映画ナタリー Power Push - 「MAX THE MOVIE」
大の大人が真面目に作り上げたギャグ満載のアクション映画
映画の企画立案から本編完成まで5カ月。マックスむらいのもとに最高のスタッフが集い、公開日まで勢いで突っ走ってきた。映画の完成は完成披露試写会の前日。製作の過程にはどんな苦労があったのだろうか。話を聞くと、“苦労などは微塵も感じず、ただ面白いと思うことをただ真剣にやってきた”という大人たちの姿があった。
バカだけど本気でやってるものにしようって思った(山口)
──むらいさんが映画を作りたいと思ったのは、どういった背景があったのですか?
マックスむらい ニコニコ動画やYouTubeで動画制作を延々とやってきた中で、映画みたいなものを作りたいという思いがずっとあったんですよ。ただ、どう作っていいかわからない。そんなときに「Kung Fury」というスウェーデンの短編映画を観たら、すげえバカでヒドい(笑)。でも、私を主人公にして映画を撮るのであれば、これくらいバカなものだったら成立するなと思って。そこで映画を撮れる人が周囲にいないかと考え、中野監督に「いろいろ教えてください」とお願いしたんです。
中野裕之 でも、最初は予告編を作ってくれと言われたんです。お話をいただいて打ち合わせに行ったら、映画本編ができていない。予告編は本来できあがったものから映像を抜粋して編集するのに、まず予告編を撮ってくれって(笑)。とりあえず、どんなものにしたいのか、むらいさんにやりたいことを話してもらったんですよ。「アルマゲドン」のあの爆発をやりたいとか、いろいろ言うから「すべて実現させたら35億円くらいかかる」と教えました。さすがに、むらいさんも1秒くらい間を空けて「ちょっと、高いですね……」となったので、脚本家の小林弘利さんにシノプシスを3本書いてもらい好きなものを選んでもらったんです。そこから予告編を作って、今度は本編を作らなきゃいけないってことになったけど、むらいさんの要望は規格外でファンキーすぎる。これを実現できるのは、雄大監督しかいないなと思って、僕はプロデュースにまわって完全にバトンタッチしました。
山口雄大 「バカ映像だったら君のほうが向いてるでしょ」と中野監督に言われて、「確かにそうかもしんないです。がんばります!」と引き受けて、むらいさんにお会いしたんです。それでディスカッションをする中で、この人も本気でバカをやれる人だなって感じて、だったらこっちも魂を注ぎ込めるかなと。とにかくビックリするものにして、バカだけど本気でやってるものにしようって。
──むらいさんは、山口監督の作品をご覧になっていたのですか?
むらい 拝見したことはなかったんですけど、雄大監督のお名前を聞いた頃にHuluで監督の「地獄甲子園」が配信されてたんです。「ちょうどいい」と思って、ジムでトレーニングしながら観ていたらすごくバカで面白くて。
山口 走りながら観るくらいのほうがちょうどいい作品ですから(笑)。
むらい いやいや(笑)。でも、この監督でラッキーだなと思いましたよ。
30分の作品でCG合成が240カット超え、作品の半分にCGが入っている(鹿角)
──バカを掲げているけど、CGやVFXも満載なうえに本格的ですよね。
山口 CGをふんだんに盛り込んで豪勢な画にしたいというむらいさんの希望があって、それならと何度も一緒に仕事をさせてもらっている鹿角さんのスタジオ・バックホーンに頼んだんです。
むらい 今度の「珍遊記」もそうですよね。
山口 だからテイストを理解してくれるなと。さらに今回は、制作プロダクションとしてもやってくれているんです。映画の制作ごとバックホーンがやっている。こういう内容でVFX満載にするならば、まるごと鹿角さんに任せたほうがいろんな意味でいいなとの僕の思いがあった。
鹿角剛 従来の撮り方だと、どうしてもCGや音楽のポストプロダクションを予算の残りでやらないといけなくなってしまうんです。アクションとCGが満載というコンセプトなので、そこに予算をちゃんと割けるような体制にしないとうまくいかないと思って制作もウチでやらせてもらった。
──それが功を奏して、どこを切ってもCG状態の作品に仕上がっています。
鹿角 なにしろ、30分の作品でCG合成が240カットを超えていますから(笑)。ただ、最初はこんなに多いはずではなくて、130カットくらいで想定していたんです。脚本にむらいさんやいろんな人の要望が盛り込まれて、50分ほどの内容になってしまった。それを30分のものに変更したんだけど、内容がギュッと短くなったのに反比例してCGカットが倍近くに増えてね(笑)。でも、むらいさんの要望と期待に応えました。
