映画ナタリー Power Push - 新千歳空港国際アニメーション映画祭 2015

コンペティションにミュージック・アニメーション部門が新設!ふかわりょうが語る “忘れられないミュージックビデオ”

「サザエさん」も30分のMVだと思ってます

こうして観ているとMVって、映像が音を運び、音が映像を刻んでくれるというか、双方が持ちつ持たれつな関係ですよね。それで言うと僕、「サザエさん」も30分のMVだと思ってます。

──「サザエさん」が?

ふかわりょう

「サザエさん」って、テーマが出ると、ティルリリリーン、ティルリリリーン、ティルリルルットゥトゥって、音楽をベースにストーリーが動いていくんですよね。扉を開けるガラガラガラみたいな音で場面が切り替わったりするんですけど、極端に言うと30分の中で音の貼ってある場所は固定で、無音の部分と音の部分が、はなから決まっていると言ってもいいぐらい。もはや30分のMVだったんだなって。

──それ、すごく面白いですね。

だからこそ最近のやつは、ちょっと音になじめない。声優が違うということは、ボーカルが変わっちゃったわけだから(笑)。

──はははは(笑)。

ディズニーランドなんかもまさにミュージッククリップの世界で、結局音楽を聴きに行ってるんですよね。無音のディズニーランドは、きっと何も面白くない。無音で夢を描けたら相当すごいということですね。

──確かにペリー&キングスレイが流れてきたら、あの絵が浮かびます。

そうなんですよ。エレクトリカルパレードしかり、音と映像がセットで脳に刻まれている。僕、よくアイスランドに行くんですけど、向こうでは車で移動することが多いので、ドライブ中に聴くために“アイスランドコンピ”を作るんです。アイスランド特有の大自然の景観が全部音に刷り込まれるから、日本に帰って来て何カ月かしてそのコンピを聴くと、イントロが流れた瞬間に体がアイスランドに行っちゃう。そういうのも結局MVなんですよね。音と自分の体験、観た映像がすごく強く結びついていて。

──すごくわかります。僕も高校生の頃、高熱でうなされたときにラジオから流れてたベックの「Devils Haircut」って曲を聴くと、今でもそのときの苦しみを思い出します(笑)。

そういうもんですよね。僕は20代の頃、女の子とドライブして、ベイブリッジ差しかかったときにエンヤを流すとか、そういうことをやっていた人間なんで(笑)。あれもやっぱり映像と音楽のコラボというか。多感な時期とか、失恋したときに聴いた曲って一生ものになりますよね。

エアロビのちょっと偽善的な笑顔の世界が気になってた

ふかわりょう

──映像と音楽の関係で言うと、ふかわさんはデビュー当初、音とあわせた「小心者克服講座」というネタをやられてましたよね。

あれは、エアロビの世界で有名なジェーン・フォンダっていう女優が元ネタになってるんです。もともとエアロビの、ちょっと偽善的な笑顔の世界が気になってて。真面目にやってるんだけど、どこか不思議なんですよね。それにエアロビの音楽も妙なおかしさがあって……なんか無理やり平和にしてる感じというか(笑)。

──はははは(笑)。

それでたまたまソウルジャズレコードっていうレーベルの「London Jazz Classics」ってコンピの中に入ってる曲を聴いたときに、ポンッと頭に映像が浮かんだんです。

──なるほど、それであのネタが生まれたんですね。ふかわさんがデビューされた1990年代のMVで記憶に残っているものはありますか?

僕、ミシェル・ゴンドリーが好きなんですよ。今や映画監督としても有名ですけど。彼が撮ったビョークの「Human Behaviour」とか、どうやって撮影してるんだろうって思わされますよね。あとなんか、ビョークが寝てるやつ(「Hyperballad」)。不思議な空間ですよね。本当、どういうふうに撮ってるんだろう? すごい才能だと思います。

björk – Human Behaviour

björk - hyperballad

ダフト・パンクの「One More Time」には衝撃を受けました

──2000年以降だと、どんなものが心に残ってますか?

