「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」高山みなみの恐竜愛&「ジュラシック」愛が止まらない (2/2)

吹替のオファーを受けて「嘘でしょ?」

──なかなか選べないとは思うんですが、一番お好きな恐竜は?

みんな好きですけど、「ジュラシック」シリーズを観てT-レックスはすごいなと思うようになりました。帝王感がありますから(笑)。やっぱりT-レックスには最後は吠えてほしいし、吠えてもらえると「ああこれだよね!」と盛り上がります。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、T-レックス。©︎2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、T-レックス。©︎2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

──「ジュラシック・ワールド」でも満を持しての横綱的な扱いでしたね。

かっこよかったですよね! ラプトルと会話している感じも感動的でした。T-レックスの後ろをブルーが追っていくのもジーンときました。「ちゃんとコミュニケーションが取れているんだ!」と。きっとブルーがいろいろ説明して説得したんでしょうね。

──最新作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」には日本語吹替版のソヨナ・サントス役で声優としても参加されていますが、オファーが来たときのご感想は?

3cmくらいは飛んでしまいました! ちょうど誕生日の近くだったんで「嘘でしょ? 誕生日プレゼント?」みたいな。ドキドキしながら台本を読んで、自分の役を知り「ガーン!」。よりによって一番やっちゃいけないことをしている!(笑)

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ソヨナ・サントス(ディーチェン・ラックマン)。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ソヨナ・サントス(ディーチェン・ラックマン)。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

──「ジュラシック・ワールド」3部作と「ジュラシック・パーク」の一番の違いってなんでしょうか?

「ワールド」は「パーク」のときより恐竜と人間の距離が近く感じます。パークではなかった恐竜に乗れるアトラクションもできていましたし、恐竜と人間との共存を模索する段階に入っていますよね。

──ブルーも人間と近いところにいる恐竜ですよね。

そうですよね。「ジュラシック・パーク」のときに、ハモンドさん(ジュラシック・パーク創設者)は恐竜が孵化するときには必ず自分で取り上げていると言っていらしたんです。恐竜は最初に見たものに愛着を持つから、インプリンティングができるんだと。「ワールド」ではブルーがオーウェンに対して従順で、「懐かせたんだ!」と驚くと同時に「やった!」という気持ちでした。恐竜を兵器として使うのは絶対に駄目です。でも、もし人間と恐竜が共存することになり、イルカやアシカみたいに訓練できたら、恐竜ショーもありかなあ。

──「パーク」のときは「科学の暴走に警鐘を鳴らす」みたいなテーマでしたよね。

「ワールド」では警鐘どころか拍車が掛かっていますね。ただ「ジュラシック・パーク III」でプテラノドンが出てきて、「ワールド」ではモササウルスが登場しました。空にも海にも陸にも散ってしまった恐竜を制することは不可能で、島だけで収まる話ではなくなってしまった。だから「ワールド」の1作目を観たときに、もはや共存していくしか方法はないと思いましたし、恐竜たちも意識はしていないにしろ、人間の世界で生きる道を選んだのかなと思いました。

「パーク」に登場したあの缶が今回も…

──最新作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」にも新しい恐竜が出てきますが、印象に残っているのは?

ブルーの子供が一番かわいかったです! 「ブルーがお母さんになったんだ」というだけで大感動ですよ。「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」でヴェロキラプトルが群れで生活することはわかりました。もしブルーが統制してくれるのであれば、ヴェロキラプトルのほうからは人に対して危害を加える脅威にならないのかも?と思いました。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ヴェロキラプトルのブルー(右)とその子供(左)。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ヴェロキラプトルのブルー(右)とその子供(左)。

──ご自身の出演シーンで印象的だったのは?

レーザーポインターで操られていた子(恐竜)たちはかわいそうでしたね。恐竜が殺戮マシーンみたいにされて許せないんですけど、「私(ソヨナ)がやりました、ごめんなさい!」ですね(笑)。台本を読んでいても、素に戻ってちょいちょい落ち込みました。でも悪い人を演じるのは楽しいんです。ソヨナ自身にとってはビジネス。だから、反対側から見たらひどいことも、涼しい顔をしてやってのける。ミステリアスな彼女を、クールなワルに演じたいと思いました。

──ほかに映画の中でお気に入りのシーンはありますか?

