しゃべったら自分の中の何かが壊れる気がした(石橋)
──撮影現場での忘れられないエピソードはありますか?
峯田 (田口)トモロヲさんと、みうらじゅんさんが1シーン出てるんですけど、現場は大変でしたよ(笑)。
──ブロンソンズ(田口トモロヲとみうらじゅんによるバンド)のお二人ですね。
古舘 ブロンソンズ(笑)。僕らのほうが大変でしたよ! 峯田さんがいて、あの2人もいる中で僕ら演技しないといけないんですから。
峯田 「早く帰りてえ」しか言わないしね、「またやんのか!?」とかさ(笑)。しかもあの日、大雨だったよね。
古舘 外に休憩用のテントが張ってあって誰でも入っていいはずなんですけど、中に峯田さんと田口さんとみうらさんが入っているからか、誰もテントに近付こうとすらしなかった(笑)。あの日はめちゃくちゃ面白かったです。
峯田 あの2人はふざけに来てるだけだもん!
古舘 監督が一番緊張してたんじゃないですかね? あんまりお二人と話すことはできませんでしたけど、3人で写真は撮りましたよ!
石橋 いいなあ、私はしゃべったら自分の中の何かが壊れる気がしたので、遠くにいました……(笑)。
──石橋さんは以前のインタビューで峯田さんがあんまり目を合わせてくれなかったとおっしゃってましたね。
石橋 小説版で峯田さんが描いた挿絵の女の子と、私の目が似ていると以前におっしゃっていたのでその話を聞きたいなと思ったんですが、あんまり目を合わせてくれませんでしたよね(笑)。
峯田 ああ……(遠くを見る)。
──峯田さんはあえて見ていなかったんですか?
峯田 みんなに言われるんですよね、目を合わせてくれないって。でも、女優さんですもん。そんな……僕の目の中に入れたら、汚れてしまう……(笑)。そりゃね!? そりゃ脚本に「目を見る」とか書かれていたら見ますよ! でもそんなに簡単に見ちゃいけないですよ。
──ブロンソンズのお二人も豪華ですが、実は麻生久美子さん、宮藤官九郎さん、曽我部恵一さんも1シーンだけ出てらっしゃいますよね。
古舘 普段お会いできないような方々と1シーンだけでも共演させていただいたので、自分としてはすごくいい経験をさせてもらいました。
峯田 麻生さんと何を話したんですか?(早口で)
古舘 お子さんの話をしたような……あとお互いどういうきっかけで銀杏BOYZを好きになったかもお話しましたよ。
峯田 (満足げにうなずく)
初めてのキスシーンだったんですよ(古舘)
──古舘さんは岸井ゆきのさん演じるアケミと衝撃的なやり取りが多かったですが、ご感想をお聞きしたいです。
古舘 岸井さんとは10代の頃から友人だったんですけど、今回が初共演でした。同窓会みたいに「久しぶりー!」っていう雰囲気で「仕事で会うの変な感じがするね」って言っていたのに、キスシーンから始まったので変な感じになってしまって(笑)。でもコウタ的にはその照れがよかったんじゃないかなと思いました。コウタはそんなに堂々とキスできるやつじゃないので。しかも僕自身初めてのキスシーンだったんですよ。
──そうだったんですか!
