と、アカペラバージョンから始まった「ドゥビドゥWhat?」、SDP的話芸の真骨頂ともいえる「The Late Show」「From 喜怒哀楽」といったナンバーが続けて届けられた。パフォーマンス後にBoseは「From 喜怒哀楽」の“怒”のパートについて「ヒドいこと言ってるね。みんなが怒っていいよ。95年当時のコンプライアンス」と当時と今を比較。そう振り返ることができるのも、SDPがしっかりと活動を続け、フロントラインに立ち続けてきたからだろう。

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)[拡大]

「最後の曲になります……ってみんな知ってるでしょ」という言葉に続けて届けられたのは、「ULTIMATE BREAKFAST&BEATS」。リアレンジやバンド編成ではなく、オリジナルトラックをそのまま使用し、客演も含めて“再現”として構成された「5th~」パート。それが“現在進行形のSDP”と接続することで、結果として新たなオリジナリティを生むという構造は、アルバム再現パートの最後を飾るインスト「AM8:30」に至るまで貫かれていた。

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」の様子。(撮影:三浦憲治)[拡大]

普段のSDPのライブのような、ゆるい余談的なMCは絞られ、非常にタイトな展開となったこの日のライブ。しかし「5th~」パートが終わり気が抜けたのか、ドラマ「北の国から」の再放送の話が止まらなくなるANI。「す~ぐ、そういう話。でもみんなもこういう昔の話ばっかりしてるでしょ?」とBoseも観客に同意を求める。「じゃあ最後の1曲盛り上がって行きましょう!」という言葉から「GET UP AND DANCE」へ。Boseの「Little Bird Nationインザハウス!」という呼び込みに応え、スチャの盟友であるLittle Bird Nationのメンバーが多数登場。会場も大合唱と手拍子でその共演を祝福した。そして「最後までワイワイありがとうございました。結局、我々はこの曲で始まりました」というコールに続き、日本屈指のレアグルーヴであるドラマ「太陽にほえろ!」のメインテーマが流れ、「スチャダラパーのテーマpt.1」へ。「セイ・オイース! もういっちょオイース!」というコール&レスポンスに会場は渦を巻くような熱気に包まれ、ライブは大団円を迎えた。

豪華ゲストを迎える35周年イベント発表

バックステージにて、スチャダラパーと当日の出演者たち。(撮影:三浦憲治)

バックステージにて、スチャダラパーと当日の出演者たち。(撮影:三浦憲治)[拡大]

ライブ終演後には、「いろいろありましたけど、年末はこういうのやります」というBoseの言葉から、12月6日に神奈川・横浜BUNTAIにて開催されるライブイベント「YOKOHAMA UNITE 音楽祭 2025 presents チャンピオン・カーニバル ~スチャダラパー35 周年シリーズファイナル~」の告知画像がスクリーンに映しだされる。そして告知画像には「豪華ゲスト陣近日発表」の文字が躍る。アントニオ猪木VS藤波辰爾、ジャンボ鶴田VS天龍源一郎など、数々の名勝負と伝説を生み出した横浜文化体育館。2024年に横浜BUNTAIとして生まれ変わったこの会場で開催される、一大イベントの発表に会場から大きな拍手が沸き起こった。「5th~」から30周年という節目のライブを完売満員の形で完成させたSDP。そして35周年のラストが横浜BUNTAIにてどのように締めくくられるのか、その期待をしっかりと感じさせる充実のライブは、こうして幕を閉じた。

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セットリスト

スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」2025年9月2日 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

01. ビート道 feat. ロボ宙
02. リンネリンネリンネ feat. ロボ宙 & LUVRAW
03. ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ
04. ミクロボーイとマクロガール
05. レッツロックオン
06. 中庸平凡パンチ
07. ザ・ベスト
08. ライツカメラアクション
09. ソング オブ ザ ヒル
10. LET IT FLOW AGAIN feat. ロボ宙
11. 5W1H
12. アーバン文法
13. 大人になっても
14. アフター ドゥービー ヌーン
15. AM0:00
16. B-BOYブンガク
17. ノーベルやんちゃDE賞
18. 南極物語
19. 5th WHEEL 2 the COACH
20. サマージャム'95
21. ジゴロ7
22. ドゥビドウWhat?
23. The Late Show
24. From 喜怒哀楽
25. ULTIMATE BREAKFAST & BEATS
26. AM8:30
<アンコール>
27. GET UP AND DANCE
28. スチャダラパーのテーマPt.1

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showgunn @showgunn

【ライブレポート】スチャダラパー「5th WHEEL 2 the COACH」30周年ライブ盛況、“現在進行形のSDP”も体現(写真23枚) https://t.co/pspZg6dJ5r
改めて最高だったな。。。

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