実は全体を真剣に観ないようにしていたんです。観客として映画館で観たかったので(笑)。もちろん、自分の演じるシーンや関連のあるシーンは何度もチェックしたんですけど、そのほかは台本を開かず、原音のまま観ていました。お気に入りのシーンというか、ヘンリー・ウー博士が「パーク」のときのような研究者になってくれてよかったですね。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ヘンリー・ウー(B・D・ウォン)。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、ヘンリー・ウー(B・D・ウォン)。

──ウー博士は「パーク」ではそこまで大きく取り上げられる人物ではなかったですよね。

そうですね。なぜか出て来るたびに「この人はちょっとヤバい」という感じになっていて、今回はどうなるんだろうと思っていたんですけど、いい見せ場がありました。そう言えば、本作の劇中で、「パーク」に出てきたシェービングクリームの缶がルイス・ドジスンの部屋にあったんですよ! 「パーク」のときのあの缶は、ネドリーが盗んで運んでいる途中で恐竜に襲われ泥の中に埋もれてしまって……。確か36時間しか冷凍保存できないと言っていたので、あれは駄目になったと思うのですが、ドジスンはあの後もなんらかの方法で胚を手に入れていたのか、と思いました。いやあ、あのシェービングクリーム缶は衝撃でしたね!(編集部注:「ジュラシック・パーク」にて、ルイス・ドジスンがデニス・ネドリーと共謀して恐竜の胚をシェービングクリーム缶に入れてパークから密輸した)

──ファンとして「パーク」時代の博士たちの再結集はいかがでしたか?

もう最高です! アラン、エリー、イアン、3人のことは大好きですから。「パーク」の主要キャラクターはみんな学者さんなんですよね。経営者や軍人よりも、学者さんのほうが好きです。私もどちらかと言うと恐竜メインで観てしまうので、つい学者さんたちの気持ちにシンクロしちゃいます。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」より、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)。

正直、新シリーズにも期待しちゃってます

──「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を観るにあたっての心得みたいなものはありますか?

これを観るなら過去作を全部観てからのほうが面白いだろうと思いました。例えば「ジュラシック・パーク III」を観てないと、エリーがアランじゃない人と結婚して子供がいるという状況がわからない。「ロスト・ワールド」にはイアンが出ていますし、あのときも恐竜の親子関係の話だったんですよね。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

──確かに今回の内容ともつながっていますね。最後に「ジュラシック」シリーズの魅力を教えてください。

想像力が結集された世界、ですね。こうだったらいいなとか、こうなったら嫌だなとか、すべての想像が詰まっていて、面白いも楽しいも怖いも全部ある。あと恐竜のような形態の生物って今はいないじゃないですか。T-レックスでもブラキオサウルスでも「こんなのが本当にいた世界って!?」と想像が膨らむところが魅力だと思います。自分がそうなんですが、人間は、見えないもの、わからないものに対しての憧れがあるんだと思うんです。しかも骨の化石のかけらをつなぎ合わせて「きっとこんな形で、こう動いていたんですよ」と答えを導き出してきた研究者たちもすごい。あれも推理ですよね。

──高山さんは別の作品(「名探偵コナン」)でも長年推理されていますもんね(笑)。

そうですね(笑)。証拠が見つかったから、それを組み合わせてパズルを埋めていくという作業は同じだと思います。恐竜の場合は、完璧な答えにたどり着くのは容易ではありませんけど。というか、答えが未知ですからね。今回は完結編ということになっていますが、私はこれで終わるとは思っていません。次はメイジー(・ロックウッド)ちゃんがブルーの子供とメインになる新シリーズになったりして? 終わりというのは新たなスタートだと、正直期待しちゃってます。

プロフィール

高山みなみ(タカヤマミナミ)

5月5日生まれ、東京都出身。アニメ「忍たま乱太郎」の乱太郎、「名探偵コナン」の江戸川コナン、「ゲゲゲの鬼太郎(5期)」の鬼太郎、「デジモンクロスウォーズ」の工藤タイキ、スタジオジブリ作品「魔女の宅急便」のキキなど、人気キャラクターの声優を多数務める。2011年、第5回声優アワードでシナジー賞を受賞した。現在、劇場版「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」が全国で上映中。