オリジナルドラマ「不能犯」が、12月22日よりdTVにて独占配信されている。
宮月新と神崎裕也の同名マンガをもとにした本作は、2018年2月1日に封切られる映画版の前日譚を描くサイコサスペンス。3つのエピソードで構成されており、松坂桃李演じる実証が困難な手口で殺しを請け負う“不能犯”宇相吹正(うそぶきただし)のターゲットとなった人々が、悲惨な運命をたどるさまが切り取られていく。
映画ナタリーでは、第1話で主演を務めた永尾まりやと監督の内藤瑛亮にインタビューを実施。ショッキングな描写も多く含まれる本作の意外な撮影エピソードや、作品に込めた思いなどを語ってもらった。
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 上山陽介
赤く光る目から放つ謎の力でターゲットの心を操り、死に至らしめる殺し屋。思い込みやマインドコントロールなど、立証不可能な犯罪を行う“不能犯”として知られる。決めゼリフは「愚かだね……人間は……」。まれに宇相吹の能力が効かない人間もいる。
内藤瑛亮が見た、宇相吹正 / 松坂桃李
宇相吹はいろんな人に暗示をかける無敵の存在だけれど、実はかからない人もいる。実は常にそういう人物を探してきたんじゃないか、そこが「不能犯」という物語のキモなんじゃないかと、松坂さんとずっと話していました。印象的だったのは、ある人物に暗示が効かないとわかったときの、宇相吹の表情。はっきりと笑っているわけではないけど、なんだかうれしそうだなという微妙なあんばいを出せる松坂さんはすごいと思います。
挑戦してみたいという思いが強かった(永尾)
──「不能犯」は、同名のマンガをもとにしていますが、もともと原作はご存知でしたか?
内藤瑛亮 映画が作られると聞いてから読んだので、これをどうやって映像化するんだろう……と思いました。宇相吹正の目が赤く光るシーンの描写や設定が難しい気がしたので、映画版を手がける白石晃士監督はどう表現するんだろうかと。
永尾まりや 私もお話をいただいたあとに、読みました。タイミング悪く夜に1人で読んでしまったので、怖くなりました(笑)。
──永尾さんが演じた夏美は、“隠したい過去”を理由に、ある人物から脅される女性です。劇中ではハードなシーンもありましたが、演じるにあたって抵抗は感じましたか?
永尾 少しだけ不安な気持ちがありました。でもこういうキャラクターは演じたことがなかったので、挑戦してみたいという思いが強かったです。
内藤 ベッドシーンを撮るのが初めてだったので、第1話の撮影では僕自身もけっこう緊張していたんです。撮影の前くらいにポール・ヴァーホーヴェン監督の講演に行く機会があったんですが、そこでベッドシーンについて「絶対に絵コンテを描かなきゃ駄目だ」「どのあたりまで映すのか、俳優はどこまでやるのかを事前に決めて、本人に了解を取ったうえで撮影に臨むべきだ」とお話されていて。なるほど!と思って、その通りにしました(笑)。
永尾 ふふふ。その通りでしたね!
内藤 先人の知恵が(笑)。永尾さんには絵コンテを見せて、嫌だったらそう言ってくれて大丈夫だからねと伝えました。最近、ハリウッドがセクハラ疑惑で揺れているから……。
──では、永尾さんは安心して臨めたのではないでしょうか。
永尾 はい! ベッドシーンといってもどのくらいの感じ?という気持ちだったので、事前の打ち合わせで絵コンテを見せていただけて、安心した状態で挑めました!
“偽装キラキラSNS女子”的欲望は、現代の人間に共通する心理(内藤)
──夏美には、自撮りや華やかな暮らしぶりがわかる写真をSNSにアップする“キラキラSNS女子”的な面もありますよね。永尾さんは、こういったキャラクターにリアリティを感じましたか?
永尾 感じました! 私もSNSに写真をよくアップするし、今の時代の若い子たちと考え方がすごく似ているキャラクターだなと思います。
内藤 夏美の“偽装キラキラSNS女子”的な欲望は、彼女だけじゃなくて現代の若い人に共通する心理だろうと話していたよね。
──そうなんですね。内藤監督から永尾さんへ、こう演じてほしいという要望はあったのでしょうか?
内藤 永尾さんには、夏美を悪役だと思わないでほしいと話しました。SNSを偽装するのは悪いことだと断罪するのではなく、そういう欲望ってわかるよねという視点に立って演じてほしいなと。実際の生活より、SNS上で評価を得ることのほうがリアルだと感じる人もいるんじゃないかなという思いがあったんです。夏美は人に知られたくない職業に就いていた過去があるけれど、それによってキラキラした自分を手に入れることに価値を感じたんじゃないかと。
──ちなみに内藤監督は「ライチ☆光クラブ」のときに、主要キャストに役作りの参考となる映像作品のDVDを渡したそうですが。永尾さんは、監督からそういったヒントをもらいましたか?
永尾 いただいていないです……!(笑)
内藤 今回はしなかったですね。なんとなくわかるかなあと思って。
永尾 本当ですか!?
──永尾さんならば等身大の女性を演じてくれるだろうという期待があったのでしょうか。
内藤 そうですね。既存の映画に当てはめなくても、今の感覚で夏美を理解してもらえれば大丈夫かなと思いました。
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あんこうが怖かった!(永尾)
- dTVオリジナルドラマ「不能犯」
- dTVにて独占配信中
※2017年12月22日(金)より毎週1話更新(第1話は無料)
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生まれも経歴も不詳の男・宇相吹正は、犯罪を意図した行為でもその実現が不可能であれば、罪に問われない“不能犯”。電話ボックスに殺しの依頼を書いて貼ると、彼はどこからともなく現れ、不気味な能力でターゲットを死に至らしめる。ある秘密を持つOL、宝くじが当たったサラリーマン、正義感の強い教師ら、宇相吹と出会った人々がたどる悲惨な運命とは……。
- スタッフ / キャスト
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監督:内藤瑛亮
脚本:山岡潤平
キャスト:松坂桃李、沢尻エリカ、水上剣星、永尾まりや、鈴之助、森岡豊、永井大、MEGUMI、井澤勇貴、平岡祐太、萩原みのり、佐藤仁美ほか
原作:宮月新 / 神崎裕也「不能犯」(集英社「グランドジャンプ」連載中)
©宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会
©2017 dTV
- 永尾まりや(ナガオマリヤ)
- 1994年3月10日生まれ、神奈川県出身。2009年に行われた第9期AKB48オーディションに合格し、AKB48メンバーの一員となった。2016年に同グループを卒業してからは、「咲-Saki-」「東京ボーイズコレクション~エピソード1~」「便利屋エレジー」などの映画作品に出演したほか、雑誌LARME、S Cawaii!のレギュラーモデルとして活躍している。
- 内藤瑛亮(ナイトウエイスケ)
- 1982年12月27日生まれ、愛知県出身。短編「牛乳王子」で学生残酷映画祭2009のグランプリを獲得した。その後、「先生を流産させる会」「ライチ☆光クラブ」「ドロメ」2部作など、話題作を立て続けに手がけた。2018年には「ミスミソウ」が公開される。現在、長編自主映画「許された子どもたち」を制作中。