「恋は雨上がりのように」小松菜奈×大泉洋 / 磯村勇斗×葉山奨之×松本穂香インタビュー|ファミレス“ガーデン”メンバーが振り返る、不器用で優しい2人の物語

なんていい子たちなんだろうと思った(大泉)

──今回大泉さんは、小松さんを含めてご自分より若い世代の俳優さんたちとの共演シーンが多いですよね。実際に現場に入ってみていかがでしたか?

大泉洋

大泉 私は常に、最低最悪の状況を想定しますから。そうすれば、万が一そんな状況に陥ったとしても「やっぱり思った通りだ。でも想定してたから屁でもない、大丈夫だ!」と思えるので。

──(笑)。今回の場合、想定される最悪な状況というのは具体的にはどういうものなんでしょう。

大泉 まず、現場で無視され続ける。私1人を残して、若い人たちだけでキャッキャと遊んでいる。食事なんかもみんなで取っているけど、私は弾かれる。LINEグループを作っているけども、私だけは入れてもらえない……。

小松 めちゃくちゃネガティブですね(笑)。

大泉 そういう最悪な状況を考えて、現場に向かったんです。でもいざ行ってみたら、そんなことはまったくなかった。なんていい子たちなんだろう、と思いました。でも気を使ってもいたんですよ。「今、若者たちが話してるな」と思ったらなるべく近付かないようにしたりね。

小松 (笑)

──まさに近藤のような……。

大泉 そうです。私みたいなおじさんが行っても話の邪魔になるだけだと。話が終わったなと思ったらスッと行くぐらいの気は使っていました。

──大泉さんにとって「俺、おじさんになっちゃったな」と感じるのはどんなときですか?

大泉 体の衰えは感じますけど、おじさんになったという自覚はないんです。この仕事をしているといろんな方にお会いしますけど、45歳ともなるとほとんどの人が歳下なんですよ。でも35歳ぐらいまでの人は歳上に見えちゃうんですよね。よく戸次(重幸)が言ってたんだけど「横綱はみんな歳上だと思ってる」みたいな(笑)。横綱ってほぼ歳下なんですけどね。

──(笑)

大泉 実感としては32歳ぐらいですよ、今の私は。だから、まだまだ世の中に甘えてもいいんじゃないかな。

小松 ふふふ、駄目です(笑)。

「恋は雨上がりのように」

──近藤はあきら以外からは「臭い」などひどいことを言われますけど、同じことを言われたら……。

大泉 立ち直れない。いったん仕事を中断して風呂に入ってきます。

小松 あはは!

「大泉さんのほうが100倍かわいい」といつも言っていた(小松)

──小松さんは一般的な40代半ばのおじさんにどういうイメージを持っていますか?

小松 男の人って実年齢より精神年齢が6歳下って言うじゃないですか。40代でも「心は18歳」とおっしゃる方もいますし。

大泉 私なんて、いまだに「大人になったら」って言いますから。服を選ぶときに「このへんは大人になったら着ればいい」と言って「いや大泉さん、もう大人ですから」と返されたりしてね。

小松 (笑)。「年齢だけは上がっていくけど、心は別に何も変わらないから」と言っている方もいますね。

大泉 そういうのを見るとどう思うわけ? 痛いの?

小松 かわいいなと思いますよ!

──先輩なので言いにくいかもしれませんが、小松さんが大泉さんをかわいいと思った瞬間はありますか?

小松 大泉さんは自分で自分のことをかわいいって思ってますから(笑)。

大泉 (爆笑)

小松 だから私が言わなくても問題ないんですよ。どれだけ自分がかわいいかということをすごくアピールされるので「大泉さんのほうが100倍かわいいですよ」っていつも言ってました(笑)。

大泉 写真撮影のときとか、負けたくないんですよね。私はカッコよくなくてもいいんです。かわいくありたい。

小松 「カッコいい」よりは「かわいい」のほうがいいんですね。

大泉 一番いいのは「面白い」だけど。ちなみに服を選ぶときは「かわいい」が基準。(自身が着ているスーツを指さし)これかわいいでしょ?

