映画ナタリー PowerPush - Who is Xavier Dolan? / 「Mommy/マミー」グザヴィエ・ドラン

映画界の未来を担う俊英に独占インタビュー

僕の一部を人の人生に少しでも残せたらうれしい

──映画を作ることに苦しみを感じることはありますか?

「Mommy/マミー」には、母親の幸せを願いながらも不器用な愛情表現しかできない少年の姿が描かれている。

映画作りに苦しみは感じないな。苦しみを感じるとしたら映画を作ってしまったあとだね。いろいろ責任があるし、たくさん望まれていることもある。いろんな義務があるんだ。苦しみはそういうところから生まれてくることがあるけど、作っている最中はまったく苦しくないよ。ただし、脚本に関しては過去の苦しみがモチベーションになることがある。癒えた傷はインスピレーションになったりするんだ。だから映画作りは苦しくないけれど、苦しみが映画作りのインスピレーションになることはあるという感じかな。

──あなたにとって映画は自己を表現する手段である以外にどういう意味を持つものですか?

自己表現もあるかもしれないけれど、そういう考えは自己中心的だと思うんだ。映画作りにはほかの側面もあるからね。パーソナルな部分もあれば、みんなと共有する部分もある。共有することで、題材や物語を皆に楽しんでもらえるか、またそれを理解してもらえるか知ることができるんだ。映画を通して僕の一部を人の人生に少しでも残せたらうれしいと思っているよ。シーンだったり、感情だったり、教訓だったり、セリフだったり、一瞬でも良いので作品から自分のことや他人のことを理解するヒントを受け取ってほしいんだ。こうやって大きな規模で何かを残せることが映画の素晴らしいところだと感じているよ。

──次回作の「The Death and Life of John F. Donovan(原題)」は、ジェシカ・チャステインやスーザン・サランドンらハリウッド俳優と組むビッグバジェットの作品ですが、撮影環境が変わっても守っていきたいと思っていることはありますか。

「Mommy/マミー」撮影中のグザヴィエ・ドラン。

すべてを守っていきたいと思っているよ。ただ、困難に立ち向かったり、誰かに戦いを挑んだりするわけではないから、それほど神経質にはなっていない。少しイギリスでロケするけど、ほとんどの撮影はカナダで行うから、僕を支えてくれた人たち、信頼している人たちに囲まれて撮影できるんだ。彼らのいない状況で仕事したいとは思わないね。今までとの違いがあるとしたら、今回の作品は英語劇ということだけ。特別なシステムを使って映画を撮るわけでもないし、何かルールを破ろうとも思っていない。僕はただ映画を撮るだけさ。

監督作フィルモグラフィ

「マイ・マザー」

「マイ・マザー」発売中 / 発売元:ピクチャーズデプト / 販売元:TCエンタテインメント

ドラン19歳の監督デビュー作。母と息子の関係に生まれる愛情と葛藤がテーマになっており、母親と衝突を繰り返しながら成長していく少年ユベールをドラン本人が演じた。第62回カンヌ国際映画祭では監督週間部門に選出され、若者の視点賞など複数の賞を獲得した。

「胸騒ぎの恋人」

「胸騒ぎの恋人」発売中 / 発売元:ピクチャーズデプト / 販売元:TCエンタテインメント

女友達のマリーと同じ男性に恋をした青年、フランシス。彼の視点から男女の友情と三角関係を描く。若者の苦悩や駆け引きを鮮やかに表現しており、この作品でドランは、カンヌ国際映画祭のディレクターより「非常にエキサイティングな新世代の1人」と高く評された。

「わたしはロランス」

「わたしはロランス」2015年5月2日発売 / 発売元:アップリンク / 販売元:TCエンタテインメント

男性教師のロランスは、女性になりたいという願望を恋人のフレッドに打ち明ける。2人はお互いを思い合っていながらも、受容と拒絶を繰り返す……。主役を務めたのは、フランソワ・オゾン監督「ぼくを葬る」でゲイの写真家を演じたメルヴィル・プポー。

「トム・アット・ザ・ファーム」

「トム・アット・ザ・ファーム」2015年5月2日発売 / 発売元:アップリンク / 販売元:TCエンタテインメント

ミシェル・マルク・ブシャールによる同名の戯曲を原作とした、ドラン初のサスペンス。主人公のトムは同性の恋人、ギョームを亡くした。葬儀へ出席するために彼の家を訪れると、ギョームの母親からトムがそれまで感知していなかった兄の存在を知らされる。

「Mommy/マミー」2015年4月25日公開
「Mommy/マミー」

架空の世界のカナダで、スキャンダラスな法律が成立した。発達障害児を持つ親が何らかの困難に陥った場合は、自らの意思で子の養育を放棄し、施設に入院させる権利が保障されたのだ。ダイアン・デュプレは15歳の息子、スティーヴと暮らすシングルマザー。ADHD(多動性障害)があるスティーヴは、他人に対して攻撃的な態度を取りがちで、彼の面倒を見ることにダイアンは不安を感じている。そんな2人はある日、引きこもり気味で吃音の悩みを抱えた隣人、カイラと知り合う。次第に親交を深め、家族に似た関係性を築いていくが……。

スタッフ

監督・脚本・製作:グザヴィエ・ドラン

キャスト

ダイアン:アンヌ・ドルヴァル
カイラ:スザンヌ・クレマン
スティーヴ:アントワン=オリヴィエ・ピロン

Photo Credit by Shayne Laverdière / (c)2014 une filiale de Metafilms inc.

グザヴィエ・ドラン

グザヴィエ・ドラン1989年3月20日生まれ、カナダ出身。6歳より子役としてキャリアをスタートさせ、19歳のときに「マイ・マザー」で監督デビュー。これまでに4本の長編映画を発表し、すべての作品がヴェネツィア、カンヌなどの主要な映画祭へ正式出品された。「Mommy/マミー」ではジャン=リュック・ゴダール監督とともに、カンヌ国際映画祭の審査員特別賞に輝いた。ハリウッドを舞台にした次回作「The Death and Life of John F. Donovan(原題)」は、セレブリティの日常やマスメディアの洗脳を暴くブラックコメディ。ジェシカ・チャステイン、キット・ハリントン、スーザン・サランドンらを起用し、初の英語劇に挑戦する。俳優として出演した「エレファント・ソング」の公開を2015年6月に控えている。