描いていると、新コーナーがどんどん思いつく
──「うらみちお兄さん」のストーリーは、いつもどうやって考えているのでしょうか?
だいたいの大きなテーマを決めているときもありますけど、ひとつのアイデアを思いついたらパッとネームにしてしまうことが多いですね。思いついたことはすぐ形にしたいタイプで。1話12ページなので、あまり内容をかっちり決めるより、即興性を大事にしているところがあります。
──「ママンとトゥギャザー」の世界観が徐々に明らかになっていくのも楽しいです。「こういうコーナー、あるある」と感じます。
描き進めているうちに新コーナーがどんどん思いつくんですよね。描いているほうも楽しいです。
──うらみちお兄さんの夢に出てきたという謎の「小鳥さん」と、人生相談コーナーが始まってしまったのは笑いました。あの小鳥、シュールすぎる……。
あの小鳥、初出は「トリマニア」なんです。「うらみちお兄さん」で立体化しました。実はウサオとクマオも、「トリマニア」でちらっと出てきたキャラクターなので、ぜひあわせて読んでいただければ。
──ウサオとクマオは、いわゆる着ぐるみキャラなんですけど、ガタイがいいのにきわめて無気力な表情をしているのがとてもシュールで、登場するだけでじわじわ笑ってしまいます。中の人の顔も気になりますし。
単行本の描き下ろしでは、あの2人の顔を描いているので、ぜひチェックしてください。
──それは楽しみです。描き下ろしについて、ほかにも見どころを伺っていいでしょうか?
私が気に入っているのは、いけてるお兄さんとうらみちお兄さんが、ジョキンダーとバイキンダーというキャラに扮して、子供たちに手洗いの大切さを教えるコーナーですね。あと、この手の子供番組につきものの「全国公演」に、うらみちお兄さんたちが繰り出す話も描いています。社会人ならではの大変さとやりがいの話なので、1巻のちょっとしたクライマックスです。
──今から読むのが楽しみです。
1巻だけでは出しきれなかったアイデアがいっぱいあるので、ぜひ2巻、3巻と出していきたいなと思っています。
マンガとは違う畑から吸収していきたい
──久世さんがマンガ家を目指し始めたのはいつ頃なんでしょうか?
新人賞への投稿などをし始めたのは、2014年末くらいでしょうか。ありがたいことにそれがスクウェア・エニックスマンガ大賞で入選することができ、マンガ家としてのキャリアが始まりました。
──マンガを描いていて、楽しいのはどの瞬間ですか。
キャラクターを考えているとき、人物を描いているときが一番楽しいですね。「キャラクターを考えるぞ」と意気込むより、自然に浮かんでくることが多いです。1人で頭の中で考えているキャラクターが何人かいて、そのキャラクターたちにお話がついていくイメージです。
──「トリマニア」も「うらみちお兄さん」も非常に独特の「間」があると感じるのですが、影響を受けている創作物などはありますか?
独特のテンポを作っていきたいと思っているので、「間」はたしかに意識していますね。マンガを描くようになってからは、ほかの作品から影響を受けたくなくて、自分と作風が似ているかもしれないなと思うものなどは、かえって読まないようにしています。かわりにお笑い番組やバラエティ番組、映画などは積極的に観るようにしていますね。自分の分野と違う畑から吸収していきたいなと。
──今後描いてみたい題材はありますか?
同じジャンルではなく全然違うことをやっていきたいと思っています。やりたいことはいろいろありますが、人外……とくにケンタウルスが好きなので、ケンタウルスが主人公の作品とかをやってみたいです。スクウェア・エニックスマンガ大賞もケンタウルスを描いたマンガで入選しているので、また描きたいなと。あともちろん、「うらみちお兄さん」がもっといろいろな展開をしていってもうれしいですね。ドラマCDとか、アニメとか。
うらみちお兄さんの声は……。
──今回、1巻の刊行にあわせてPVが公開されていますね。うらみちお兄さんの声を演じるのは、なんとあの神谷浩史さん。
そうなんですよ! 先日収録にも立ち会わせていただいたんですが……プロの声優さんはすごかったです。なんとリテイクなしで。収録時間を2時間とっていたのに、15分で終わってしまって。
──さすがですね。
実は、PVのキャスティングの前から、読者の方たちが「うらみちお兄さんのCVは誰か」なんて話をしてくださっていたんですが、その時点で、神谷さんを挙げている方が多かったんですよ。作者としてはそういう想定をしていたわけではなかったんですが、実際にPVの声を聴いたら、もう本当に裏道そのもので。
──それはぜひ多くの方に視聴いただきたいところです。最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いしていいでしょうか。
すでに「うらみちお兄さん」を応援してくださっている方、ここまでにも言及してきましたが、SNSで皆さんの感想を拝見することが、ダイレクトに励みになっています。読者の方たちの応援があったからこそ、ここまで育った作品だと思っています。これからもよろしくお願いします。まだ読んだことがないという方も……合う合わないはあると思うんですけど、ぜひ一度お手にとってもらいたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
- 久世岳「うらみちお兄さん①」
- 発売中 / 一迅社
よい子のみんな~! 裏表のあるお兄さんは好きかな~?
教育番組「ママンとトゥギャザー」の体操のお兄さん・表田裏道31歳。 爽やかだけど情緒不安定な“うらみちお兄さん”が垣間見せる大人の闇に、よい子のみんなはドン引き必至…!? 大人になった“よい子”たちに送る、哀しみの人生賛歌!
- 久世岳(クゼガク)
- 2014年、第25回スクウェア・エニックス マンガ大賞で入選を受賞しデビュー。現在、comic POOLで「うらみちお兄さん」、ガンガンONLINEで「トリマニア」を連載中。