妻夫木くんだと自然とぞんざいに扱い合える（蒼井）

──前作では、お二人は山田監督から「（役の上で）結婚しちゃいけない、結婚前の状態でいるのが一番いい」と言われていたそうですが、本作で夫婦を演じられてみていかがでしたか？

蒼井　あっさり結婚しちゃったね。

妻夫木　前作でプロポーズをしているから、続編があるという時点で結婚してなきゃおかしいしね。

蒼井　私と結婚する役は2回目？

妻夫木　そう。だから悪い意味ではないですけど、新鮮ではないですよね（笑）。

──互いに気心が知れた間柄というか。

妻夫木　いい意味で言うとそうですね。一緒にいるときにあまり気を使わないし、夫婦の空気感みたいなものは出せるので、僕は優ちゃんが奥さん役で助けられました。

蒼井　確かに新鮮味はないかも（笑）。妻夫木くんとはお付き合いをしている役をこれまでに何度も演じたから、何かを足したり引いたりしなくても自然と夫婦になれる感じはありました。ほかの役者さんとだったら私はもう少しがんばっている。

妻夫木　何をがんばるの？（笑）

蒼井　夫婦っぽさとか、慣れ親しんでいる感じを出さないといけないから！ お互いにぞんざいに扱い合う努力みたいなのが必要になってくるけど、妻夫木くんとだと自然とぞんざいに扱い合えるんですよね。それでも冷たい雰囲気にならないのはなんでだろうね？

妻夫木　この人たちはこういう日常が幸せなんだろうという空気を出せる2人なのかなって思う。

──確かに、お二人の何気ない会話や仕草にも親密さが表れていました。あの雰囲気が自然と作れる関係性だったんですね。

妻夫木　そういうのはけっこう慣れてるんですよ。そういえば前作ではキスシーンがあった気がしたんだけど、却下されたんだよね？

蒼井　そうそう！ 山田監督がキスシーンを脚本に書かれていたのに、決定稿になったときにがっつりカットされて（笑）。私、妻夫木くんとは一度もキスシーンをやったことがない。

妻夫木　ないね！ 「やっぱりこの2人はそういうことじゃない」みたいな。確かにそんな気はしていたんですけどね。手をつなぐとか何気ないスキンシップはいっぱいあるんですけど。普通はそっちのほうが恥ずかしいよね？

蒼井　うん、恥ずかしい！

憲子を演じるときは一番ワクワクする（蒼井）

──憲子は、これまでにほかの作品で蒼井さんが演じてきたキャラクターと少し雰囲気が違う女性ですよね。どのような気持ちで演じたのでしょうか。

蒼井　憲子を演じるときは一番ワクワクしますね。山田監督くらいしか素敵な心を持った役をくださらないので、楽しくてしょうがなくって。橋爪功さん、西村雅彦さん、林家正蔵さん演じる滑稽なキャラクターと、ちゃんと理性のあるキャラクターが引っ張り合ったら家族が余計凸凹に見えて面白くなるかなあと思っていました。私と、今までは妻夫木くんの役もこっちのほう（理性のある人物）だったのに、若干そっち（滑稽）になりつつあったよね？ 本番前に山田監督に急に呼ばれて「◯◯って言え」って演出されたり。

妻夫木　おお、そうですか……と思って。

蒼井　妻夫木くんの役はキャラが変わりがちだよね。それに、役者同士の関係性も前作とは少し変わってきて、休憩時間に女と男で分かれ始めたのがちょっと面白かった。女性陣はずっとしゃべっていて、男子たちは各々携帯を見たり。

妻夫木　本を読んでいたりね。

いつも右斜め後ろで何か起こる（妻夫木）

──妻夫木さんは、庄太を演じるにあたって心がけていたことはありますか？

妻夫木　山田監督はすごく細かいところまで見てくださる方なので、その都度臨機応変に対応できる柔軟さを持っていようと思っていました。役に対しての芯みたいなものがないと「地に足がついていないよ」って怒られちゃうこともあるし。言ってみれば、自分のことだけしか考えていないかもしれないです。怒られたくないから（笑）。

蒼井　誰かが怒られているときは気配を消してみたりね。

妻夫木　そうそう（笑）。

──家族が一堂に会するシーンが多いこともあって、全員で作り上げていく感覚が大きかったのではと思います。

妻夫木　僕はなるべく邪魔にならないようにしていました。誰かが話しているシーンに自分も映り込んでいたとしたら、次のセリフでいきなり振り返るのはおかしいから、ある程度早めに向いておかないといけないな……みたいな。

蒼井　だからといって手前で（ほかの人が）芝居をしているときにカメラと正対しちゃいけないから、ちょっと斜めの姿勢になってみたりね。後ろに映るときは難しいよね。

妻夫木　優ちゃんは座り位置がわりと家族のほうを向いていたよね？

蒼井　そうなの。画角の真ん中の一番奥だったから、ちょっと片ひじをついたりとかして変化を出してみて。

妻夫木　俺はどこで振り向くかってことばかり考えてた。いつも自分の右斜め後ろで何かが起こるから。

蒼井　互いの動きを読み合うという意味では、共同作業していたのかもね。妻夫木くんはテーブル席とソファ席の間にいるから、動きがある場面では山田監督に「さっきどうやってたんだよ？ ちょっとやってみて」とよく言われてた。みんな見ている中で1人でやらされていたこともあったし、すごい特殊な役回りだったよね。