小松 かわいいです(笑)。

左から小松菜奈、大泉洋。

大泉 やっぱり気持ち悪いおじさんだな(笑)。

小松 いやいや、気持ち悪くないです(笑)。

大泉 でもこの人もかわいく写ろうとしてくるんですよ。

小松 大泉さんがかわいく写ろうとするので「負けない!」と思っちゃうんです(笑)。

大泉 私に若干ハンデを付けてくれるぐらいでいいんですよ? あなたが本当にかわいくしちゃったら勝てっこないんだから(笑)。

「1人じゃないんだ」と思えた(小松)

──小松さんはあきらを演じる際に悩まれたそうですが、どのあたりが一番難しかったのでしょうか。

小松 劇中で「好きです」と告白するシーンが5回もあるんです。それぞれのシーンで、あきらはどういう気持ちで「好き」と言っているんだろうと思って。順撮りではなかったので、感情の流れを表現することも難しかった。それからあきらって、雨の日に急に現れて告白するみたいな、突飛なところがありますよね。私自身はそういうことをできないので「なんでこういうことをしたのかな」と最初は客観的に役を見ていました。

──でも完成した映画を観ると、小松さんはあきらにしか見えませんでした。

「恋は雨上がりのように」

小松 演じるうちに「あ、この気持ちわかる」とか「今、あきらと同じ感情になれた」と思うようになって。台本に「泣く」と書いてあるから泣くというふうに機械的に演じていると、観る方に感情が伝わらないんですよね。しっかり気持ちを作ってからお芝居をするように心がけました。

──悩んだとき、大泉さんとお話をされて気持ちが楽になったそうですね(参照:小松菜奈「一瞬一瞬を大事に」、大泉洋とのW主演作「恋は雨上がりのように」現場レポ)。

小松 風邪を引いた近藤の家をあきらが訪ねるシーンで、どうしてもあきらの心情をつかめなくて。「自分待ちのこの重い空気、どうしよう」と追い込まれていたとき、大泉さんが「ちょっと休憩しよう」と言ってくださったんです。そのあと、私たち2人にしか聞こえないぐらいの小さな声で大泉さんが話しかけてくださって、そのシーンに至るまでのあきらの心情を一緒にたどってくれて……。役に向き合ってると、ときに孤独だと感じることもあるんですけど、そうやって話しかけていただいたことで「1人じゃないんだ」と思えました。

大泉 ちゃんとあきらの心情をつかむまで、この人は逃げなかったからね……。私だったら逃げ出すなっていうシーンだったんですよ。でも小松さんは決して逃げなかった。ウルトラCを出さなきゃいけないシーンをきっちりやり抜いて、それを見事にスクリーンに残した。私がやったことはアドバイスでもなんでもないんです。彼女がすごいんですよ。

「恋は雨上がりのように」
2018年5月25日(金)全国公開
ストーリー
「恋は雨上がりのように」

橘あきらはファミレス“ガーデン”でアルバイトとして働く高校2年生。バツイチ子持ちの冴えない店長・近藤正己に密かに恋心を抱く彼女は、ある雨の日に「あなたのことが好きです」と思いのたけを打ち明ける。けがによって陸上競技を断念した17歳のあきらと、文学に情熱を注ぎながら小説家になれなかった45歳の近藤。止まっていた2人の時間が、静かに動き始める。

スタッフ

監督:永井聡

原作:眉月じゅん「恋は雨上がりのように」(小学館)

音楽:伊藤ゴロー

主題歌:鈴木瑛美子×亀田誠治「フロントメモリー」(ワーナーミュージック・ジャパン)

キャスト

橘あきら:小松菜奈
近藤正己:大泉洋
喜屋武はるか:清野菜名
加瀬亮介:磯村勇斗
吉澤タカシ:葉山奨之
西田ユイ:松本穂香
倉田みずき:山本舞香
久保佳代子:濱田マリ
九条ちひろ:戸次重幸
橘ともよ:吉田羊

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小松菜奈(コマツナナ)
1996年2月16日生まれ、東京都出身。2014年公開の「渇き。」で映画初主演を飾り、第38回日本アカデミー賞などで数々の新人俳優賞を受賞した。その後「バクマン。」「ディストラクション・ベイビーズ」「溺れるナイフ」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」などに出演。2017年、マーティン・スコセッシ監督作「沈黙-サイレンス-」でハリウッドデビューを果たした。2018年には「坂道のアポロン」が公開。「渇き。」の監督・中島哲也と再びタッグを組んだ「来る」の公開を控えている。
大泉洋(オオイズミヨウ)
1973年4月3日生まれ、北海道出身。演劇ユニット・TEAM NACSに所属し、北海道テレビ制作のバラエティ番組「水曜どうでしょう」でブレイク。主演を務めた「探偵はBARにいる」で第35回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。主な出演作に「駆込み女と駆出し男」「アイアムアヒーロー」などがある。2018年には「焼肉ドラゴン」「パパはわるものチャンピオン」が公開。6月25日にドラマ「あにいもうと」がTBS系で放送されるほか「そらのレストラン」「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「騙し絵の牙」といった映画の公開を控えている。

2018年5月25日更新