銀杏BOYZの楽曲の世界観をイメージソースに、岡田惠和が脚本を執筆した「いちごの唄」が7月5日に公開される。本作は大切な人の死を背負うコウタが、“天の川の女神”と崇め、1年に1度だけ会える千日を想う姿を描くラブストーリーだ。銀杏BOYZの名曲たちが物語を彩り、ドラマ「泣くな、はらちゃん」「白衣の戦士!」などで知られる菅原伸太郎が映画監督デビューを飾った。
映画ナタリーでは本作でダブル主演を務めたコウタ役の古舘佑太郎、千日役の石橋静河と、原作小説のイラストを手がけ、音楽・主題歌、キャストとしても参加している峯田和伸(銀杏BOYZ)の鼎談を実施。3人が笑い交じりに「大変だった」と口をそろえた現場でのあるエピソードや、主演2人の“すれ違い”の事実が明らかになった。
取材・文 / 佐藤希 撮影 / 佐藤類
心の中のクランクアップをした気分でした(古舘)
──完成した作品をご覧になった感想をお聞かせください。
古舘佑太郎 「自分がずっといるな」と(笑)。最初から最後まで自分がずっと出ている作品を客観視できたかと言われると、全然できませんでした。でもどんどん話が進んで、最後にエンドロールが流れたときにようやく達成感を感じたんです。クランクアップしたのはずいぶん前だったんですが、銀杏BOYZの主題歌を聴いたときに心の中のクランクアップをした気分でした。
──どのシーンでも古舘さんが走り回っていた印象でした。
古舘 はい(笑)。でも疲れたというよりは充実していたという気持ちのほうが大きかったです。
──石橋さんはいかがでしたか?
石橋静河 撮影中はあーちゃん(千日)の気持ちに浸りすぎていて、しかも彼女が抱えているものがかなりヘビーなものだったので、しんどいなと思う瞬間がありました。でも映画はコウタの視点から観た世界なので、自分が持っていた感覚とは違って明るく話が進んでいて、自分が出ているということも関係なく純粋に楽しめました。
──感想をお二人で話し合ったりされましたか?
石橋 初号試写をみんなで観たので、終わったあとに感想を古舘さんに話そうとしたら、コウタみたいにもじもじしていて。
古舘 撮影ぶりに会ったので……(笑)。でも石橋さんとは、あえて作品や演技の話をしないっていう謎のルールがあったんですよね。
石橋 だから「よかったですね、映画」みたいなことしか言えなかったんですよ(笑)。
古舘 撮影中は、カメラが回ってないときでもあーちゃんとコウタみたいな関係性だったので、スタートがかかってもそのまま演技できていたような気がします。
──峯田さんは完成した作品をご覧になっていかがでした?
峯田和伸 小説版から足かけ3年ぐらいこの物語に関わっているので、観終わってようやく安心しました。出来がどうこうというよりも、いい作品が作れてよかったなあという気持ちです。岡田さんや監督に感謝しました。
カメラを通した石橋さんを観たら、まったく違った!(峯田)
──古舘さんと石橋さんの演技はいかがでしたか?
峯田 古舘くんは音楽の現場で何度かお会いしてるんですが、石橋さんとは僕が店主を演じるラーメン屋のシーンで初めてお会いしました。「うわっ、すげえ!」っていう感じはなくて、2人がセリフを話している姿もお芝居をしている雰囲気がなかったんです。でも、カメラを通した石橋さんを観たら、まったく違った! 現場で感じた石橋さんの雰囲気と全然違うんです。こんな表情してたっけ!?って思うぐらい。現場にいるときにはわからなかったけれど、カメラマンの視点からみると威力が全然違って、天性のものなんだなあと思いました。
石橋 ありがとうございます(笑)。
峯田 いやもう本当に変わるんですよ! それまでは、古舘くんのピュアさみたいなものに映画が左右されていたと思うんですけど、あーちゃんのアップになると全然違う雰囲気が出て、それがよかった。やわらかい雰囲気の中にパキッとした緊張感が走るんです。さすがだなあ、すごいなあと思いました。
──石橋さん、べた褒めされてます。
石橋 いやー、ありがとうございます、恐縮です。恥ずかしい……(笑)。
3人で会おうって声をかけたら断られた(石橋)
──私、実は現場取材にもお邪魔しているんです。失礼かもしれませんが、当時は古舘さんと石橋さんが今ほどくだけた間柄じゃなかったような気がしたんですが、撮影を通じて距離が縮まったんでしょうか?