ロイクソップの「Eple」とかは観ていて気持ちがよくて好きですね。それからやっぱり、ダフト・パンクと松本零士さんの「One More Time」には衝撃を受けました。曲自体もですけど、日本ではなくフランスのアーティストがあれをやったっていうところに。もう15年近く前になりますけど、歴史的な作品ですよね。

Röyksopp - Eple

Daft Punk - One More Time

──当時は完全にフロアアンセムでしたもんね。実は今回、映画祭に「アニメーション・ミュージックビデオ傑作選」と銘打ったプログラムがあるんですが、その中で「One More Time」も上映されるんです。

へえー、スクリーンで観られる機会はなかなかないから楽しそうですね。

──ほかにも「イエロー・サブマリン」の爆音上映とか。

ああ、ビートルズの! あれもある意味、MVみたいなものですよね。

──ふかわさんに審査員として出ていただくコンペには、アニメーションを使ったミュージックビデオを中心に“音楽もの”のアニメーション作品が13本出品されます。メジャーなものだけでなく、海外のほとんど知られていない作品も入っているそうですが、今回、審査員をやるにあたって楽しみにしていることはありますか?

ふかわりょう

まずはお客さんとして楽しみたいなと思います。そして、その中で「ヤバいなこれ」っていうものに出会えたらいいなっていう気持ちもありますね。0か100か、という感じのものに。

──それこそ、ライオネル・リッチーのような……。

はははは(笑)。まあ、ライオネル・リッチーのは“時代のいたずら”みたいなもんですから。でもそういう意味では20年後に観ても相変わらず輝いてるものを見つけられたらいいなとは思いますね。映画にしても無難なやつが一番嫌いで、わかりやすくて退屈なのは本当につらい。「今のなんだったの?」ってほうがよっぽど健康にいい(笑)。

映画祭スタッフ そういう意味では、期待に応えられるんじゃないかと。むしろ「もう少しわかりやすくしてよ」って思ってしまうくらいに、エッジの効いた作品をそろえております(笑)。世界中からたくさんの監督が来場するので、ぜひ直接疑問をぶつけてみてください。音楽フェス用の音響機材を持ち込んでの上映なので、音の迫力もすごいことになると思います。

本当ですか? それは楽しみですね。とがった作品に出会えることを期待してます!

新千歳空港国際アニメーション映画祭2015 / 2015年10月31日(土)~11月3日(火・祝)
新千歳空港国際アニメーション映画祭2015

初音ミクとのコラボレートなど“エンタテインメント空港”としても知られる北海道・新千歳空港。そのターミナルビルを会場に、世界中から集められた最新アニメーションを一挙に上映する映画祭。3万人の来場者を集めた昨年に続き2度目の開催となる。ゲストを招いての招待作品上映など多彩なプログラムを用意。短編アニメーションのコンペティションには、今年から日本コンペティション部門、ミュージック・アニメーション部門が新設される。

ミュージック・アニメーション・コンペティション

今回からコンペティション内に新設されるミュージック・アニメーション部門には、アニメーションを使った印象的なミュージックビデオや、音楽が重要な役割を果たすアニメーション作品13本が集結。爆音上映用のスピーカーを使ったゴージャスな音で鑑賞できる。ふかわりょう、モデルの田中美保、ナタリー代表・大山卓也の3名が審査員を務め、グランプリを決定する。

<チケット情報>

前売り券はチケットぴあ、ローソンチケットで販売中。

  • 全期間パスポート
    前売り券 2500円 / 当日券 3000円
  • 1dayパスポート
    前売り券 1500円 / 当日券 2000円
  • 1プログラム券
    当日券 1000円 ※前売り販売なし
ふかわりょう

1974年8月19日、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在学中の1994年にデビュー。芸人としてバラエティ番組などで活躍する傍ら、1998年よりROCKETMAN名義で音楽活動を開始。作詞・作曲のほかDJとしても各地でライブを行う。J-WAVEで毎週土曜夜にオンエア中の「OTHERS」でナビゲーターを務める。毎週月曜~金曜に放送中のTOKYO MX「5時に夢中!」でメインMCを担当。同番組から生まれたアイドルユニット、ザ・おかわりシスターズの楽曲「恋はおかわり」(10月21日発売)をプロデュースした。

ザ・おかわりシスターズ
「恋はおかわり」
2015年10月21日発売
[CD] 1500円
テノヒラレコード / DDCZ-2054
Amazon.co.jpへ
ザ・おかわりシスターズ「恋はおかわり」