──パロディもてんこ盛りでしたね。冒頭に某巨人映画の巨人っぽい役で井口昇監督が出てきたり、荒廃した未来世界も「ターミネーター」が浮かびました。
山口 井口監督は、某映画で本当に巨人をやっていますからね。1人くらい本物がいたほうがいいなって。
鹿角 井口さんの作品のCGもほとんどウチがやってます。それもあって、僕のほうからも出てほしいと頼みました。
山口 強制的に。嫌だとは言わせない。
──違う作品で同じ役をやるというのも……。
鹿角 同じ役ではないですよ。なんの巨人かは明言してないですから(笑)。
むらい 誤解は困ります(笑)。
鹿角 近未来の世界に登場するドローンは、いろんなアニメや「特命戦隊ゴーバスターズ」のメカやキャラデザインを担当している森木靖泰さんにやっていただいてるんですよ。
「MAX THE MOVIE」現在YouTubeにて配信中
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016 2⽉25⽇(⽊)23:00より上映
舞台は20XX年。村井トモタケはある探しものを求めて、新宿区立最高(もりたか)高等学校を訪れる。そこで彼はタブレットの中で伝説の救世主の出現を待ち続けていたというAIマミルトンと出会う。マミルトン曰く、校庭の地中深くには、世界征服を狙う電脳の神“エニアック”とその腹心に戦いを挑み、破れ散っていった勇者たちの亡骸が眠っているという。そこに姿を現したエニアック。村井は運命に導かれるようにエニアックとの戦いに身を投じていく。
スタッフ
監督・脚本:山口雄大
脚本:小林弘利、おおかわら
VFXスーパーバイザー:鹿角剛
製作総指揮:中野裕之
キャスト
村井トモタケ:マックスむらい
AIマミルトン:マミルトン
歌う生徒会長・まお:スプリングまお
優等生・高橋くん:あいたかはしくん
舎弟・バイヤー:楯雅平
坂口:匠馬敏郎
スケバン:坂口茉琴
ツッコミ:おおかわら(鬼ヶ島)
クソムシ:アイアム野田(鬼ヶ島)
フランケン:川井洋平(あっぱれ!)
君沢:君沢ユウキ
近未来の青年:新里宏太
神宿:一ノ瀬みか・羽島めい・羽島みき・関口なほ・小山ひな(神宿)
エニアック:GACKT
ナレーション:ゴー☆ジャス
© AppBank株式会社・スタジオむらい株式会社
マックスむらい
1984年生まれ、石川県出身。Apple社製品を主とするレビュー総合サイト「AppBank.net」を運営するAppBankの取締役にして、歌手や動画配信番組のメインパーソナリティ、自伝本の執筆など幅広く活動している実業家。動画共有サイトYouTube上でゲーム実況を配信する“YouTuber”として高い人気を誇る。2016年2月22日現在、YouTube公式チャンネルの登録者数は145万人を超えている。
山口雄大(ヤマグチユウダイ)
1971年生まれ、東京都出身。旧・日本映画学校を卒業後、2003年に「地獄甲子園」にて長編映画デビュー。同作でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2003のヤングコンペ部門グランプリを獲得する。その後も「魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE」「漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他)」を手がけ、「アブダクティ」では第31回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭 SILVER RAVEN(準グランプリ)を受賞した。2月27日には漫☆画太郎原作の「珍遊記」の公開を控えている。
鹿角剛(カヅノツヨシ)
1966年生まれ、秋田県出身。VFX制作会社スタジオ・バックホーンの代表取締役。東京デザイナー学院卒業後、オプチカル合成会社デン・フィルム・エフェクトに入社。その後、ゲームのCGディレクターなどを経て、2004年にスタジオ・バックホーンを設立する。ドラマやCM、映画など数多くの作品に携わる。2月27日公開の「珍遊記」にもVFXスーパーバイザーとして参加。
中野裕之(ナカノヒロユキ)
1958年生まれ、広島県出身。テレビ局勤務を経て、ミュージックビデオ制作会社を設立。国内外のアーティストのミュージックビデオ制作に従事する。1998年には「SF サムライ・フィクション」で劇場用映画デビュー。同作で第2回プチョン国際ファンタスティック映画祭グランプリを獲得する。さらに2006年には短編映画「アイロン」でカンヌ国際映画祭の批評家週間部門/ヤング批評家賞を受賞するなど、映画、ミュージッククリップ、CMなど多岐にわたる映像作品の制作に携わっている。