石橋 ……そうでもない?(笑)
古舘 (笑)
峯田 え、2人でごはん行ったりしないの!?
古舘 1回もないんですよ。
峯田 そうなの!?
石橋 古舘さんと共通の知り合いがいて、3人で会おうって声をかけたら断られたんですよ。
古舘 いやいやいやいや、断ったっていうか単純に行けなかったんです! でも僕もバンド(2)のライブやるたびに石橋さんのことをお誘いしてるんですけど、まだ一度も来ていただけてないですよ!
石橋 (爆笑)
古舘 銀杏BOYZのライブには行ったってうわさ聞いてるんですけど!
石橋 いや違う、違うんです!(笑)
峯田 そりゃあね、しょうがないよね?
古舘 僕のライブには来ていただけないという、そういう距離感です。
──すみません、嫌なこと聞いちゃいましたね(笑)。
古舘 すれ違いっていうことにしておきます(笑)。
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しゃべったら自分の中の何かが壊れる気がした(石橋)
- 「いちごの唄」
- 2019年7月5日(金)公開
- ストーリー
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笹沢コウタは中学生の頃、親友・伸二とともに“あーちゃん”こと天野千日を“女神”と崇めていた。しかしある日、伸二はあーちゃんの身代わりとなって交通事故でこの世を去る。伸二の死を背負って生きることになった2人は10年後、東京で偶然再会。コウタの提案により、2人は毎年伸二の命日である七夕に会い、彼の思い出話をしながら散歩をすることが恒例となった。しかしある年、千日は伸二との過去の秘密を語り「もう会うのは終わりにしよう」と告げる。
- スタッフ / キャスト
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監督:菅原伸太郎
原作:岡田惠和、峯田和伸「いちごの唄」(朝日新聞出版)
脚本:岡田惠和
主題歌:銀杏BOYZ「いちごの唄」
音楽:世武裕子・銀杏BOYZ
出演:古舘佑太郎、石橋静河、和久井映見、光石研、清原果耶、小林喜日、大西利空、しゅはまはるみ、渡辺道子、ポール・マグサリン、山﨑光、蒔田彩珠、泉澤祐希、恒松祐里、吉村界人、岸井ゆきの、峯田和伸、宮本信子ほか
- 銀杏BOYZ「いちごの唄」
- 2019年7月5日より上映劇場で数量限定販売 / 初恋妄℃学園
©2019「いちごの唄」製作委員会
- 古舘佑太郎(フルタチユウタロウ)
- 1991年4月5日生まれ、東京都出身。2008年に自身率いるバンドTHE SALOVERSを結成。2010年にデビュー後「C'mon Dresden.」などを発表し、2015年より無期限活動停止を決める。同年秋にソロ活動を開始し、舞台、映画、ドラマ等で俳優として活躍。2017年にはNHK連続テレビ小説「ひよっこ」や「ナラタージュ」などに出演したほか、新たなバンド・2をスタートさせる。2019年8月24日には主演作「アイムクレイジー」が公開。
- 石橋静河(イシバシシズカ)
- 1994年7月8日生まれ、東京都出身。4歳からクラシックバレエを始め、2009年より米・ボストン、カナダ・カルガリーにダンス留学後、2013年に帰国。2015年より女優としての活動を本格化させ、2017年に初主演した「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」でブルーリボン賞新人賞ほか数多くの新人賞に輝く。そのほかの出演作は「うつくしいひと サバ?」「きみの鳥はうたえる」「21世紀の女の子」など。今後は「楽園」「ばるぼら」の公開が控える。
- 峯田和伸(ミネタカズノブ)
- 1977年12月10日生まれ、山形県出身。1996年にロックバンドGOING STEADYを結成し、CDデビュー。2003年、GOING STEADY解散後に、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。その後、バンド体制となった銀杏BOYZの活動と並行し、2003年公開の主演作「アイデン&ティティ」で銀幕デビュー。以降も「色即ぜねれいしょん」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「ピース オブ ケイク」「猫は抱くもの」などの映画や、「奇跡の人」、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、「高嶺の花」といったドラマに出演。