ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第8回ビジュアル

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第8回 [バックナンバー]

“映画アンテナ”に引っかかっていなかった「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

鬼太郎ってこんなことになってるんですか?

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第8回で観てもらったのは劇場アニメ「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」。興行収入27.8億円、観客動員数194.7万人を記録(2024年5月12日時点)し 、第47回日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞を受賞した本作だが、駒場の“映画アンテナ”には引っかかっていなかった様子。「子供向け」とあなどっている彼の感想やいかに。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

今回は難しいことはないでしょう

こんにちは。ミルクボーイ駒場です。この映画コラムも8回目となりました。月1回書かせてもらっているので8カ月。ただ連載として観させてもらった映画は8本ですが、この連載で観た映画から派生して、ゴジラのほかの作品を観たり、映画自体に興味が湧き何作かほかの作品も観たりしました。人生の中でこんなに映画に寄り添った生活をしているのは初めてです。最近では「マッドマックス:フュリオサ」のCMを観て「『マッドマックス』の最新作、もうすぐ公開かぁ」などと、今までの僕では考えられなかったようなセリフを1人でつぶやいたりしています。「マッドマックス」のマの字も知らず、そのまま生きていたら一生出会うことがなかったかもしれない「マッドマックス」に、このコラムのおかげで出会うことができました。今やタイミングと場面さえ合えば「いや、そんな色白かったらもうウォーボーイズやん」という例えフレーズも言えないことはなさそうです。ウケるすべるは別として。でもそれくらい映画に対する興味と関心が変わりました。

そんな僕に今回提案されたお題の映画が「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」でした。「これだけ映画に寄り添っている僕に、今このタイミングで『ゲゲゲの鬼太郎』ですか? さすがに初心者向けすぎじゃないですか?」と驚きました。最近のマンガやアニメは複雑やったり難しいということはわかりますが、「鬼太郎」は昔からあるマンガです。しかも妖怪という意味では怖いですが、キャラクター的にかなり子供向けなイメージです。確かに、しっかり鬼太郎のマンガやアニメを観たことはないです。でも鬼太郎ですよね? ちゃんちゃんこを着た妖怪で、目玉おやじとねこ娘とねずみ男とかがいて。妖気を感じたら髪の毛が立って。など有名すぎて基本情報やキャラクターなどはもちろんわかります。歌も「ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲー」と口ずさめますし、「たのしいな たのしいな」のところを、普通に「たのしいな たのしいな」と歌うのではなく、歌手によっては「たの しいな たの しいな」と「たの」と「しいな」の間に一拍空けて、「しいな」をねっとり言う人もいて、個人的にはその間が不気味さを演出していて好き、という感想まで持っています。なので今回は難しいことはないでしょう、とちょっと余裕のスタンスで臨みました。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」場面カット

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」場面カット

言われてみたら鬼太郎ってどうやって産まれたんやろう

と、観る前のことを盛大に振らせてもらいまして、観たあとの感想としては「難しい!」でした。子供向けなんて思っていた自分が信じられませんでした。めちゃくちゃ大人向けじゃないですか。鬼太郎ってこんなことになってるんですか? 今回の「そんなこと言うてた?」、早々に言わせてもらいますが、「『ゲゲゲの鬼太郎』ってこんなに難しいって言うてた?」です。びっくりしました。もちろん、鬼太郎やと思ってガードをかなり下げていた僕も悪いです、悪いですが、1回観ただけでは細部までわかりきらないし理解しきれないのではないかと思いました。まず登場人物が多いし、名前が似てる。これはストーリー上仕方のないことなのですが焦りました。あと登場人物それぞれの思惑みたいなことが交錯していて、ストーリーも追いながらいろんな人の気持ちも読みつつ、みたいなことをしなければならない、そして意味深なシーンもいくつかあるので、「これ一応覚えておこう」とかそんなことも考えながら観ていかないといけない。こんな感じだったので、例の如く、何回も観返して物語に食らい付いていきました。あと、最後の最後まで目が離せず、エンドロールも僕にはわかるようでわかりませんでした。あとでネットの考察を読んで、また観返してから、なるほどと理解できました。とにかく思ってた鬼太郎とは違いその難しさに驚かされました。

ただ難しい難しいとは言いましたが、その分何回でも観返して理解しようとしましたし、また観返すのが苦じゃない、それが「鬼太郎」のとんでもない魅力だと思いました。マンガやアニメをしっかり観たことがない僕でも鬼太郎のバックボーンには興味がある、「言われてみたら鬼太郎ってどうやって産まれたんやろう」ということは気になります。ファンの人からしたら鬼太郎の誕生秘話は周知の事実だと思うのですが、知らない人には絶妙に気になるところなのです。「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」という映画を自分の意思で観始めといて、「難しいからもうええわ」とはなりにくいのです。わからない→追いかけたくなる→観返す→苦じゃない→理解。そうさせるのが鬼太郎というキャラクターの力だと思いましたし、この映画のすごさだと思いました。そして何度か観返して観終わったあとには、「鬼太郎のバックボーンはこんな感じだったのか、そしてコレがコレでアレがアレなのか」とちゃんと理解ができる、とても興味深く見応えのある映画だなと思いました。あと登場人物のセリフに深いものが何発もありました。まだ観ていない人もいると思うので全部は言えませんが、僕は「目で見るモノだけ見ようとするから…… 」というところのセリフとかはめちゃくちゃいいなと思いました。難しいだけじゃなく深いことも言ってくれるんかい、と思いました。こんないい映画に対して僕の映画アンテナは何も反応しておらず、髪の毛の1本も立てられてなかったことは情けないことです。このコラムをさせてもらっていて本当によかったです。これからも映画アンテナを張り巡らせ、いい映画を察知し1本でも多く髪の毛を立たせられるようがんばりたいと思います。よろしくお願いします。

編集部から一言

この映画がヒットした要因として、「バディもの」「因習村」といった要素が挙げられる気がしますが、確かに駒場さんの言うように「ゲゲゲの鬼太郎」という作品の強度、知名度は意外と大きいかもしれません。「鬼太郎」という文字、日本人なら誰でも「おにたろう」でなく「きたろう」と読めるのは驚異的な気がします。そんな「誰でも知ってる鬼太郎の、意外と知らない誕生の秘密」を知りたいというのも意外なほどフックになっていたのでは……ということを考えたコラムでした。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(2023年製作)

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」キービジュアル

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」キービジュアル

テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6シリーズの「エピソードゼロ」に該当する、水木しげるの生誕100周年記念作品。昭和31年、山奥にある因習渦巻く村・哭倉村(なぐらむら)の秘密を探りに訪れたサラリーマン・水木と、のちに「目玉おやじ」と呼ばれる鬼太郎の父の活躍を描く。映画を観ることを“入村”と呼ぶ現象も話題となった。Prime Videoで独占配信されているほか、Blu-ray / DVDが11月17日に発売予定。

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われることが決定している。

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(c)映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

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