岡田将生×川口春奈が語る「聖地X」 / オール韓国ロケ!確実に裏切られる“エクストリームホラー”の誕生

岡田将生が主演、川口春奈がヒロインを務める「聖地X」が11月19日に全国公開。同時にTELASA(テラサ)とauスマートパスプレミアムでの独占配信がスタートした。

本作は「SRサイタマノラッパー」シリーズや「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」で知られる入江悠が、劇団イキウメの同名舞台を映画化した“エクストリームホラー”。劇作家・演出家の前川知大が率いるイキウメは、SFやオカルト、ホラーといった超常的な世界観から人間の心理を掘り下げるオリジナル作品を生み出してきた。入江は“聖地X”の舞台を、原作の架空都市から大胆にも韓国に置き換え映画化。撮影は1カ月に及ぶオール韓国ロケが敢行された。

映画ナタリーでは本作の公開・配信を記念し、主人公・輝夫とその妹・要を演じた岡田と川口の対談をセッティング。ホラーに尽きない映画の魅力と充実の韓国ロケについて聞いた。

取材・文 / 奥富敏晴撮影 / 間庭裕基

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“聖地X”とは…?

「この店やっぱり呪われているかもしれません」。この世には立地はいいのに、なぜかどんな店も長続きしない不毛の土地がある。父親が遺した韓国の別荘で暇を持て余しながら小説家を目指す輝夫と、夫に愛想を尽かして韓国にやって来る要。彼女は韓国でオープン直前の和食居酒屋で、日本にいるはずの夫・滋に遭遇する。行方不明者の発生、老夫婦の謎の餓死、そして滋のドッペルゲンガーの出現。次々と不可解な現象が巻き起こる“聖地X”で、2人が直面する惨劇とは……?

「聖地X」

「聖地X」

岡田将生×川口春奈インタビュー

滋と滋2(しげるツー)

──お二人が演じられた輝夫と要は、韓国で日本に置いてきたはずの要の夫・滋に遭遇する兄妹という役どころでした。滋役の薬丸翔さんの中で本物ともう1人の演じ分けはあったと思うんですが、接するお二人は演じるうえで何か違いなど意識されましたか?

川口春奈 滋と滋2(しげるツー)に対してってことですよね。

──もう1人の滋は「滋2」と呼ばれているんですね(笑)。

川口 はい。滋と「滋2」ですね。

──それは現場で自然に呼ぶように?

岡田将生 いえ、台本に書かれていて(笑)。現実的に滋が2人いると認識してからは、まだ受け止めきれないけれど、輝夫としては妹のことを考えて行動をしていて、こんな男とは早く離婚したほうがいいという頭になっていたので。あんまり、意識的に演技を変えようという気持ちはなかった気がします。

川口 予期せぬことが目の前で起きてしまった、みたいな。それに対しては、みんな冷静じゃなかったですね。要にとっては浮気をしたとはいえ旦那だし、いろんな複雑な気持ちもあってパニック状態でした。見てはいけないものを見てしまった、という感覚が強かったので私も意識的に変える気持ちはなかったですね。

岡田将生

岡田将生

川口春奈

川口春奈

兄妹それぞれの成長(岡田)

──要は浮気と風俗通いを繰り返す滋に愛想を尽かして、兄のいる韓国にやってきます。“聖地X”の謎と同じくらい、要と滋の夫婦関係の行方が重要なドラマの軸となっていました。

川口 そうですね。「滋なんていなくなってしまえ」みたいな気持ちもあれば、いざ周りから「離婚しろよ」と背中を押されると、それはそれで……。やっぱり滋に対して情もある。滋が浮気した事実を信じたくない気持ちも、滋のことを信じたい気持ちもある。向き合い方の葛藤はすごくあったと思います。

薬丸翔演じる滋(左)と川口春奈演じる要(右)。

薬丸翔演じる滋(左)と川口春奈演じる要(右)。

──「なんで滋みたいなダメ男と……」と思いつつ、要からは結婚や恋愛の当事者にしかわからない感情も見えてきました。

川口 “聖地X”であれだけのことが短期間で巻き起こって。ずっとモヤモヤしてた部分が削ぎ落とされて、ちょっとずつ変化していく。1人の女性として、1人の人間として強くなれた瞬間もある。きっと自分の中で何かが腑に落ちた最後の要は、本当にポジティブでフラット。韓国に来たときとは、全然違う成長を遂げているんじゃないかなと思います。

左から川口春奈、岡田将生。

左から川口春奈、岡田将生。

──一方で岡田さん演じる輝夫の成長物語の側面もありますね。輝夫は親の遺産で暮らしながら、小説家を目指すキャラクターでした。

岡田 輝夫の部屋の美術セットにプラモデルが置いてあるんです。でも最後まで完成していない。多趣味だけど何をやっても本当に中途半端な兄なんです。ドッペルゲンガー騒ぎにも最初は自分の小説の題材になるんじゃないかと思って面白半分で興味を持っていた。それがいつの間にか、妹の心配に変わって兄としての姿が現れてくる。

──最初は本当にダメダメな兄でした。

岡田 実は輝夫は自分が脚本を読んで想像していたものとは正反対のキャラクターになりました。最初はもっと地味で虚勢を張ったお兄ちゃんのほうがいいのかなと考えていて。入江監督と話し合っていく中で、より挙動不審な弱々しい感じの姿になりました。監督と相談しながら撮影できたことで信頼関係が生まれて、一緒に映画を作れている感覚になりましたね。

「聖地X」

「聖地X」

──ある瞬間まで輝夫が誰とも目を合わせないアイデアはどのように生まれたんでしょうか。

岡田 それも監督と話し合いながら決まっていきました。僕からも「こういう感じにしましょう」とか、提案して少しずつ役が膨らんでいって。家族との向き合い方、自分自身との向き合い方、兄妹それぞれで一緒に前へ進めた感じが出ていると思います。入江さんと細かく話したわけじゃないですけど、そういうのが少しでも垣間見えるように意識はしてましたね。