古舘 キスシーンが終わって、じゃあもう1回というときに、監督が岸井さんに「またキスシーンさせちゃってごめん」ってすごく謝ってたんですよ。ちょっとショックでした! 「俺とのキスって罰ゲームみたいなものなの!?」って(笑)。それで、本当に申し訳ないなって気持ちになりました。
石橋 (笑)
──アケミはパンクロックが好きなので、衣装もものすごかったですよね。
古舘 すごかったですよね、あの衣装。でもあの格好は岸井さんの普段のイメージと真逆なので、とても新鮮でした。
自分の過去とか思いにつながったらいいな(石橋)
──最後に、7月5日に公開を迎えますが、みなさんそれぞれの見どころを伺いたいです。
古舘 ラストシーンの景色ですね。僕自身も撮影中にはどう映っているのかわからなくて、完成した本編を見てこうなっていたんだな!と思いました。あの景色が、この映画の全部を表現していると思います。
石橋 初号試写のときにある男性が涙目になりながら「すごくよかったです」と言ってくださったんです。その方の思い出とつながったのかなと感じましたね。皆さんいろんな楽しみ方ができると思うんですが、それぞれ自分の過去とか思いにつながったらいいなと思います。
峯田 僕はいくつかあるんです。まず、宮本信子さんと石橋さんが2人で地元のカフェにいるシーン。あそこは観ていて涙ぐむぐらいに、すごくいいなと思いました。あと、最初はコウタのことを「バカだなあ、ダメなやつだなあ」と思っていたんですけど、彼の実家のシーンで光石研さん、和久井映見さん、泉澤祐希くんが演じるコウタの家族たちを見ていたら「コウタの人柄ってこの家族だったらあり得るな、こういう家の子だったんだ」と納得したんです。こうやって2人の周りにいる人が支えてくれている映画だなと思いました。
- 「いちごの唄」
- 2019年7月5日(金)公開
- ストーリー
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笹沢コウタは中学生の頃、親友・伸二とともに“あーちゃん”こと天野千日を“女神”と崇めていた。しかしある日、伸二はあーちゃんの身代わりとなって交通事故でこの世を去る。伸二の死を背負って生きることになった2人は10年後、東京で偶然再会。コウタの提案により、2人は毎年伸二の命日である七夕に会い、彼の思い出話をしながら散歩をすることが恒例となった。しかしある年、千日は伸二との過去の秘密を語り「もう会うのは終わりにしよう」と告げる。
- スタッフ / キャスト
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監督:菅原伸太郎
原作:岡田惠和、峯田和伸「いちごの唄」(朝日新聞出版)
脚本:岡田惠和
主題歌:銀杏BOYZ「いちごの唄」
音楽:世武裕子・銀杏BOYZ
出演:古舘佑太郎、石橋静河、和久井映見、光石研、清原果耶、小林喜日、大西利空、しゅはまはるみ、渡辺道子、ポール・マグサリン、山﨑光、蒔田彩珠、泉澤祐希、恒松祐里、吉村界人、岸井ゆきの、峯田和伸、宮本信子ほか
- 銀杏BOYZ「いちごの唄」
- 2019年7月5日より上映劇場で数量限定販売 / 初恋妄℃学園
©2019「いちごの唄」製作委員会
- 古舘佑太郎(フルタチユウタロウ)
- 1991年4月5日生まれ、東京都出身。2008年に自身率いるバンドTHE SALOVERSを結成。2010年にデビュー後「C'mon Dresden.」などを発表し、2015年より無期限活動停止を決める。同年秋にソロ活動を開始し、舞台、映画、ドラマ等で俳優として活躍。2017年にはNHK連続テレビ小説「ひよっこ」や「ナラタージュ」などに出演したほか、新たなバンド・2をスタートさせる。2019年8月24日には主演作「アイムクレイジー」が公開。
- 石橋静河(イシバシシズカ)
- 1994年7月8日生まれ、東京都出身。4歳からクラシックバレエを始め、2009年より米・ボストン、カナダ・カルガリーにダンス留学後、2013年に帰国。2015年より女優としての活動を本格化させ、2017年に初主演した「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」でブルーリボン賞新人賞ほか数多くの新人賞に輝く。そのほかの出演作は「うつくしいひと サバ?」「きみの鳥はうたえる」「21世紀の女の子」など。今後は「楽園」「ばるぼら」の公開が控える。
- 峯田和伸(ミネタカズノブ)
- 1977年12月10日生まれ、山形県出身。1996年にロックバンドGOING STEADYを結成し、CDデビュー。2003年、GOING STEADY解散後に、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。その後、バンド体制となった銀杏BOYZの活動と並行し、2003年公開の主演作「アイデン&ティティ」で銀幕デビュー。以降も「色即ぜねれいしょん」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「ピース オブ ケイク」「猫は抱くもの」などの映画や、「奇跡の人」、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、「高嶺の花」といったドラマに出演。